バンク・オブ・アメリカのチーフ・インベストメント・ストラテジスト、マイケル・ハートネット氏は、米国の卓越性が政府支出の過剰やAI投資の減速によりピークに達する可能性を指摘している。同氏は、投資家が米国市場に過度に集中し、日本や欧州の割安な銀行株を見落としていると述べ、これらの市場に注目すべきだと提言している。
特に、日本の銀行株は1980年代の高値から74%下落し、欧州の銀行株も2007年のピークから67%下落しており、上昇の余地があると分析している。また、アップルやマイクロソフトなどの「マグニフィセント・セブン」銘柄への投資比率が高まる中、AI投資のピークアウトが米国市場の転換点となる可能性を示唆している。
これらの要因を踏まえ、投資家は米国市場への過度な依存を見直し、グローバルな視点で投資戦略を再考する必要があるだろう。
AI投資の減速が市場に及ぼす影響と企業の対応策
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AI投資は近年、米国市場をけん引する主要な要因の一つであった。しかし、バンク・オブ・アメリカ(BofA)の分析によれば、AI投資サイクルがピークを迎えつつあり、企業の設備投資や市場の成長に変化が生じる可能性がある。エヌビディア(NVDA)やマイクロソフト(MSFT)などのテクノロジー大手は、AI向けのインフラ投資に多額の資本を投じてきたが、そのペースは鈍化すると見られる。特に、AI開発のための半導体需要が落ち着くことで、半導体業界全体の成長率が減速する可能性が示唆されている。
一方で、企業の対応策として、既存のAI技術を活用したサービスの収益化や、効率的な運用を重視する動きが加速する可能性がある。例えば、アルファベット(GOOGL)やアマゾン(AMZN)は、クラウドサービスを通じてAIの商業利用を推進しており、新たな収益源の確保に注力している。また、金融業界や医療分野では、AIを活用したデータ分析技術の導入が進み、企業の競争力を高める要因となるだろう。
ただし、AI投資の減速が市場全体に与える影響には注意が必要だ。AI関連銘柄は過去数年で急成長を遂げたが、過度な投資が修正されることで市場のボラティリティが高まる可能性がある。そのため、今後はAI技術の実用化がどの程度進むかが、各企業の成長戦略において重要な判断材料となるだろう。
米国の財政支出縮小がもたらす市場の転換点
米国の経済成長は、政府の積極的な財政政策に支えられてきた。過去1年間で7兆ドル規模の政府支出が行われ、インフラ投資や社会保障政策が経済を下支えしてきた。しかし、BofAのハートネット氏は、今後の財政支出の縮小が市場に大きな影響を及ぼす可能性を指摘している。財政赤字の拡大により、政府支出を継続することが困難になりつつあり、これが成長鈍化の要因となる可能性がある。
特に影響を受けるのは、政府補助金に依存してきた産業だ。例えば、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)関連企業は、政府の補助を受けて成長してきたが、今後は資金調達の環境が厳しくなる可能性がある。また、インフラ関連のプロジェクトも、予算削減の影響を受けることで進行が遅れることが予想される。
このような状況下で、企業や市場関係者は慎重な資本配分を求められるだろう。特に、政府依存度の高い企業は、自社の財務体質を強化し、持続可能なビジネスモデルを構築する必要がある。一方で、民間資本の活用や海外市場への進出を進めることで、新たな成長機会を見出す企業も増えるだろう。今後の市場の転換点を見極め、柔軟な戦略を取ることが求められる。
日本と欧州の銀行株に潜む成長の可能性
BofAの分析によれば、現在の投資家の多くは米国市場を重視し、日本や欧州の銀行株を十分に評価していない。しかし、長期的な視点では、これらの市場に成長の可能性があると指摘されている。特に、日本の銀行株は1980年代の高値から74%下落しており、欧州の銀行株も2007年のピークから67%下落している。この水準を考えると、割安感があり、中長期的な成長余地が見込まれる。
日本の銀行業界は、長らく低金利環境に苦しんできたが、最近の金利政策の変化により、収益環境が改善しつつある。特に、日銀の金融政策が正常化に向かえば、銀行の貸出金利が上昇し、利益率の回復が期待できる。また、日本の銀行は海外事業の拡大を進めており、アジア市場を中心に成長を模索している。
欧州の銀行も、過去の金融危機の影響から回復しつつある。欧州中央銀行(ECB)の政策が景気回復を支援する形で進められれば、銀行業界全体の収益構造が改善する可能性がある。特に、デジタルバンキングやフィンテックとの連携が進み、伝統的な銀行業務に加えて、新たな収益モデルが形成されつつある。
米国市場がピークに達する中、投資の選択肢として日本や欧州の銀行株を再評価する動きが強まる可能性がある。これらの市場における政策や経済環境の変化を注視し、成長の機会を見極めることが重要となるだろう。
Source:GuruFocus