アルファベット(NASDAQ: GOOGL)の株価は、人工知能(AI)を活用した検索エンジンの台頭に伴い、ウォール街の注目を集めている。バンク・オブ・アメリカのアナリスト、ジャスティン・ポスト氏は、同社の「買い」評価を再確認し、目標株価を225ドルと設定した。

これは、Googleの検索エンジンが依然として堅調なトラフィックと収益の成長を示していることに基づく。一方、JPモルガンやモルガン・スタンレーなどの他の金融機関は、AI競争の激化や高い設備投資計画に伴うリスクを指摘し、目標株価を引き下げている。

アルファベットは、AI分野での競争力を維持するため、多額の投資を継続しており、2024年第4四半期には750億ドルの設備投資計画を発表した。AI主導の新興企業との競争が激化する中、同社の今後の戦略とパフォーマンスに市場の関心が高まっている。

アルファベットのAI投資戦略と市場競争の現状

アルファベットは、AI分野での競争力を維持するために積極的な投資を継続している。2024年第4四半期決算では、年間750億ドルの設備投資計画を発表し、その大部分がAIの能力強化に充てられると見られている。この巨額の投資は、Google Cloudのインフラ拡充や半導体開発、検索アルゴリズムの高度化を目的としたものだ。

一方、OpenAIを筆頭に、マイクロソフトやAmazon、さらには新興のAIスタートアップが次々と市場に参入している。特に、AI検索市場では、Bing AIやPerplexity AIなどの新興勢力が台頭し、Googleのシェアを徐々に侵食しつつある。この動きに対抗するため、GoogleはGemini(旧Bard)を軸としたAI戦略を強化し、検索機能の刷新を図っている。

こうした市場競争の激化は、アルファベットにとって機会であると同時にリスクともなり得る。AI主導の検索が今後の主流になる中、Googleが従来の優位性を維持できるかが焦点となる。特に、広告収入の柱である検索事業の安定性が問われる場面では、AI技術の進化だけでなく、検索体験の質やユーザーの定着率が成長を左右する要因となるだろう。

ウォール街の評価が分かれる背景と市場の不確実性

アルファベットの株価について、ウォール街のアナリストは評価を分けている。バンク・オブ・アメリカのように強気の見方を維持する金融機関がある一方で、JPモルガンやモルガン・スタンレーは目標株価を引き下げた。この評価の分岐点となっているのが、AI競争による市場シェアの変動と、設備投資の規模だ。

JPモルガンは、Googleの広告事業に対する圧力が高まる可能性を指摘しており、特にOpenAIが提供する広告モデルが広告主の予算を奪う要因になると分析している。また、AI関連のインフラ投資が利益率に与える影響も懸念されている。モルガン・スタンレーも、長期的な収益成長の確実性が示されなければ、市場は慎重な姿勢を崩さないとみている。

一方で、ゴールドマン・サックスやレイモンド・ジェームズは、アルファベットの成長力を評価し、目標株価を引き上げた。YouTubeやクラウド事業の拡大、検索市場での優位性を背景に、同社の収益基盤は依然として強固であるとの見方を示している。ただし、Google Cloudの供給制約やコスト増加が影響する可能性にも言及しており、短期的な課題が残ることを認めている。

このように、ウォール街の評価が割れる背景には、AI競争の行方だけでなく、広告収益モデルの変化や規制環境など、複数の不確実要素が絡んでいる。特に、米国やEUの独占禁止法の適用がGoogleの市場戦略に影響を与える可能性があり、これらの動向が投資家の判断に大きく影響を及ぼすだろう。

アルファベットの今後の成長要因とリスク

アルファベットが今後成長を維持するためには、検索事業の競争力を高めると同時に、新たな収益源の確立が求められる。特に、Google Cloudの成長は重要な鍵となる。2024年第4四半期の決算発表では、クラウド事業の成長が予想よりも鈍化したものの、依然として強い需要があることが示された。マイクロソフトやAWSとの競争が激化する中で、Googleが企業向けのクラウド市場でどれだけシェアを獲得できるかが注目される。

また、YouTubeの収益モデルの多角化も成長戦略の一環となる。YouTube Premiumの加入者増加や、ショート動画市場の拡大による広告収入の伸びが期待される。特に、TikTokが規制リスクに直面する中、YouTube Shortsが成長する可能性は高い。一方で、広告市場全体の変動による影響も無視できず、AIが広告運用にどのような変革をもたらすかが今後の重要な課題となる。

リスク要因としては、AI競争の激化に加え、法的リスクがある。米国とEUではGoogleの独占的地位を巡る訴訟が進行しており、検索市場や広告ビジネスの規制強化が同社の事業戦略に影響を与える可能性がある。さらに、2025年に向けた世界経済の不透明感も市場全体のボラティリティを高める要因となるだろう。

このように、アルファベットは成長の余地を持ちながらも、多くの課題を抱えている。今後のAI戦略の成否や、競争環境の変化にどのように適応するかが、同社の株価の動向を左右する重要なポイントとなる。

Source:Finbold