2025年1月24日現在、テスラ(NASDAQ: TSLA)の株価は$412.38を記録し、過去12カ月で約98%の上昇を遂げている。この背景には、人工知能(AI)や自動運転技術の進展があり、特に完全自動運転(FSD)機能の開発が注目される。

一方、ルーシッド(NASDAQ: LCID)やリヴィアン(NASDAQ: RIVN)などの他の西側EVメーカーは、2024年の「EV冬の時代」以降、株価の低迷が続いている。これらの企業は市場環境の変化に適応しきれず、内部的な問題や過度な楽観的予測が影響していると考えられる。

対照的に、中国のBYDは、米国市場への参入が制限されているにもかかわらず、過去12カ月で約47%の株価上昇を達成している。今後、トランプ政権の政策がEV業界に与える影響や、テスラと他のEVメーカー間の格差の拡大が注目される。

テスラの株価急騰の要因と自動運転技術への期待

テスラ(NASDAQ: TSLA)の株価が過去12カ月で約98%上昇した背景には、単なるEV市場の変動だけでなく、同社の技術革新や市場戦略が影響している。特に、完全自動運転(FSD)技術の進展が投資家の期待を押し上げており、これが株価の押し上げ要因の一つとなっている。

テスラは2024年にFSDのバージョンアップを重ね、AIを活用した自動運転システムの精度向上を図った。これにより、米国内の一部地域ではFSDの完全実装に向けた試験が進んでおり、規制当局との調整が加速している。また、テスラが2025年に計画している「ロボタクシー」構想も、長期的な収益源として期待されている。この技術が市場で成功すれば、同社の事業モデルがEV販売中心からサービス提供型へと大きくシフトする可能性がある。

しかし、FSDの完全導入にはまだ課題が多い。まず、規制の壁が依然として高く、各国の道路交通法が自動運転を前提としていない点が問題となる。さらに、技術的な信頼性が完全には確立されておらず、事故リスクや保険制度の整備も進めなければならない。こうした要素が解決されない限り、FSDの商用化が直ちに大規模に進むとは限らない。

とはいえ、投資家はFSDの発展に強い期待を寄せており、これがテスラ株の堅調な上昇を支えている。市場では、「トランプ政権が規制を緩和することで、テスラの自動運転技術が一気に普及する」との見方もあるが、これはあくまで推測の域を出ない。実際には、規制と技術のバランスをどう取るかが今後の重要な課題となる。

小規模EVメーカーの苦境とルーシッドの市場誤算

テスラが市場で成長を続ける一方で、小規模EVメーカーの状況は厳しい。特にルーシッド(NASDAQ: LCID)とリヴィアン(NASDAQ: RIVN)の株価は2025年の年初から大幅に下落しており、それぞれ12.42%と5.41%の下落率を記録している。この傾向は、2024年の「EV冬の時代」の影響が長引いていることを示している。

ルーシッドは特に厳しい状況に直面している。同社は高級EV市場をターゲットにしているが、2024年の販売台数は自社予測を大幅に下回り、実際には計画の約90%しか達成できなかった。これは、同社が需要を過大評価し、実際の市場環境との乖離を見誤った結果といえる。ルーシッドはサウジアラビア公的投資基金(PIF)からの支援を受けているものの、それでも成長戦略の見直しを迫られている。

リヴィアンもまた、需要の変動と生産コストの問題に直面している。同社はEVピックアップトラック市場を開拓しようとしているが、価格競争が激化する中で利益を確保するのが難しくなっている。さらに、トランプ政権の化石燃料政策の復活により、EV市場全体の成長が鈍化する懸念もあり、小規模メーカーにとっては厳しい局面が続いている。

こうした状況から、EV市場は単に技術力の高さだけでなく、適切な市場戦略やコスト管理が成功の鍵となることが改めて浮き彫りになった。特に、従来の自動車メーカーがEV分野に参入を加速させる中で、小規模メーカーがどのように差別化を図るかが問われている。

BYDの快進撃と米国市場の壁

一方で、中国のEV大手BYDは、厳しい市場環境の中でも堅実な成長を遂げている。同社の株価は過去12カ月で47.52%上昇し、2025年に入ってからも2.22%の上昇を記録している。この成長は、BYDが積極的な事業展開を続けていることを示しており、テスラを超える販売台数を記録したこともその一因となっている。

特筆すべきは、BYDが米国市場にほとんど参入できていないにもかかわらず、この成長を達成している点だ。米国はEV市場として非常に重要な市場だが、保護主義的な政策により、中国メーカーの参入は厳しく制限されている。メルセデス・ベンツのCEOであるオラ・ケレニウス氏は「競争力の劣る西側EVメーカーを守るための措置であり、消費者にとっては不利益になっている」と指摘している。

BYDは欧州市場や新興国市場に力を入れることで成長を維持しており、特にバッテリー技術の進化が競争力の源泉となっている。同社の「ブレードバッテリー」は、安全性と耐久性の高さから多くの自動車メーカーにも採用され始めている。また、バッテリー供給のみならず、自社ブランドのEV販売を拡大する戦略を取っており、他の中国メーカーとの差別化も進めている。

とはいえ、BYDが今後さらに成長を続けるためには、米国市場の壁をどう乗り越えるかが課題となる。現在、米国政府は中国EVメーカーに対して厳しい関税を課しており、これが撤廃される兆しは見えない。このため、BYDは他の市場での成長を加速させるか、米国市場への間接的なアプローチを模索する必要がある。

EV市場全体としては、テスラが技術革新を続ける中で、小規模メーカーが苦戦し、中国勢が成長を遂げるという三極構造が鮮明になってきた。今後の市場動向を見極める上で、各メーカーの戦略がどのように変化するかが重要なポイントとなる。

Source:Finbold