米国株市場が堅調な滑り出しを見せる中、旅行関連銘柄のExpedia Group(NASDAQ: EXPE)に注目が集まっている。特に、オプション市場では6月満期の135ドルプットオプションの出来高が急増し、この動きが投資家の関心を引いている。

Expediaの株価は2025年に入ってから軟調な推移を続けているものの、企業の財務状況は安定しており、長期的な旅行需要の回復が期待される。オプション戦略として、このプットオプションを売却することで、一定のプレミアム収入を得つつ、将来的な株価回復に賭けることができる。

市場環境の不確実性を考慮しながらも、旅行業界への強気な見方を持つ投資家にとって、有望な取引手法となる可能性がある。

Expediaのオプション市場に異変 取引データが示す市場心理とは

オプション市場で異常な取引が発生すると、その背景には特定の投資戦略や市場の心理が反映されていることが多い。Expedia Group(EXPE)の6月満期135ドルプットオプションが異例の出来高を記録したことは、投資家の間で同社の株価に対する見方が大きく分かれていることを示唆する。

このプットオプションは、出来高/未決済建玉(Vol/OI)比率が5.61に達しており、通常の水準を大きく上回った。これは、新たにポジションを構築する投資家が増えたことを意味し、単なるポジション調整ではない可能性がある。特に、135ドルという行使価格は現在の市場価格よりも低く設定されているため、投資家が短期的な株価の下落を見込んでいるか、または強気派がプット売りを行い、プレミアム収入を狙っている可能性がある。

オプション市場のデータは、株式市場全体のセンチメントを測る指標ともなり得る。Expediaのプットオプションに取引が集中したことは、旅行業界全体の不透明感が影響しているとも考えられる。米国の関税政策や景気動向による旅行需要の変動が予測される中、市場の不確実性を反映した動きとも言えるだろう。

財務健全化が進むExpedia 旅行業界の回復とともに成長できるか

Expediaは、コロナ禍を経て財務体質の改善を進めてきた。特に負債削減の取り組みは顕著で、2020年にピークとなった純負債53億5000万ドルは、2024年9月時点で9億3100万ドルにまで圧縮されている。過去10年間で最も低い純負債/EBITDA比率0.5倍を記録しており、財務の安定性が増していることが分かる。

この財務改善は、旅行市場の回復を見据えた戦略の一環といえる。Expediaは、Expedia.com、Hotels.com、VRBOなどのブランドを展開し、特に短期レンタル市場での競争力を強化してきた。2024年第3四半期には総予約額が前年同期比7%増の275億ドルに達し、堅調な業績を維持している。収益も40億6000万ドル、純利益は8億900万ドルと、安定成長を続けている。

一方で、アナリストの評価は依然として慎重なものが多い。Cantor Fitzgeraldは目標株価を180ドルに引き下げ、B2C市場の不確実性を指摘している。特に、VRBOを含む消費者向けブランドの成長が鈍化する可能性があり、粗利益率のさらなる拡大が難しくなるとの見方がある。

Expediaが今後の成長を持続できるかどうかは、旅行市場全体の回復スピードと競争環境に左右される。競合のAirbnbやBooking Holdingsの動向も無視できない要素であり、市場シェアの確保が引き続き課題となるだろう。

Expediaのオプション取引にみる市場の動向と投資戦略の選択肢

Expediaの6月満期135ドルプットオプションの活発な取引は、投資家が同社の株価動向に対して分かれた見方を持っていることを示している。オプション市場では、プット売りは強気の姿勢を示す戦略の一つであり、株価が安定するか上昇すれば、売却したプレミアムを利益として得ることができる。

現在の135ドルプットの入札価格は2.73ドルであり、仮にこのオプションを売却し、満期までに株価が135ドルを下回らなければ、そのままプレミアムを収益として確保できる。一方で、株価が135ドルを割り込んだ場合は、プット売りの投資家がその価格で株を購入することになるが、長期的な視点で旅行市場の回復を信じるならば、魅力的な買い増し機会ともなり得る。

このオプション戦略は、市場の不確実性を考慮しながらリスクを抑える手段の一つとなる。旅行業界の回復を前提とする場合、短期的な変動を受けつつも、長期的な成長を見越して戦略的にポジションを取ることができるだろう。特に、財務の安定性を考慮すれば、Expediaの株価が下値を試す局面は長期的な投資チャンスともなり得る。

Source:Barchart.com