世界最大の資産運用会社であるブラックロック(BlackRock)は、量子コンピューティング企業リゲッティ・コンピューティング(Rigetti Computing Inc.)の株式を大幅に買い増し、その結果、同社の株価は急騰した。ブラックロックは2024年第3四半期にリゲッティの株式を約54万株追加取得し、総保有株数を約944万株とした。
この投資により、リゲッティの第2位の大株主となった。その後、リゲッティの株価は約2,648%の上昇を見せ、2025年1月6日には52週最高値の21.42ドルに達した。この間、ブラックロックの投資価値は約1億1,600万ドル以上に膨らんだと推定される。このような急成長の背景には、グーグルの次世代量子チップ「Willow」の発表など、量子コンピューティング分野の技術革新が市場の関心を集めたことが影響していると考えられる。
一方で、エヌビディアのCEOが実用的な量子コンピューティングの実現には15~30年かかる可能性があると発言し、市場に一時的な不安をもたらしたが、リゲッティの株価上昇トレンドは継続している。ブラックロックのこの戦略的投資は、同社が市場トレンドを形成する巨人としての地位を再確認させるものである。
ブラックロックのリゲッティ投資、戦略的背景と市場への影響

ブラックロックがリゲッティ・コンピューティングの株式を買い増した背景には、量子コンピューティング市場の成長期待がある。同社は、AIやブロックチェーンと並ぶ次世代技術として量子コンピュータを重要視しており、長期的な市場支配力を強化する狙いがあると考えられる。特に、金融、医療、材料科学などの分野での応用が進む中、ブラックロックはその市場形成に関与する立場を確立しつつある。
また、同社の投資戦略は単なる短期利益の追求ではなく、将来的な業界リーダーを見極めるものである。リゲッティは商用量子コンピュータの開発を進める数少ない企業の一つであり、ブラックロックが大株主となることで、企業価値の向上にも貢献する可能性がある。このように、資産運用の巨人が特定分野への投資を強化することで、他の機関投資家やヘッジファンドも同様の動きを取る可能性が高まる。
さらに、ブラックロックが市場に与える影響は、リゲッティの株価急騰という形で既に顕在化している。市場の一部では、今回の動きを「量子コンピューティングの本格的な投資機会到来」と捉える向きもあり、今後も関連銘柄への資金流入が続く可能性がある。
グーグルの量子チップ「Willow」と市場全体の反応
リゲッティの株価急騰を後押しした要因の一つが、グーグルの次世代量子チップ「Willow」の発表である。この新チップは、従来のスーパーコンピュータでは不可能な計算を、極めて短時間で処理できるとされ、量子コンピューティング業界に革命をもたらす可能性がある。グーグルの発表直後、市場では関連銘柄の取引が活発化し、量子コンピュータ関連ETF(QTUM)も急伸した。
これまで量子コンピューティングは、技術的ハードルの高さから商業化が困難とされてきた。しかし、「Willow」の発表により、大手テクノロジー企業がこの分野に本格参入する兆しが強まり、市場の関心が一気に高まった。特に、量子コンピューティングがAIや暗号技術の発展を加速させる可能性があるため、テクノロジー業界全体に波及効果が及ぶことが予想される。
一方で、量子技術の普及には依然として時間がかかるとする慎重な見方もある。エヌビディアのCEOであるジェンスン・ファン氏は、「実用的な量子コンピュータの普及には15~30年かかる可能性がある」と述べており、市場の過熱を警戒する声もある。それでも、「Willow」の登場が量子コンピューティング市場を活性化させたことは間違いなく、今後の技術進展が業界全体にどのような影響を与えるかが注目される。
ブラックロックの長期的な視点と量子コンピュータ投資の展望
ブラックロックの投資行動は、短期的な利益を狙うものではなく、長期的な市場形成を見据えたものと考えられる。量子コンピューティングは、AIやクラウドと同様に次世代の基盤技術として期待されており、その商業化には巨額の投資が必要となる。今回のリゲッティへの投資も、単に株価上昇を狙ったものではなく、業界全体の成長を見据えた戦略的判断といえる。
また、ブラックロックはこれまでも、成長分野への先行投資によって大きなリターンを得てきた。例えば、AI関連企業や暗号資産市場への参入も早かったことから、リゲッティへの投資も同様の成功パターンを狙った可能性がある。特に、機関投資家が量子技術の潜在的な価値を評価し始めていることを示すシグナルとなれば、今後さらに多くの資金がこの分野に流れ込むことが考えられる。
とはいえ、量子コンピューティングの商業化には多くの技術的課題が残されており、即座に大規模な市場が形成されるとは限らない。特に、現在の技術はまだ実験的な段階にあるため、実用化までの道のりは長い。しかし、ブラックロックのような大手資産運用会社が本格的に参入することで、技術開発のスピードが加速し、商業化のタイムラインが前倒しされる可能性もある。
Source:Wall Street Pit