著名な投資家ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは、2024年第4四半期において、S&P500に連動するETFを全て売却し、主要な銀行株の保有比率も大幅に削減したことが明らかになった。

具体的には、バンク・オブ・アメリカ株をさらに売却し、アップルの持ち分は不変であった。一方で、新たにコンステレーション・ブランズの株式を取得し、ドミノ・ピザやオクシデンタル・ペトロリウムなどの持ち株比率を増加させた。

これらの動きは、バフェットが市場全体に対して慎重な姿勢を維持しつつ、特定の企業への投資を強化していることを示唆している。

バフェットのETF売却が示す市場観とその背景

ウォーレン・バフェットがS&P500に連動するETFを完全に売却したことは、市場に対する慎重な見方を反映している可能性がある。これまでバフェットは、個別銘柄の選別を重視しつつも、市場全体の成長に賭ける形でETFを一定割合保有していた。しかし、今回の完全売却は、短期的な市場の変動に対する警戒感を示していると考えられる。

特に、米国市場は高金利環境が続いており、景気後退リスクへの懸念が払拭されていない。FRB(米連邦準備制度理事会)は金利引き下げの可能性を示唆しているものの、インフレが完全に制御されたわけではなく、株式市場の不安定要素は依然として多い。バフェットがETFを売却した背景には、市場全体よりも個別企業のファンダメンタルズに依存する投資戦略へのシフトがあると考えられる。

また、バフェットは市場の大幅な調整局面を待っている可能性もある。過去の市場動向を振り返ると、バフェットは株価が大きく下落したタイミングで大規模な買いを行うことが多かった。現在の記録的なキャッシュポジションの維持は、今後の下落局面での戦略的な買いを見据えたものと考えられる。

銀行株の売却が示唆する金融セクターのリスク

バフェットは今回の四半期で、シティグループ、キャピタル・ワン・ファイナンシャル、バンク・オブ・アメリカといった主要な銀行株の保有比率を削減した。これらの売却は、金融セクターのリスクを反映した動きとみることができる。

米国の銀行セクターは、昨年の金融不安を経て回復基調にあるものの、高金利環境が収益を圧迫している。特に、消費者ローンやクレジットカード事業を展開する金融機関は、金利上昇による貸倒れリスクの増加に直面している。バフェットがキャピタル・ワンの保有株を18%減少させたのは、個人向けローンの不良債権リスクを警戒している可能性がある。

また、バンク・オブ・アメリカの15%売却も重要なポイントだ。同銀行は、金利上昇による貸出金利の上昇を追い風にしてきたが、同時に長期債の評価損リスクを抱えている。バフェットは長期的にバンク・オブ・アメリカを支持してきたが、今回の売却はリスク調整の一環と考えられる。

銀行株の売却は、バフェットの慎重な市場観を反映するとともに、金融セクターに潜む構造的なリスクへの警戒を示している。特に今後の金利政策や景気動向が不透明な中で、金融機関の経営環境が大きく変化する可能性もあり、バフェットはそのリスクを回避する動きを強めているとみられる。

ドミノ・ピザとオクシデンタル・ペトロリウムへの注力の狙い

一方で、バフェットは特定の銘柄への投資を強化している。その代表例がドミノ・ピザ(NYSE: DPZ)とオクシデンタル・ペトロリウム(NYSE: OXY)だ。

ドミノ・ピザの持ち株比率を87%増加させたことは、消費者市場の安定性に対する期待を示している。同社はデリバリー事業を強みとし、不況期でも一定の需要を確保できる。特に、インフレ環境下においても手頃な価格で消費者に支持される点が評価された可能性が高い。また、デジタル注文の増加と効率的なフランチャイズモデルにより、競争力を維持している点もバフェットの投資判断に影響を与えたと考えられる。

オクシデンタル・ペトロリウムに関しては、バフェットがこれまでも積極的に買い増しを行っており、エネルギーセクターの長期的な成長性に賭けていることがうかがえる。原油価格の変動はあるものの、世界的なエネルギー需要は依然として高く、特に新興市場での需要拡大が期待される。バフェットは、安定的なキャッシュフローを生み出す資源企業の価値を重視しており、オクシデンタルはその戦略に合致しているとみられる。

バフェットのポートフォリオ変更は、市場全体に対する慎重な姿勢を維持しつつも、安定性のある成長企業への投資を強める方向にシフトしていることを示唆している。今後の市場動向に応じたさらなる調整が行われる可能性もあり、次の四半期に向けた動きが注目される。

Source:Finbold