AMDは2024年第4四半期に売上高77億ドルを達成し、市場予想を上回った。特にデータセンター部門が前年比69%増の39億ドルと好調だった。しかし、純利益は前年同期比28%減少し、GAAPベースの1株当たり利益(EPS)は0.29ドルと市場予想の0.64ドルを大幅に下回った。

営業利益は前年比155%増の8億7100万ドルを記録したものの、ゲームおよび組み込み部門の低迷が業績全体の足かせとなっている。2025年第1四半期の売上予測は71億ドルで、成長基調は維持される見通しだ。

データセンター市場でのAMDの優位性と競争環境

AMDの2024年第4四半期における業績の中心は、データセンター部門の躍進である。EPYCプロセッサやAMD Instinct GPUの売上が大幅に拡大し、収益は前年同期比69%増の39億ドルに達した。この成長は、企業のAIおよびハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)向け投資の加速によるもので、特にクラウドプロバイダーやハイパースケーラーからの需要が増加していることが要因だ。

一方、競合であるNVIDIAやIntelも同市場でのシェア拡大を進めており、特にNVIDIAのHopperアーキテクチャを採用したデータセンター向けGPUは依然として市場の主導的地位を占めている。AMDは、AIワークロード向けのInstinct MI300シリーズを投入し、AIモデルのトレーニングと推論市場に本格参入を図っているが、依然としてNVIDIAの圧倒的なシェアを覆すには至っていない。

ただし、AMDはコストパフォーマンスの高さやオープンなソフトウェアエコシステムを武器に、エンタープライズ向け市場やクラウド市場での採用を拡大している。Microsoft AzureやGoogle Cloudをはじめとする主要クラウド事業者は、EPYCプロセッサを採用したインスタンスを提供し始めており、Intel Xeonプロセッサとの競争を激化させている。

また、AMDの戦略は、単なるハードウェア販売にとどまらず、ソフトウェア最適化やパートナーシップ強化にも注力している点が特徴的だ。特にオープンソースのAIフレームワークとの連携を強化し、開発者のエコシステムを広げる動きは、長期的にNVIDIAとの差を縮める可能性がある。AMDがこの成長基調を維持できるかは、今後のソフトウェアエコシステムの拡充とAI市場における競争力次第と言える。

ゲーム市場の停滞とセミカスタムチップの影響

一方で、AMDのゲーム部門は苦戦を強いられている。2024年第4四半期のゲーム部門の売上は前年比59%減と大幅に縮小し、同社の収益構造に影響を与えた。特に、ソニーのPlayStation 5やMicrosoftのXbox Series X|S向けに供給しているセミカスタムチップの需要が減少したことが直接的な要因である。

次世代ゲーム機の発売周期が近づくにつれ、現行世代のゲーム機向け需要は低下し、セミカスタムチップの販売量も減少する傾向にある。これに加えて、2024年のゲーム市場全体の成長鈍化や、消費者の支出抑制が影響し、AMDのゲーム部門に逆風が吹いている。

また、GPU市場においても、NVIDIAのGeForceシリーズが高性能GPU市場を支配しており、AMDのRadeonシリーズは苦戦が続く。特に、AIワークロードにも対応できるNVIDIAのRTX 40シリーズが市場で好評を得ている一方、AMDは価格競争力を武器にする戦略をとっている。

ただし、長期的にはゲーム市場の回復とともにAMDのセミカスタムチップ事業も安定する可能性がある。ソニーやMicrosoftが次世代コンソールの開発を進める中、AMDの技術が引き続き採用される可能性は高く、次の成長サイクルに向けた準備が進められている。

2025年のAMDの戦略と収益拡大のカギ

AMDは2025年第1四半期の売上を71億ドルと予測し、成長の継続を見込んでいる。しかし、純利益とEPSの伸び悩みは引き続き課題となる可能性が高い。収益を拡大するためには、データセンター部門の成長を維持しつつ、他の事業の収益性を改善することが不可欠である。

AI市場の急成長に伴い、AMDはInstinct MI300シリーズの販売強化を進め、HPCおよびAIトレーニング市場への本格参入を図っている。この分野ではNVIDIAが依然として圧倒的な市場シェアを誇るものの、クラウド事業者向けのソリューションで差別化を図ることがカギとなる。

また、クライアントPC市場では、AMDのRyzenプロセッサが引き続き成長を遂げている。特に、AI機能を搭載した次世代のRyzen 8000シリーズが市場投入されれば、インテルとの競争において優位性を確保できる可能性がある。

一方で、コスト構造の最適化も重要な課題である。2024年第4四半期の営業費用の増加は、今後の利益成長を圧迫する要因となるため、AMDは研究開発投資を継続しつつ、コスト管理を強化する必要がある。特に、半導体製造コストの上昇や供給網の変化に対応するため、TSMCとの協力関係を強化しながら、製造戦略を最適化することが求められる。

総じて、2025年のAMDの成長は、AI向け製品の市場シェア拡大と、収益性の向上にかかっている。データセンター市場の成長を維持し、ゲームおよび組み込み部門の回復を進めることで、長期的な競争力を確保できるかが焦点となる。

Source:GuruFocus