2025年の世界貿易は、各国の関税政策や地政学的リスクが影響を与える中でも成長が見込まれている。アメリカはメキシコ、カナダ、中国に対し高率の関税を課しており、特に鉄鋼、アルミ、自動車、電子機器などの主要産業への影響が懸念される。一方、アメリカの輸入需要は堅調で、貿易赤字は拡大傾向にある。
アジアとヨーロッパの貿易が関税の影響を緩和する可能性があるが、中国の成長鈍化やヨーロッパ経済の課題が足かせとなる。非関税措置や外交交渉も貿易環境に変化をもたらす要因となるため、今後の各国の対応が鍵を握る。
米国の関税政策がもたらす影響 各国の対応と貿易環境の変化

トランプ政権はメキシコとカナダに対し25%、中国に対し20%の関税を課し、さらにカナダのエネルギー製品には10%の関税を適用している。3月12日には鉄鋼とアルミニウム、4月2日には自動車や電子機器、農産物への追加関税が予定されており、貿易摩擦が一層激化する見通しだ。これにより、米国の貿易赤字は2024年12月の1,220億ドルから2025年1月には1,533億ドルへ拡大した。
こうした関税の影響で、カナダやメキシコは代替市場を模索し、中国は迂回ルートを活用する動きを強めている。特にアジア域内貿易の拡大が米国の関税負担を軽減する要因となる可能性がある。一方で、米国内では関税によるコスト増が企業や消費者の負担となり、国内経済に影響を与えることが懸念されている。
米国は関税だけでなく、デジタル貿易規制や付加価値税の変更といった非関税措置を活用する可能性がある。これに対し、EUや日本、中国は慎重な対応を続けており、今後の外交交渉の行方が貿易環境の変化を左右することになりそうだ。
2025年の世界貿易成長の要因とリスク
関税摩擦が続く中でも、世界貿易は前年比2.5%の成長が見込まれている。成長を牽引する要因として、2025年初頭の輸入急増、大陸間貿易の活発化が挙げられる。特にアジアとヨーロッパ間の取引が堅調に推移しており、米国の関税政策の影響をある程度緩和する可能性がある。
ただし、地政学的リスクや経済ナショナリズムの高まりは世界貿易の不確実性を高めている。特に、中国の経済成長が鈍化する中で、対米貿易依存度を下げるための政策が進められており、アジア域内貿易へのシフトが加速する見込みだ。
ヨーロッパ経済も2024年に2.6%減少したが、2025年には2%成長する可能性がある。軍事支出の増加や域内貿易の回復がその背景にあるが、エネルギー価格の変動やインフレ圧力が依然として懸念材料となる。米国の関税政策が今後どのような影響を及ぼすのか、引き続き慎重に見極める必要がある。
貿易摩擦の中で求められる戦略 主要国の対応と今後の展望
関税措置が相次ぐ中、各国は新たな貿易戦略を模索している。中国は対米輸出への依存を低減するため、ASEAN諸国との貿易関係を強化しており、アジア域内での輸出ルートの多様化が進む。カナダとメキシコも米国市場への依存度を下げるため、EUやアジア諸国との貿易交渉を加速させている。
米国も関税政策を全面的に維持するわけではなく、同盟国との交渉を進める可能性がある。特に、インドと日本は米国との貿易関係を維持しつつ、関税負担の軽減を目指した交渉を行っている。EUもまた、米国の政策に対する対抗措置を検討しつつ、貿易交渉を続けている。
全面的な貿易戦争に発展する可能性は低いが、各国が対米輸出を減らしながら新たな市場開拓を進めることで、貿易の流れは変化していくと考えられる。貿易摩擦が続く中で、柔軟な対応と多角的な交渉が今後の成長を左右する鍵となるだろう。
Source:GuruFocus