Nvidia(ティッカー: NVDA)の株価は、1月27日に17%の急落を経験した。これは、中国のAIスタートアップであるDeepSeekが、低コストで高性能なAIモデル「R1」を発表したことが主な要因である。DeepSeekは、わずか600万ドルで「R1」を訓練し、OpenAIの最新モデルと同等の性能を持つと主張している。
この発表により、Nvidiaの高価なGPUに対する需要が減少するのではないかとの懸念が広がった。しかし、AIインフラ投資の増加やNvidiaの市場支配力を考慮すると、同社の株価が2025年に200ドルに達する可能性は依然として存在する。
特に、MicrosoftやMeta Platforms、さらにはホワイトハウス主導の大規模なAIインフラ投資計画など、主要企業や政府の動きがNvidiaの成長を後押しする可能性がある。これらの要因を総合的に考慮すると、Nvidiaの株価が再び上昇し、200ドルを突破するシナリオも十分に考えられる。
Nvidiaの競争環境は本当に変化するのか
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Nvidiaの株価下落の背景には、中国のDeepSeekが低コストで高性能なAIモデルを発表したことがある。しかし、この動きが即座にNvidiaの市場に重大な影響を与えるとは言い難い。同社のデータセンター向けGPUは依然としてAI開発の中核を担っており、現在のAIインフラの大部分はNvidiaのハードウェアに依存している。特に、クラウドサービスや研究機関、大手テクノロジー企業はNvidiaのCUDAエコシステムを活用しており、簡単に競合他社の製品へと移行することは難しい。
また、DeepSeekの「R1」は訓練コストが低い点が注目されたが、ハードウェアの観点からはNvidiaの支配的地位にすぐに取って代わるものではない。AIモデルの学習と推論には依然として高性能なGPUが必要であり、既存のAI企業が新たなチップへとシフトするには多くの技術的・資本的ハードルがある。したがって、DeepSeekの成功が直ちにNvidiaの事業を脅かすというよりも、今後のAI市場の競争環境に新たな選択肢をもたらす可能性があると見るべきだ。
さらに、Nvidiaは現在の優位性を維持するために、次世代のAI向けチップの開発を加速させている。H100の後継となる「B100」などの新製品が登場すれば、さらなる性能向上と効率化が見込まれ、市場の需要は引き続きNvidiaに向かう可能性が高い。競争環境の変化を懸念する声がある一方で、Nvidiaが持つ技術的・市場的な強みを過小評価するのは早計だろう。
AIインフラ投資の拡大がNvidiaの成長を後押しする
Nvidiaの株価が今後反発する要因のひとつとして、AIインフラ投資の拡大が挙げられる。特に、MicrosoftはAI関連のデータセンター構築に向け、設備投資を前年比43%増の800億ドルに引き上げる計画を発表している。また、Meta Platformsも同様に、AI開発の加速に向けて設備投資の大幅な増額を決定した。これに加え、ホワイトハウスが主導する「スターゲート・プロジェクト」により、AIインフラ整備のために1,000億ドルが投入される予定だ。
このような巨額投資は、必然的に高性能なコンピューティングハードウェアへの需要を高める。特に、AIトレーニングや推論にはNvidiaのGPUが不可欠であり、これらのプロジェクトが進行する限り、同社の製品への需要が低下する兆候は見られない。実際、Nvidiaはデータセンター向けのGPU市場で70%以上のシェアを持ち、多くの企業がそのハードウェアとソフトウェアスタックに依存している。
また、台湾積体電路製造(TSMC)がNvidia向けの高度なチップパッケージング能力を強化しており、供給面でもNvidiaの成長を支える要因となる。これにより、AI市場の需要が急増した場合でも、生産能力のボトルネックが解消される可能性が高い。総じて、AIインフラへの巨額投資は、Nvidiaの収益成長を後押しする重要な材料となるだろう。
株価200ドルへの道筋とその実現可能性
現在のNvidiaの株価は120.07ドルであり、200ドルに到達するためには約55%の上昇が必要となる。しかし、アナリストの市場予測によれば、2026年度にはNvidiaの1株当たり利益(EPS)が50%増加し、4.45ドルに達するとの見方が強い。さらに、最も楽観的な予測では、同社の利益は101%増加するとされている。
この成長見通しが現実のものとなれば、NvidiaのPER(株価収益率)が現在の水準を維持するだけで、株価は200ドルに達する可能性がある。さらに、Nvidiaの過去5年間の平均予想PERは40倍であり、仮にEPSが5.16ドルに達すれば、この水準で計算しても200ドルの目標株価は十分に手が届く範囲となる。これに加え、現在のPERは歴史的に見ても高水準であり、AIブームが続く限り、そのプレミアムが維持される可能性もある。
もっとも、短期的には市場の不透明感が続くことも予想される。米国政府によるNvidia製品の輸出規制が強化されるリスクや、競争環境の変化による影響は引き続き注視する必要がある。しかし、長期的な成長を見据えるならば、AI市場の拡大とインフラ投資の増加がNvidiaの収益成長を支える要因となり、株価200ドルへの道筋は十分に描ける状況にある。
Source:The Motley Fool