ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが、米国の衛星ラジオ企業シリウスXMホールディングス(NASDAQ: SIRI)の株式を継続的に取得し、保有比率を35.35%まで引き上げた。SEC提出書類によれば、直近の取引では1月30日、31日、2月3日に計2,300万株を5,400万ドルで購入し、1株あたり平均取得価格は23.37ドルとなっている。

バフェットは過去にもSIRI株を買い増しており、2024年の投資額は累計3億ドルを超える。シリウスXMはリバティ・メディアとの統合を経て単一企業として再編され、2025年に向けた業績回復とコスト削減計画が進行中だ。第4四半期の売上高は21.9億ドルと市場予想を上回り、EVメーカーとの提携強化が成長を後押しする形となった。

一方で、SIRI株価は年初来で15%上昇しているものの、ウォール街のアナリストの大半は慎重姿勢を崩さず、目標株価を23.85ドルと予測。バフェットの動向により、今後の市場評価がどう変化するか注目される。

バークシャー・ハサウェイのSIRI株買い増しが示唆する戦略的意図

ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイがシリウスXMの株式を引き続き取得している背景には、単なる短期的な投機ではなく、戦略的な視点があると考えられる。過去の投資パターンを振り返ると、バフェットは安定したキャッシュフローを生む事業を好み、長期的な収益性を見極めて投資する傾向にある。

シリウスXMはサブスクリプションモデルを採用し、広告収益にも依存しているが、そのビジネスモデルの強みは高い継続率にある。特に、自動車メーカーとの提携により新車購入時の無料トライアルから有料会員への転換率が高く、安定した収益基盤を築いている。バークシャー・ハサウェイが2024年10月から継続的に株式を取得していることは、同社の収益構造を高く評価している可能性を示唆している。

また、シリウスXMの親会社であるリバティ・メディアとの関係も無視できない。リバティ・メディアは、メディア業界におけるM&Aを積極的に行う企業であり、過去にはシリウスXMの経営権を獲得することで成長戦略を強化してきた。バークシャーの動きがリバティの企業再編計画と関連しているかどうかは不透明だが、長期的な視点での投資判断の一環と捉えられるだろう。

シリウスXMの成長戦略と市場の評価

シリウスXMの事業展開は、単なる衛星ラジオの提供にとどまらず、ストリーミング市場への進出や新たな技術の導入によって成長を加速させている。同社はテスラをはじめとするEVメーカーとの連携を強化し、インフォテインメントシステムの一部としてシリウスXMのコンテンツを統合する動きを進めている。この戦略は、自動車市場の変化に適応し、利用者層を広げる狙いがあるとみられる。

また、シリウスXMはAIを活用したカスタマイズ機能の向上にも注力しており、個別ユーザーのリスニングデータをもとに、パーソナライズされたコンテンツを提供する技術開発を進めている。これにより、ユーザーエンゲージメントを高め、解約率の低下を図ることが期待される。

しかし、市場の評価は慎重なものとなっている。最新の決算では、2024年第4四半期の売上高が21億9000万ドルとなり、市場予想を上回ったものの、ウォール街のアナリストの見解は分かれている。SIRI株は年初来で15%上昇しているが、アナリスト12人の予測では、今後12カ月の平均目標株価が23.85ドルとされており、現在の水準から6.25%の下落が見込まれている。

この慎重な評価の背景には、音楽・ポッドキャスト市場の競争激化がある。SpotifyやApple Musicなどの競合サービスとの市場シェア争いが激しくなる中、シリウスXMがいかに独自性を発揮できるかが今後の成長を左右するポイントとなる。

バフェットの投資判断と今後の展望

ウォーレン・バフェットがSIRI株を大規模に取得していることは、同社の収益性と市場での競争力を高く評価している可能性を示している。過去の投資履歴を見ても、バフェットは安定した収益を生む企業に長期的な視点で投資する傾向があり、シリウスXMのビジネスモデルがその基準を満たしていると判断した可能性が高い。

また、バークシャー・ハサウェイは現在、シリウスXMだけでなく、オクシデンタル・ペトロリウム(NYSE: OXY)など、エネルギー関連の株式にも投資を拡大している。これにより、同社のポートフォリオは多様化され、リスクヘッジの戦略が見て取れる。

今後の焦点は、シリウスXMの新たな成長戦略がどの程度市場に受け入れられるかにある。2025年末までに年間2億ドルのコスト削減と7億ドルの負債削減を目標としているが、これが収益拡大にどのような影響を与えるかが注目される。また、競争環境の変化に対応しつつ、新たな収益源を確保できるかも今後のカギとなる。

バフェットの巨額投資が示すのは、短期的な株価の変動ではなく、企業の本質的な価値に基づいた投資戦略である。市場の予測が慎重な中で、シリウスXMが今後どのように成長を遂げるのか、その動向に注目が集まる。

Source:Finbold