2025年の米国株式市場は、AI技術の発展や地政学的リスクの影響で不確実性が高まっている。特に、中国発の人工知能「DeepSeek」の登場により、5,000億ドル規模のAIインフラ計画の行方が注目されている。

加えて、ドナルド・トランプ前大統領の関税政策が再び議論の的となり、貿易摩擦の再燃が懸念される状況にある。こうした環境の中、安定した成長が期待される企業として、エネルギー大手のシェブロン(NYSE: CVX)と、半導体市場を牽引するエヌビディア(NASDAQ: NVDA)が注目されている。

シェブロンは地政学的な不安定要因にも強いポートフォリオを持ち、長期的な成長が期待される。一方、エヌビディアはAI市場の拡大が続く中で成長機会を得ているが、高騰する評価額や技術的リスクも抱えている。

シェブロンの成長戦略とエネルギー市場の変化

シェブロン(NYSE: CVX)は、2025年のエネルギー市場の変動を見据えた成長戦略を進めている。同社は原油・天然ガスの「上流」事業において、米国やオーストラリア、中央アジアなどの主要拠点を軸に開発を加速させている。特に、米国内の石油・ガス採掘に対する政策の転換は、同社にとって追い風となる可能性がある。

ドナルド・トランプ前大統領が推進するエネルギー独立の再強化は、米国内の掘削事業を活性化させる方向に作用するだろう。シェブロンは既にこの流れを見越し、米国内の生産能力の拡大を進めており、長期的な成長が期待されている。また、中東の地政学的リスクの高まりは、原油価格の変動を引き起こす要因となるが、シェブロンの多角的な供給ネットワークは、こうした不安定要因を和らげる効果を持つ。

一方で、環境規制の厳格化や再生可能エネルギーの普及は、従来型エネルギー企業にとってリスクとなる。シェブロンはカーボンニュートラルに向けた取り組みを進めているが、その投資規模や成果は他のエネルギー大手と比較すると限定的である。市場が持続可能なエネルギーへシフトする中、シェブロンの戦略がどこまで適応できるかが今後の焦点となる。

エヌビディアのAI事業と市場評価の課題

エヌビディア(NASDAQ: NVDA)は、2025年においても半導体市場の成長を牽引する立場にある。同社のAI向け半導体は、5,000億ドル規模の「Stargate」プログラムや、AIインフラの急拡大に伴い需要が高まっている。さらに、オープンソースのAIモデル「DeepSeek」の台頭により、エヌビディアのハードウェアを活用した新たな市場が生まれる可能性がある。

しかし、エヌビディアは近年、過熱気味の評価を受けている。現在の株価は過去の成長を反映したものだが、市場全体が半導体銘柄に対して強気姿勢を維持し続けるかは不透明である。特に、競争の激化により価格競争が進んだ場合、エヌビディアの利益率に影響を及ぼす可能性がある。また、PC向けGPUの不具合報告や互換性問題が増えていることも、ブランドの信頼性にとって懸念材料となっている。

一方で、エヌビディアはデータセンター向け事業を強化しており、これが成長の原動力となると予想される。AIの普及が進む中で、同社の技術的優位性が維持される限り、市場での地位は揺るがないだろう。ただし、投資家にとっては、短期的な株価変動リスクや業界全体の成長ペースの鈍化に注意する必要がある。

Source:Finbold