2025年1月20日、ドナルド・トランプ氏が第47代アメリカ合衆国大統領に就任した。彼の再任により、法人税減税や規制緩和などの政策が再び注目されている。特に、2017年の「減税・雇用法(TCJA)」による法人税率の引き下げは、企業の自社株買いを大幅に増加させた。S&P500企業の自社株買い額は、TCJA施行前の年間平均約5,000億ドルから、施行後の2018年には8,400億ドル、2019年には7,490億ドルと急増した。
ゴールドマン・サックスの予測では、2025年の自社株買い額は1兆750億ドルに達する見込みである。トランプ氏は選挙戦で、国内製造企業の法人税率を15%まで引き下げると公約しており、これが実現すれば、さらなる自社株買いの増加が期待される。これらの政策は、株式市場に大きな影響を及ぼす可能性があり、投資家は注視する必要がある。
トランプ再選と法人税減税の行方
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トランプ大統領が2期目を迎えたことで、ウォール街では法人税のさらなる引き下げに期待が高まっている。彼は選挙戦において「アメリカ国内で製造を行う企業の法人税率を15%に引き下げる」と公約しており、もしこの政策が実行されれば、企業の利益増加と自社株買いのさらなる加速が予想される。
前回の法人税引き下げが実施された2017年の「減税・雇用法(TCJA)」では、法人税率は35%から21%へと大幅に削減された。これにより、S&P 500企業による年間自社株買い額は2018年に8,400億ドル、2019年には7,490億ドルへと急増した。ゴールドマン・サックスは、2025年の自社株買いが1兆750億ドルに達すると予測しており、トランプ政権下での減税策が市場に大きな影響を及ぼすことを示唆している。
ただし、法人税減税が短期的な株価押し上げ要因となる一方で、長期的な経済成長に与える影響は慎重に見極める必要がある。自社株買いが増加することで株主還元は強化されるが、それが設備投資や新規雇用の増加に直結するとは限らない。トランプの政策が今後どのように展開されるか、投資家や企業経営者にとって慎重な判断が求められる。
自社株買いがもたらす市場への影響
トランプ政権の政策の中で、特に市場に大きな影響を与えているのが「自社株買いの増加」である。自社株買いは、企業が市場から自社の株式を買い戻すことで、株価の上昇や1株当たり利益(EPS)の向上を促す。投資家にとっては好材料となるが、一方で懸念も指摘されている。
過去10年間でS&P 500企業は総額7兆ドル以上の自社株買いを実施しており、特にアップル(6,953億ドル)、アルファベット(2,867億ドル)、マイクロソフト(1,962億ドル)などのハイテク大手が積極的に買い戻しを行っている。自社株買いによって浮動株数が減少し、EPSが向上することで株価は安定するが、過度に依存することはリスクとなる可能性がある。
自社株買いが多く行われると、本来企業が投資すべき研究開発や設備投資が後回しになる可能性がある。また、短期的な株価上昇を狙った経営戦略が優先されることで、長期的な企業の成長力が損なわれるリスクもある。JPモルガン・チェースのアナリストは「自社株買いが過度に市場を支配すると、経済の持続的な成長が難しくなる」と指摘しており、投資家はこの動向を注意深く見守る必要がある。
AI投資と自社株買いのバランス
一方で、AI投資の拡大もトランプ政権の経済政策において重要なポイントとなる。PwCの報告によると、AIは2030年までに世界経済に15.7兆ドルの影響を与える可能性があるとされており、今後の成長分野として期待されている。しかし、トランプ政権下ではAI分野への政府支援がどのように変化するか不透明な部分もある。
バイデン政権時代にはAIの倫理的規制や監視体制の強化が進められたが、トランプ大統領はより市場原理に基づいた政策を打ち出す可能性が高い。規制緩和が進めば、短期的には企業のAI開発は加速するが、長期的にはデータプライバシーや安全性の問題が懸念される。
さらに、トランプ政権下での企業戦略はAI投資と自社株買いのバランスに影響を与える可能性がある。企業が短期的な利益を重視して自社株買いを優先すれば、AI研究やイノベーションへの投資が遅れる恐れがある。逆に、AI分野の競争が激化する中で、企業が先行投資を加速させれば、長期的な成長力が高まることも考えられる。
このように、トランプ政権の経済政策は、短期的な株主還元と長期的な成長戦略のバランスをどのように取るかが鍵となる。市場の動向を注視しつつ、政策の影響を見極めることが投資家にとって重要な判断材料となる。
Source:The Motley Fool