米国の資産運用大手、バンガードとブラックロックは、ETF市場において熾烈な競争を繰り広げている。特に、S&P500に連動するETFとして、バンガードの「VOO」とブラックロックの「IVV」は高い人気を誇る。

2024年のリターンでは、VOOが24.98%、IVVが24.93%と、僅差ながらVOOが上回った。手数料に関しては、両ETFともに経費率0.03%と同水準である。バンガードは最近、87のミューチュアルファンドの手数料を平均20%引き下げ、投資家に約3億5,000万ドルの節約効果をもたらすと発表した。

この動きは、ブラックロックやシュワブなどの競合他社にも手数料引き下げの圧力をかけている。投資家にとって、両社の動向は今後の投資戦略に大きな影響を及ぼす可能性がある。

インデックスETFの支配力と市場の変化

バンガードとブラックロックの競争は、ETF市場におけるインデックスファンドの影響力をさらに拡大させている。S&P500に連動するVOOとIVVは、多くの投資家にとって基盤となる存在であり、機関投資家から個人投資家まで幅広く支持を集めている。これにより、市場の動向はこれらのETFの売買動向に左右されることが多くなってきた。

インデックスETFが市場全体の流動性を高める一方で、企業の株価形成に与える影響も大きくなっている。特にS&P500の構成銘柄に大量の資金が流れ込むことで、大型株の値動きがインデックスファンドの影響を強く受けるようになった。この結果、一部の投資家はインデックスに含まれない中小型株や、非伝統的な指数に連動するETFへの関心を高めている。

バンガードとブラックロックが提供するETFの規模が拡大し続ける限り、これらのファンドが市場の動向を決定づける存在であり続けることは間違いない。しかし、今後の市場変動によっては、インデックスETFの資金流入パターンに変化が生じる可能性もある。

成長型ETFとテーマ型投資の拡大

バンガードとブラックロックの競争が続く中、成長型ETFやテーマ型投資の存在感が増している。バンガードのVOOG(S&P500グロースETF)は、テクノロジー株の比率が高く、長期的な成長を狙う投資家に選ばれている。一方で、ブラックロックはiSharesブランドでAIやESG関連ETFの拡充を進めており、特定のセクターに特化した投資商品を提供している。

テーマ型ETFの人気が高まる背景には、AIや再生可能エネルギーといった成長分野への関心の高まりがある。特にブラックロックのiShares Global Clean Energy ETF(ICLN)やiShares Robotics and Artificial Intelligence ETF(IRBO)は、テクノロジー主導の市場環境を反映する商品として注目されている。

ただし、テーマ型ETFは従来のインデックスETFに比べてボラティリティが高く、流動性の面でも劣ることがある。そのため、バンガードやブラックロックの戦略は、安定性の高いインデックスETFを主軸としながら、成長セクターへの投資機会を提供する方向へと進んでいると考えられる。

ETF市場の今後の方向性と競争の激化

バンガードとブラックロックの競争は、ETF市場全体の進化を促している。低コスト化が進むことで、ETFの運用手数料はこれまで以上に抑えられ、多くの投資家が利用しやすくなっている。一方で、テクノロジーの発展に伴い、より専門性の高いETFの需要も拡大しつつある。

今後のETF市場では、インデックス型とテーマ型の両軸での競争が続く可能性が高い。バンガードは引き続きコスト競争を重視し、従来のインデックス投資の拡充を図るとみられる。一方で、ブラックロックはAIやサステナビリティといった新興分野への投資機会を広げる戦略を強化している。

ETF市場の成長が続く限り、バンガードとブラックロックの競争は投資家にとって好ましい影響を与え続けるだろう。しかし、今後の市場変動や規制の影響次第では、新たな競争のステージが訪れる可能性も否定できない。

Source:Finbold