リゲッティ・コンピューティング(ティッカー: RGTI)は、2022年3月のSPAC合併による上場後、株価の大幅な変動を経験した。上場初日は9.75ドルで始まったが、その後下落し、2023年5月には0.38ドルの最安値を記録した。しかし、現在では約13.50ドルまで回復している。
この間、創業者チャド・リゲッティのCEO辞任や業績未達などの課題があったが、同社は新製品の発表や経営体制の刷新を通じて市場の信頼を取り戻しつつある。今後3年間、リゲッティは技術開発と市場拡大をどのように進めていくのか、その戦略と展望に注目が集まる。
リゲッティ・コンピューティングが直面する課題と今後の技術革新
![](https://us-stock.reinforz.co.jp/wp-content/uploads/2025/01/30285442_m-1024x683.jpg)
リゲッティ・コンピューティングは、量子コンピュータ市場での成長を加速させるため、技術革新に取り組んでいる。同社は従来のコンピュータと異なり、量子ビットを活用した高度な計算能力を持つが、依然としてエラー率の高さやシステムの安定性の課題が存在する。特に、量子コンピュータが商業的に広く採用されるには、計算精度の向上とハードウェアの改良が不可欠である。
リゲッティは、技術的ハードルを克服するために、2024年には9キュービットチップを4つ連結したモジュール型量子コンピュータの発表を予定している。この技術により、システムの拡張性と安定性が向上し、より実用的な量子計算が可能となる。また、量子エラー補正技術の開発にも注力しており、より高い計算精度の実現を目指している。
一方で、リゲッティの技術が市場で競争力を持ち続けるかは不透明である。IBMやGoogleといった大手テクノロジー企業も量子コンピュータの開発を加速させており、特にIBMは433キュービットの「Osprey」システムを既に発表している。こうした競争環境の中で、リゲッティが持続的な成長を遂げるには、独自の技術と市場戦略が求められる。
リゲッティの経営戦略と市場評価のギャップ
リゲッティは、製品開発だけでなく、経営戦略の見直しも進めている。創業者のチャド・リゲッティがCEOを退任した後、スボド・クルカルニ博士が経営を引き継ぎ、企業体制の刷新を図った。クルカルニCEOは、量子コンピュータ市場における過度な期待を抑えるため、短期的な収益化の難しさを投資家に説明している。この透明性のある経営方針は、市場の信頼回復に寄与する可能性がある。
一方で、リゲッティの市場評価には依然としてリスクが存在する。現在の時価総額は約37億ドルとされているが、2026年の売上予測は3,500万ドルにとどまる見込みである。これにより、売上に対する評価倍率は100倍以上となり、現在の株価水準が実際の事業成長と比較して過大評価されている可能性がある。
さらに、NvidiaのCEOであるジェンセン・ファン氏が「実用的な量子コンピュータの実現には数十年かかる」と発言したことで、市場全体の期待値が引き下げられる可能性もある。こうした中で、リゲッティが実績を積み上げ、投資家の期待に応えられるかが今後の焦点となる。
リゲッティの成長機会と潜在的なリスク
リゲッティ・コンピューティングは、量子コンピュータ市場の成長に伴い、今後さらなるビジネスチャンスを得る可能性がある。Fortune Business Insightsの調査によると、量子コンピュータ市場は今後8年間で年平均34.8%の成長が予測されている。仮にこの成長率が続けば、リゲッティの売上も大幅に増加する可能性がある。
しかし、現在の市場環境にはリスクも存在する。金利の上昇が続けば、ハイテク企業への資金流入が減少し、リゲッティのような新興企業の資金調達が難しくなる可能性がある。また、量子コンピュータの商業化には技術的な課題が多く、短期間で大きな利益を生むことは難しいと考えられている。
このように、リゲッティは市場の成長を追い風としながらも、資本市場の動向や競争環境の変化に対応する必要がある。技術開発の進展とともに、収益モデルの確立が求められる中、今後3年間の動向が企業の将来を左右する重要な期間となるだろう。
Source:The Motley Fool