Nvidia(NASDAQ:NVDA)は、ここ数年の急成長により市場を牽引してきたが、米中貿易摩擦の影響、データセンター事業の成長鈍化、次世代チップ「Blackwell」の導入遅延などの懸念が広がっている。実際、この2か月間の株価は横ばいで推移し、市場の不安を反映している。
しかし、投資家の間では依然として強気の見方が根強い。特に、TipRanksの5つ星投資家であり、投資プロフェッショナル上位1%にランクインするイオアニス・ズルムパノス氏は、Nvidiaの成長が今後も続くと考えている。彼は、2025年度第4四半期(Q4 FY2025)の決算発表に向けて、同社が売上高および利益率で前年同期比70%以上の成長を達成する可能性があると指摘する。
その背景として、AI技術の発展に伴い、Nvidiaがデータセンター、ヘルスケア、ゲノム解析などの新規市場に進出し、収益基盤を多様化している点が挙げられる。特にヘルスケア分野では、IQVIAやIlluminaとの提携を通じ、AIを活用した医療データ解析や新薬開発の分野で強みを発揮している。
さらに、データセンター事業では、新アーキテクチャ「Blackwell」による大幅な性能向上が見込まれており、企業向けクラウド市場での競争優位性が続くとみられる。市場の不安要素がある中でも、ウォール街のアナリスト36人が「買い」を推奨し、Nvidiaの目標株価は現在の水準から20%以上の上昇余地があるとされている。
このような状況を踏まえ、Nvidiaの今後の成長が持続可能かどうかは、次の決算発表が大きな試金石となるだろう。
データセンター市場の成長鈍化は一時的か Nvidiaの戦略的対応
Nvidiaの成長を牽引してきたデータセンター市場は、近年AI需要の爆発的な拡大とともに拡張を続けてきた。しかし、ここ数か月で大手クラウドプロバイダーの設備投資が鈍化し、市場全体の成長ペースに陰りが見られる。特に、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure、Google CloudといったメガスケーラーがAI関連設備投資のペースを調整していることが、Nvidiaの売上成長への影響を懸念する声を生んでいる。
ただし、これは長期的なトレンドの変化ではなく、一時的な調整の可能性が高い。Nvidiaはすでに次世代アーキテクチャ「Blackwell」の開発を進めており、AI推論能力を30倍に向上させることで新たな需要を喚起する狙いを持つ。さらに、同社はHopper世代のGPUを採用する企業に対し、スムーズな移行を促す戦略を打ち出しており、クラウド市場の回復とともに新たな需要を取り込むとみられる。
この状況を受け、ウォール街のアナリストはNvidiaの短期的な成長率には若干の調整が必要としつつも、長期的な成長シナリオに大きな変化はないとの見解を示している。ズルムパノス氏を含む専門家の見立てでは、2025年度第4四半期の売上高が375億ドルに達し、前年同期比70%以上の成長を遂げる可能性があるとされる。AI分野の進化とデータセンター市場の再成長が連動すれば、Nvidiaの支配力はさらに強固なものとなるだろう。
ヘルスケア市場がNvidiaの次なる成長エンジンとなるか
Nvidiaの成長はデータセンター市場だけに依存しているわけではない。同社はAIを活用したヘルスケア分野への本格進出を進めており、これが今後の収益拡大に寄与する可能性が指摘されている。特に、AIを用いた医療画像解析やゲノム解析、新薬開発といった領域での需要は拡大しており、Nvidiaの技術力がこの市場で競争優位性を持つことは明らかである。
ズルムパノス氏は、NvidiaがIQVIAやIlluminaといった企業と提携し、臨床試験やバイオテクノロジー分野でのAI活用を加速させている点を評価している。医療機関や製薬企業は、AIを活用したデータ解析の迅速化によって研究開発の効率を向上させることが可能となり、NvidiaのAIソリューションがその基盤技術として採用されるケースが増えている。
また、Nvidiaの「Clara」プラットフォームは、医療画像処理やゲノム解析の分野で重要な役割を果たしており、この技術の進化がさらなる市場拡大をもたらす可能性がある。現在、ヘルスケア分野のAI市場規模は3,000億ドル規模と推定されており、Nvidiaがこの分野での存在感を強めれば、データセンター事業と並ぶ新たな収益の柱となることも考えられる。
一方で、ヘルスケア市場への進出は規制要件や技術適応のハードルが高く、短期的な収益化には一定の課題もある。ただし、NvidiaがAI技術を通じてこの市場の変革を主導するポテンシャルは十分にあり、中長期的な成長ドライバーとして注目するべき領域である。
Nvidia株の今後を左右するウォール街の評価と市場の期待
Nvidia株は過去8四半期にわたり、売上高予測を上回る実績を記録しており、その平均サプライズ率は8.64%に達する。こうした背景から、ウォール街の評価は依然として強気であり、TipRanksの分析によれば、36件の「買い」評価、3件の「ホールド」評価が付与されている。このことからも、市場の期待は引き続き高いことが分かる。
現在のNvidiaの目標株価は176.86ドルとされており、現在の株価水準から約20%以上の上昇余地があるとされる。投資家にとって、同社の次なる決算発表が非常に重要なポイントとなることは明白である。特に、データセンター市場の成長鈍化懸念が払拭されるか、ヘルスケア分野の成長がどこまで進展しているかといった点が注目される。
また、Nvidiaの株価はこれまで市場の期待を超える成長を示してきたが、競争環境も変化しつつある。AMDやIntelがAI分野での競争力を強化しているほか、独自の半導体開発を進める大手テクノロジー企業がNvidiaの市場シェアを脅かす可能性もある。このような状況を踏まえると、投資家は短期的なボラティリティに注意しながら、Nvidiaの成長戦略を注視する必要があるだろう。
ウォール街のコンセンサスは依然として「強い買い」となっているが、今後の決算が市場の期待を上回るかどうかが、株価のさらなる上昇を左右する重要な要因となる。投資家にとっては、Nvidiaの決算発表が次の大きな判断材料となるだろう。
Source:TipRanks