2月14日、米国の透析サービス大手であるDaVita Inc.(NYSE: DVA)の株価が11%下落した。これは、同社が発表した2025年の業績見通しが市場予想を下回ったことが主な要因である。さらに、ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイ(NYSE: BRK.A, BRK.B)が同社株式の一部を売却したことも、投資家心理に影響を与えたと考えられる。

DaVitaは第4四半期の決算で、調整後1株当たり利益(EPS)2.24ドル、売上高33億ドルと、いずれも市場予想を上回る結果を示した。しかし、2025年のEPS見通しを10.20~11.30ドルと発表し、この中央値は市場予想の11.24ドルを下回った。

この背景には、患者ケアコストの増加、供給制約、透析センターの閉鎖などが影響している。特に、ハリケーン・ヘレーネの影響でバクスター社のノースコーブ工場が一時閉鎖されたことにより、腹膜透析(PD)溶液の供給不足が生じ、新規患者の受け入れが約350人分減少した。これにより、2025年のボリューム成長にも悪影響が及ぶと予想される。

さらに、バークシャー・ハサウェイは2月11日にDaVitaの株式203,091株を売却し、約3,170万ドルを得た。この売却は事前に合意された自社株買い契約の一環であり、バークシャーの持ち株比率は45%に調整された。同社は2011年からDaVitaに投資しており、現在も筆頭株主として約3,590万株(約64億ドル相当)を保有している。

これらの要因が重なり、DaVitaの株価は2月14日の取引終了時点で157.42ドルとなり、年初来の上昇率は27%に調整された。投資家は、同社の今後の業績動向と市場環境の変化に注視する必要がある。

DaVitaのコスト増要因と供給制約の背景

DaVitaの2025年業績見通しが市場予想を下回った主な要因の一つは、患者ケアコストの上昇と供給制約による影響である。特に、医療費の高騰と透析関連資材の供給問題が業績に大きな圧力をかけている。

まず、患者ケアコストの増加は、医療業界全体の課題である。近年、医療従事者の不足や賃金の上昇が続いており、透析サービスを提供する企業にとって人件費の負担が増加している。加えて、米国ではインフレによる医療機器や薬剤の価格上昇が続いており、DaVitaもその影響を受けている。

供給制約の問題も深刻だ。透析治療では、透析液やフィルターなどの専用機材が不可欠だが、ハリケーン・ヘレーネの影響でバクスター社のノースコーブ工場が閉鎖され、腹膜透析(PD)溶液の供給が滞った。これにより、新規患者の受け入れが困難となり、業績成長の鈍化につながった。加えて、物流の混乱や原材料の価格高騰も供給制約を悪化させている。

このような環境の中で、DaVitaは事業の効率化を進めているが、医療業界全体のコスト上昇が収益性に与える影響は無視できない。特に、透析センターの閉鎖や統合が進めば、短期的なコスト削減効果は期待できるものの、サービス提供能力の低下が今後の成長に影響を与える可能性がある。

バークシャー・ハサウェイの売却が持つ意味

ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイがDaVitaの株式を一部売却したことは、市場に大きな影響を与えた。しかし、この売却が単なるポートフォリオ調整なのか、それともDaVitaに対する見方の変化を示唆しているのかが注目されている。

バークシャーは2011年からDaVitaに投資しており、長年にわたって保有を続けてきた。今回の売却で持ち株比率は45%に低下したものの、依然として筆頭株主の地位を維持している。売却の背景には、事前に合意された自社株買い契約があるため、単なるキャッシュフロー管理の一環と見ることもできる。

一方で、バークシャーはここ数年、ヘルスケア業界に対する投資戦略を調整している。過去にはバイオテクノロジーや製薬関連銘柄への投資を増やしたが、近年は一部のポジションを縮小する動きも見られる。DaVitaの業績が不安定な中で、一部株式を売却することでリスクを分散させようとした可能性もある。

また、DaVitaの業績見通しが市場予想を下回ったことで、投資家の間には慎重な姿勢が広がった。バークシャーの売却が、短期的な不安材料として受け止められた結果、株価の下落を助長した面もある。しかし、バークシャーが依然として3,590万株(約64億ドル相当)を保有していることを考えると、完全な撤退ではなく、長期的な視点でのポートフォリオ調整の一環と見るのが妥当だろう。

透析業界の今後とDaVitaの戦略

DaVitaの業績に影響を与えた供給制約やコスト増加の問題は、透析業界全体にも共通する課題である。米国では、慢性腎臓病(CKD)患者の増加に伴い、透析サービスの需要は今後も拡大すると考えられる。一方で、政府の医療費抑制策や規制強化が、事業運営に影響を与える可能性がある。

米国では、メディケア(高齢者向け公的医療保険)が透析治療の大部分をカバーしている。しかし、政府の財政負担を抑えるため、透析サービスの報酬体系が厳格化される動きが進んでいる。DaVitaのような企業にとっては、コスト管理の強化が不可欠となる。

また、新たな治療法の台頭も、業界の構造を変える可能性がある。近年では、腎移植の技術革新や、新しい透析装置の開発が進んでおり、従来型の透析センターに依存するビジネスモデルが変化する兆しも見られる。特に、自宅で行う在宅透析の普及が進めば、透析センターの必要性が減少する可能性もある。

DaVitaはこうした環境変化に対応するため、デジタル技術を活用した患者ケアの向上や、コスト削減策の強化を進めている。特に、遠隔医療の導入や、患者データの活用による治療最適化が重要な戦略となるだろう。

業界全体が変革期を迎える中で、DaVitaがどのように競争力を維持するかが、今後の株価動向を左右する要因となる。投資家は、同社の成長戦略とともに、医療業界全体の動向を注視する必要がある。

Source:Finbold