テスラ(NASDAQ: TSLA)の株価は2024年に入り下落傾向が続いている。2月13日時点で343.39ドルまで下落し、年初来で約15%のマイナスとなった。市場のコンセンサスは分かれ、同社の成長性に対する懸念が広がる中、一部のアナリストは依然として強気の姿勢を崩していない。

テスラの株価調整の背景には、過度な期待と現実のギャップがある。直近の決算では収益・売上高ともに市場予想を下回り、納車台数も前年比で減少した。加えて、イーロン・マスクの他事業への関与がテスラ経営への集中度を低下させる要因と見られている。

こうした状況下でも、投資会社Benchmarkは2月12日にテスラの株価目標を475ドルと設定し、現在価格から約38%の上昇を見込むと発表した。自動運転技術やロボティクス、エネルギー関連事業の成長が株価押し上げのカギになると指摘しており、2025年前半の低価格EV投入や、2024年6月の完全自動運転の有料提供開始が重要な転換点になるとみている。

テスラ株の急落が示す市場の不安要因とは

テスラ(NASDAQ: TSLA)の株価は2024年に入り急激な下落を見せた。特に年初からの約15%の下落は、投資家心理の悪化を反映している。株価の調整には複数の要因が絡んでおり、市場全体の動向と密接に関係している。

第一に、テスラの四半期決算は市場の期待を下回った。売上高と利益が予測に届かなかったことに加え、納車台数の減少が成長鈍化の懸念を強めた。特に、2024年1月の発表で納車台数が前年比で初めて減少したことが、成長ストーリーに陰りをもたらした。

第二に、マクロ経済環境が逆風となっている。米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策が不透明であり、金利高止まりによる消費者心理の冷え込みが自動車市場にも影響を与えている。特にEV業界では、補助金の縮小や価格競争の激化が収益性の低下を招く要因となっている。

さらに、イーロン・マスクの経営姿勢にも注目が集まっている。スペースXやX(旧Twitter)、xAIなど多岐にわたる事業への関与が、テスラへの経営資源の分散を招いているという見方が強まっている。特にXの運営に時間を割いていることが、一部の投資家にとっては不安材料となっている。

このような状況の中で、テスラの株価が短期的に持ち直すかどうかは、次回の決算発表や市場全体のリスク動向に左右されるだろう。

Benchmarkの強気予測が示すテスラの長期的な可能性

こうした短期的な不安要因がある一方で、投資会社Benchmarkは2024年2月12日にテスラの分析を開始し、株価目標を475ドルと設定した。この予測は、現在の株価水準と比較すると約38%の上昇余地があることを示唆している。

Benchmarkのアナリスト、マイケル・レッグ氏は、テスラの今後の成長要因として「自動運転技術、ロボティクス、エネルギー関連事業」の拡大を挙げた。特に、完全自動運転(FSD)の商業化が市場の注目を集めており、2024年6月からの無監督型FSDの有料提供は大きな転換点となる可能性がある。

また、2025年前半にはより低価格なEVの投入が予定されており、これが市場の需要を刺激する要因となると考えられている。EV市場は競争が激化しているものの、低価格モデルの拡充がシェア拡大につながるかどうかが今後の焦点となる。

さらに、ヒューマノイドロボット「Optimus(オプティマス)」の生産拡大が長期的な成長を後押しすると指摘されている。レッグ氏の予測モデルでは、現在の株価目標は自動車部門の成長のみを考慮しており、仮にロボティクスやFSDが本格的に普及すれば、さらなる上昇余地があるという見方もある。

しかし、こうした楽観的な見通しが実現するには、技術的な進展と市場の受け入れが鍵を握る。FSDの規制環境や、低価格EVの生産コスト、オプティマスの商業化の進捗など、不確定要素も多いため、慎重に見極める必要があるだろう。

テスラの成長戦略と市場の期待が交錯する中での今後の展望

短期的な株価の変動と長期的な成長ストーリーが交錯する中、テスラは今後どのような戦略を打ち出すのかが注目される。特に、競争環境の変化にどのように対応するかが重要となる。

EV市場はテスラの独壇場ではなくなってきている。中国のBYDをはじめとする競合メーカーが台頭し、価格競争が激化している。これに対抗するため、テスラは価格戦略の見直しや新技術の投入を加速させる必要がある。

また、エネルギー部門の拡大も成長戦略の一環として期待されている。テスラは太陽光発電や蓄電池事業を手掛けており、再生可能エネルギー分野でのシェア拡大が見込まれる。この分野での成長が加速すれば、事業の多角化によるリスク分散が可能となる。

テスラの未来は、単なるEVメーカーとしての成功にとどまらない。自動運転やロボティクス、エネルギー分野への進出がどこまで実を結ぶかによって、今後の企業価値は大きく変動するだろう。市場の期待と現実のギャップを埋めることができるかどうかが、今後の株価動向を決定づける要素となりそうだ。

Source:Finbold