テスラの株価は、CEOイーロン・マスク氏のOpenAI買収提案や政治的活動への関与が投資家の懸念を招き、2月11日時点で4日連続の下落となり、約10%の下落率を記録した。特にドイツ市場では、マスク氏の極右政党支持が影響し、1月の販売台数が前年同月比59%減の1,277台と急減した。

欧州全体でも、英国で12%、フランスで63%の販売減少が報告されている。投資家は、マスク氏の多岐にわたる活動がテスラの経営に影響を及ぼす可能性を懸念しており、特にOpenAI買収に伴う資金調達のためのテスラ株売却リスクにも注目が集まっている。これらの要因が重なり、テスラの将来展望に不透明感が漂っている。

テスラの欧州市場苦戦、ブランド価値の低下が影響か

テスラはこれまで欧州市場で順調に成長してきたが、2024年に入り販売台数が急減している。特にドイツでは、1月の販売台数が前年同月比59%減少し、1,277台にとどまった。英国やフランスでも二桁台の減少が報告されており、これまで欧州で築いてきた市場基盤に陰りが見え始めている。

要因の一つとして挙げられるのが、ブランド価値の低下だ。テスラはかつて先進的なEVメーカーとして高い評価を受けていたが、近年では品質問題やサービスの不満が指摘されている。特にソフトウェアの不具合や部品の耐久性に関するクレームが増加しており、既存ユーザーの満足度低下が新規購入意欲を阻害している可能性がある。

さらに、欧州市場では競争が激化している。ドイツのフォルクスワーゲンやBMW、中国のBYDなどが新型EVを相次いで投入し、価格競争が進行している。テスラは2023年から大幅な値下げを実施してきたが、それでも消費者の関心を十分に引きつけられていない。従来のブランド力が低下し、価格競争だけでは市場のシェアを維持できない状況に陥っている可能性がある。

テスラは2024年後半に自動運転技術を活用したロボタクシーを発表する予定だが、市場の懐疑的な見方は根強い。これまでの販売低迷が一時的なものなのか、ブランド価値の低下による長期的な問題なのかが注目されている。

イーロン・マスク氏の政治的発言とテスラの株価への影響

イーロン・マスク氏の政治的発言が、テスラの企業価値に影響を与えているとの指摘が増えている。マスク氏は近年、X(旧Twitter)上での政治的発言を活発化させており、特に極右的な言動が物議を醸している。これが欧州市場におけるブランドの毀損につながっているとの見方もある。

例えば、ドイツ市場ではマスク氏の発言が原因で消費者の反発が強まり、1月の販売台数が大幅に落ち込んだと指摘されている。欧州は環境問題や社会的責任を重視する消費者が多く、企業経営者の政治的スタンスが購買意欲に影響を与えやすい。マスク氏の発言が、テスラに対する信頼を損なう要因となっている可能性は否定できない。

また、テスラの株価にも影響が表れている。2月11日時点で4日連続の下落となり、1月中旬からは約25%の下落幅を記録している。これは「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる米国の主要ハイテク企業の中でも最も悪いパフォーマンスだ。マスク氏の発言がブランド価値を下げるだけでなく、企業の成長性や市場の信頼を揺るがしている可能性がある。

こうした中、マスク氏はOpenAIの買収を提案し、新たな事業展開を進めようとしている。しかし、過去のTwitter買収の際には、テスラの株価が急落し、資金調達のために大量のテスラ株を売却した経緯がある。今回も同様の展開が懸念されており、テスラ株のさらなる下落リスクを警戒する声が広がっている。

テスラの今後、AI企業への転換は成功するのか

テスラは単なるEVメーカーではなく、AI企業としての地位確立を目指している。自動運転技術やロボタクシーの開発を推進し、2024年には新たな自動運転車両を発表する計画だ。しかし、これが市場にどの程度評価されるかは不透明である。

まず、自動運転技術の実用化には課題が多い。米国では自動運転車の事故が増加しており、規制当局からの監視が強まっている。欧州や中国でも厳格な規制が存在し、テスラが計画通りに技術を展開できるかは未知数だ。また、完全自動運転への信頼が確立されていない中で、消費者の受け入れが進むかどうかも課題となる。

さらに、AI分野では競争が激化している。OpenAIやGoogleのDeepMind、メタのAI研究開発など、既存のテック企業がしのぎを削っており、テスラがこの分野で主導権を握るのは容易ではない。AIの開発には莫大な資金が必要であり、もしマスク氏がOpenAI買収を本格化させれば、テスラの財務基盤にも影響を及ぼす可能性がある。

テスラの未来は、EV市場の競争とAI企業としての成長のバランスにかかっている。自動車メーカーからAI企業へとシフトすることで、長期的な成長を遂げる可能性はあるものの、短期的には株価の不安定さが続くことが予想される。投資家の信頼を取り戻すには、確固たる成長戦略と安定した経営体制が不可欠だ。

Source:GuruFocus