人工知能(AI)関連株は、近年急速に成長を遂げており、多くの企業が市場の期待を背負っている。特にNvidiaやPalantirなどのAIリーダーは大きなリターンを生み出しているが、すべてのAI企業が順調に成長しているわけではない。

**C3.ai(NYSE: AI)とSoundHound AI(NASDAQ: SOUN)**は、成長の鈍化や収益性の低迷に直面しており、短期的な投資対象として慎重な判断が求められる状況にある。本記事では、この2社の現状とリスク要因を掘り下げ、今後の見通しを探る。

C3.aiの成長鈍化と財務の不安定さ 事業モデルの課題とは

C3.aiは、AIソフトウェアを企業向けに提供する企業として期待されてきたが、近年は成長鈍化と収益性の低迷に直面している。特に、売上成長の大半が「優先エンジニアリングサービス」に依存している点が課題となっている。このサービスは顧客向けの試験運用を目的としており、持続的なサブスクリプション収益とは異なる特性を持つ。

さらに、C3.aiは依然として黒字化しておらず、2025年度の調整後営業損失は1億500万ドル~1億3500万ドルと予測されている。この損失規模は、AI市場の急成長と比較すると異質な動きであり、事業の収益基盤がまだ確立されていないことを示唆する。また、CEOのトーマス・シーベル氏が2147万ドル相当の株式を売却したことも市場の不安を煽る要因となった。

ウォール街の評価も慎重な姿勢が目立ち、バンク・オブ・アメリカのアナリストは「売り」推奨を維持している。売上成長率は前年比29%と堅調に見えるが、主力のサブスクリプション収益の成長率は22%にとどまっており、競争優位性に疑問が生じている。また、競合のPalantirは黒字化に成功している点も、C3.aiの戦略が市場で苦戦していることを示している。

こうした状況を考慮すると、C3.aiは持続可能なビジネスモデルの確立が急務といえる。特に、AI市場の拡大を追い風とするためには、試験運用の顧客を本契約へと転換し、安定した収益基盤を築くことが求められる。現在の成長ペースとコスト構造を見直し、黒字化へ向けた明確な戦略を示せるかが今後の鍵となる。

SoundHound AIの株価急落 Nvidiaの撤退がもたらした影響とは

SoundHound AIは、音声認識技術の分野で注目される企業であり、過去1年間で株価が200%上昇するなど期待を集めていた。しかし、2024年に入ると状況が一変し、株価は約50%急落した。この急落の主な要因は、NvidiaがSoundHound AIの株式を完全に売却したことにある。

NvidiaはAI市場の最前線にいる企業であり、その投資は市場の信頼性を高める要素だった。そのNvidiaがSoundHound AIの保有株を手放したことは、市場に対し「成長の持続性に疑問がある」とのシグナルを送ることになった。実際、SoundHound AIの収益は増加しているものの、営業損失の拡大やキャッシュフローの悪化が課題として残っている。

2024年9月期の決算では売上が前年比89%増の2510万ドルに達したが、営業損失は3380万ドルと前年の2倍以上に拡大した。さらに、2024年の最初の9カ月間で営業キャッシュフローの流出が7580万ドルに達し、同社の財務基盤の脆弱さが浮き彫りになった。こうした状況の中でNvidiaが撤退したことは、今後の資金調達や成長戦略に影響を及ぼす可能性がある。

ウォール街のアナリストは、SoundHound AIの株価が今後119%上昇すると予測しているが、その見通しには不確実性が伴う。収益性の確立が不透明なままでは、株価回復のための根拠としては不十分といえる。Nvidiaの撤退が市場に与えた影響は大きく、SoundHound AIが自社の競争力を証明できるかが今後の焦点となる。

AI市場の成長と個別銘柄の明暗 企業の収益モデルが分かれ道に

AI市場は引き続き拡大を続けており、多くの企業がこの成長トレンドに乗ろうとしている。しかし、C3.aiやSoundHound AIのように、収益化が進んでいない企業は、市場の成長と逆行する形で評価を落としている。このことは、単に「AI関連株」としての期待だけではなく、個別企業のビジネスモデルが重要であることを示している。

C3.aiはエンタープライズ向けのAIソフトウェアを提供するが、売上の大部分が試験運用に依存しており、継続的な収益を生み出せるかが問われている。また、SoundHound AIは音声認識技術の分野で注目を集めるが、財務状況の悪化と大口投資家の撤退が不安材料となっている。両社ともに市場の期待が先行していたが、実際の収益性が追い付いていないことが問題視されている。

一方で、AI市場全体としては依然として成長の余地が大きい。特に、NvidiaやPalantirのような企業は、収益基盤を確立しながら成長を続けており、市場の資金がこうした安定した企業に集まる流れが加速している。そのため、AI関連企業への投資を検討する際には、単なる「AIブーム」に乗るのではなく、個別企業の財務基盤や成長戦略を見極めることが重要となる。

今後、C3.aiやSoundHound AIが市場の信頼を取り戻すには、収益性の向上と持続可能な成長戦略の確立が不可欠となる。AI市場の成長が続く中で、企業ごとの競争力がどのように変化していくのか、その動向が注目される。

Source:Finbold