著名投資家ウォーレン・バフェットは、2025年の株式市場の暴落を予測していない。彼は市場の短期的な動向を予測することの無意味さを強調し、過去の株主への手紙でも「短期的な市場予測は有害であり、避けるべきだ」と述べている。
一方で、バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは、現金・現金同等物を約50兆円(約3,250億ドル)にまで積み増しており、これは同社史上最大の現金保有額である。この慎重な姿勢は、市場の過熱感や高いバリュエーションに対する警戒心の表れと考えられる。
しかし、バフェットは市場の暴落を予測するのではなく、適切な投資機会を待つための準備を重視している。彼の投資哲学は、予測よりも準備が重要であることを示している。
バフェットが示す市場への警戒姿勢とバークシャー・ハサウェイの現金保有戦略

バフェットが2025年の市場暴落を予測していないとはいえ、彼が市場に対して楽観的であるわけではない。その証拠に、バークシャー・ハサウェイは過去8四半期連続でネット売りを続けており、直近のデータによれば、この流れは9四半期連続となる可能性が高い。また、2024年9月末時点での同社の現金・現金同等物は3,250億ドル(約50兆円)を超え、過去最高の水準に達している。
この巨額の現金保有は、バフェットが市場の過熱感を強く意識していることを示唆する。現在、「バフェット指標」として知られる株式市場の時価総額とGDPの比率は200%を超え、歴史的な高水準にある。この指標が過去に高水準を記録した際、市場はその後調整局面に入ることが多かった。こうした状況を踏まえ、バフェットは投資の機会を慎重に見極めている可能性が高い。
ただし、彼の行動は必ずしも市場の崩壊を予期しているものではなく、むしろ「適切な価格での投資機会が限られている」と判断している結果ともいえる。これまでの彼の投資スタイルを考えると、バフェットは割安な資産を長期保有することを重視しており、市場全体のバリュエーションが高騰している今は、買い場ではないと見ている可能性が高い。これは、短期的な市場の動きに左右されるのではなく、冷静な資本配分を続ける姿勢とも一致する。
過去の市場暴落とバフェットの対応から読み解く現在の立ち位置
バフェットは市場予測を避けることで知られているが、彼が過去の市場暴落時にどのような行動を取ってきたのかを振り返ると、現在の動きの意図がより明確になる。たとえば、2008年のリーマン・ショック時、バフェットは暴落の最中に**ゴールドマン・サックスやゼネラル・エレクトリック(GE)**などに巨額の投資を行い、後に大きなリターンを得た。さらに、2020年のコロナショックの際も、航空株を手放す一方で、一部のディフェンシブ銘柄を買い増している。
こうした過去の動きを見ると、バフェットは市場の底を正確に予測するのではなく、「割安と判断したときに大胆に動く」戦略を取っていることが分かる。現在、彼が現金を積み増していることは、短期的な暴落を予想しているのではなく、適切なタイミングで動く準備をしている可能性がある。
また、バフェットは「市場が回復の兆しを見せてからではなく、最も悲観的なときにこそ買うべきだ」との考えを持っており、これがバークシャーの巨額の現金保有戦略にもつながっている。市場の高バリュエーションを背景に、今は買い時ではないと判断しているとすれば、彼の慎重な姿勢は一貫しているといえるだろう。
バフェットの哲学が示す長期的な市場戦略の重要性
バフェットの投資哲学は「予測よりも準備が重要」であり、この考えは2025年に向けた市場動向を考える上でも参考になる。彼は短期的な市場の上下を当てることに意味はないと考え、代わりに企業の本質的な価値を見極め、割安な価格での購入を狙う姿勢を貫いている。
また、バフェットは「市場全体の動向よりも、個別の企業の収益力を重視する」スタイルを採っており、これが市場暴落時の積極的な買い増しにつながっている。例えば、2008年の金融危機や2020年のコロナショックでは、短期的な恐怖が広がる中で、彼は財務の健全な企業に対する投資を増やし、長期的な利益を狙った。
現在の市場環境は、S&P 500が2年連続で20%以上上昇するなど、過熱感が強い。しかし、バフェットが示す通り、市場がどのように動くかを予測するよりも、冷静に資産を管理し、適切なタイミングで投資できるよう準備を整えることが重要だろう。バフェットの行動は、短期的な動揺に振り回されるのではなく、長期的な視点で市場を捉えることの大切さを改めて浮き彫りにしている。
Source:The Motley Fool Australia