アーク・インベスト・マネジメントのCEOであるキャシー・ウッドは、積極的な投資スタイルで知られるが、ここ最近の動きはこれまでの戦略と一線を画している。ウッドはデータ分析企業パランティア(NASDAQ: PLTR)の株式を継続的に売却し、その資金をバイオテクノロジー関連の銘柄に振り向けている。

2月4日、アークの代表ファンドであるARKイノベーションETF(ARKK)は71,069株のパランティア株を売却し、推定約737万ドルを回収した。一方で、その資金の一部は、イルミナ(NASDAQ: ILMN)、10Xジェノミクス(NASDAQ: TXG)、ツイスト・バイオサイエンス(NASDAQ: TWST)の3銘柄に投じられ、合計約914万ドル分の株式が買い増しされた。

この動きは、テクノロジー株の高バリュエーションに対するリスク回避の一環とみられ、特にバイオテクノロジー分野への関心の高まりが背景にあると考えられる。今後、イルミナや10Xジェノミクスの決算発表が予定されており、その結果次第でウッドの戦略が正当化されるかが注目される。

パランティア売却の背景にあるバリュエーション問題と市場の変化

キャシー・ウッド率いるアーク・インベストは、これまでパランティアをポートフォリオの一角に据えてきたが、最近になって売却を進めている。
その背景には、パランティアの株価が急騰し、バリュエーションが高水準に達していることが挙げられる。2月4日の取引では、決算発表後の市場の好反応を受け、一時24%の急騰を記録し、株価は過去最高の106ドルに達した。

しかし、2月6日時点では100.72ドルまで下落しており、ボラティリティの高さが目立つ。市場全体では、高金利環境が続く中でテクノロジー株のリスクが意識されており、ウッドはこの局面で利益を確定し、他の成長分野へ資金をシフトさせる選択をしたと考えられる。

パランティアの決算は市場予想を上回る好結果だったが、それでもウッドが売却を続ける背景には、同社の事業構造が関係している可能性もある。パランティアは政府向けの契約が売上の大半を占めるが、商業向けの成長はまだ限定的である。
市場が期待する規模の拡大が実現するまでには時間がかかる可能性があり、短期的な株価の急上昇を受けて、ウッドは別の成長分野へ資金を移す決断をしたと考えられる。

この動きはアークの投資哲学にも沿っている。ARKKは、長期的な成長が見込める企業に資金を投じる一方で、バリュエーションが過熱した銘柄については一部売却し、リスクを調整する戦略をとることが多い。今回のパランティア株売却も、短期的な利益確定とポートフォリオの再構築を目的としたものだとみられる。

バイオテクノロジー株への転換は成長市場への布石か

ウッドがパランティア売却によって確保した資金の行き先として選んだのは、イルミナ、10Xジェノミクス、ツイスト・バイオサイエンスという3つのバイオテクノロジー企業だった。
これらの銘柄の特徴として共通するのは、遺伝子解析やバイオテクノロジー技術の発展に関与している点である。特にイルミナは、次世代シーケンサー(NGS)技術のリーダーとして、医療や創薬分野での需要が拡大すると期待されている。

ウッドのバイオテクノロジー株への投資は、ARKゲノム・レボリューションETF(ARKG)の基本戦略にも合致している。このETFは、ゲノム編集やバイオテクノロジー関連の企業に重点的に投資しており、今回の買い増しもその延長線上にあると考えられる。

この3銘柄のうち、年初来でプラスとなっているのはツイスト・バイオサイエンスのみだが、市場では10Xジェノミクスとイルミナに対して強気の見方が増えている。
特に10Xジェノミクスは単一細胞解析の分野で優位性を持ち、今後の市場拡大が期待される。一方、イルミナは過去数年間の業績低迷を脱しようとしており、今回の決算発表が転機となる可能性もある。

これらの銘柄に資金を振り向けた背景には、バイオテクノロジー分野が今後の成長市場として注目されていることがある。特に、遺伝子解析や精密医療の発展は、今後数年間で加速すると予測されており、ウッドはこの分野に対する長期的な成長期待を反映した投資を進めていると考えられる。

イルミナと10Xジェノミクスの決算が投資判断の試金石に

バイオテクノロジー銘柄への投資を拡大したウッドだが、その成否は今後の決算次第で大きく左右される可能性がある。
イルミナは2月6日の市場終了後に決算を発表する予定であり、その業績内容が市場の評価を大きく変える可能性がある。10Xジェノミクスも2月12日に決算を控えており、特に売上成長率や市場シェアの動向に注目が集まる。

バイオテクノロジー関連株は、研究開発費が高額であり、短期間での収益化が難しい側面があるため、業績の安定性が重要視される。
ウッドが買い増した3銘柄は、いずれも成長分野に位置するものの、株価の変動は決算発表の内容によって大きく左右される可能性がある。

特にイルミナは、最近の経営方針の変更や規制当局との問題など、複数の課題を抱えており、市場の評価が二極化しやすい状況にある。もし決算内容が市場の期待を裏切る形となれば、株価の調整が入る可能性があるため、注意が必要だ。

一方で、10Xジェノミクスは成長余地が大きいとみられており、決算が良好であれば、投資家の関心が一気に高まる可能性もある。ツイスト・バイオサイエンスについても、他の2社ほどの市場注目度はないものの、特定の分野で強みを発揮しており、ウッドの長期投資の意図が反映されていると考えられる。

ウッドのバイオテクノロジー株への投資判断は、今後の決算結果と市場の動向によって評価が定まるだろう。アークのETFが過去最高水準にあった2020年のような成長を再現できるかどうかは、これらの銘柄の動向に大きく依存することになる。

Source:Finbold