2025年1月21日、米司法省は大手薬局チェーンのウォルグリーンズ・ブーツ・アライアンス(WBA)を、正当な医療目的のないオピオイド処方箋を大量に調剤したとして提訴した。司法省は、同社が危険信号を無視し、数百万件の不法処方箋を作成し、オピオイド危機に寄与したと非難している。この訴訟を受け、ウォルグリーンズの株価は9.2%下落し、S&P 500構成銘柄の中で最大の下落率を記録した。
一方、同日にはオラクル(ORCL)が、OpenAIやソフトバンクと共同で米国のAIインフラ強化プロジェクト「スターゲート(Stargate)」に参加することを発表し、株価が7.2%上昇した。このプロジェクトは、今後4年間で最大5000億ドルの投資を予定しており、AI分野での米国のリーダーシップ強化と数十万の雇用創出が期待されている。これらの動きは、トランプ大統領の新政権発足直後の市場に大きな影響を与えた。
ウォルグリーンズ訴訟の背景と司法省の主張
![](https://us-stock.reinforz.co.jp/wp-content/uploads/2025/01/30517174_m-1024x768.jpg)
米司法省がウォルグリーンズ・ブーツ・アライアンス(WBA)を提訴した理由は、オピオイド危機に関与した疑いにある。司法省の訴えによれば、同社は不適切な処方箋の調剤を行い、医療機関や薬剤師による適正な審査を怠っていたとされる。特に、大量の処方が行われた店舗では、不審な処方箋の見直しがほぼ行われておらず、規制当局からの警告を無視し続けたと指摘されている。
訴状には、ウォルグリーンズが自社の薬剤師に対し、処方箋の迅速な処理を求めるプレッシャーをかけていた可能性が示されている。その結果、オピオイド系鎮痛剤が不適切に流通し、依存症や違法転売を助長したとされる。米国内では長年にわたり、オピオイドの乱用が深刻な社会問題となっており、医薬品業界に対する監視が強化される流れが続いている。
ウォルグリーンズはこれに対し、「司法省は法律や規制に明記されていない恣意的な基準を持ち出している」と反論し、適正な販売管理を行ってきたと主張している。同社は過去にも類似の問題で規制当局と和解に至った例があり、今後の裁判の行方が注目される。オピオイド訴訟は、ウォルグリーンズに限らず、業界全体に影響を与える可能性がある。
オラクルのAI事業参入と市場への影響
一方、市場ではオラクル(Oracle)の株価が大きく上昇した。同社が関与する「スターゲート(Stargate)」プロジェクトは、AIインフラ強化を目的とした5000億ドル規模の投資計画であり、米国の技術産業に大きな影響を及ぼすと期待されている。特に、ソフトバンク(SoftBank)やOpenAIといった有力企業が共同で参画する点が注目されている。
AI市場の拡大に伴い、大規模なデータセンターやクラウドインフラの需要が高まっており、オラクルはこれに対応するための戦略を加速させている。特に、エンタープライズ向けクラウドサービスの強化が重要視されており、今回のプロジェクトへの参加は、競争力を高める大きな一手と考えられる。
市場関係者の間では、オラクルの動きがクラウドコンピューティング市場全体に与える影響にも注目が集まっている。これまでマイクロソフト(Microsoft)やアマゾン(Amazon)が優位に立っていた分野で、オラクルがどこまでシェアを拡大できるかが今後の焦点となる。また、AI関連技術の発展が進む中、企業の競争力はデータ処理能力やインフラの整備に大きく依存するため、今回のプロジェクトが同社の長期的な成長にどのように寄与するかが鍵となる。
市場の変動と投資家の反応
ウォルグリーンズの株価が急落する一方で、オラクルや原子力関連株が上昇するなど、市場は大きく変動した。トランプ大統領の新政権発足直後ということもあり、投資家は政策の動向を慎重に見極めている。特に、新政権が関税政策を見直す可能性が浮上しており、これが市場に与える影響は今後の焦点となる。
S&P 500は全体的に上昇したものの、個別銘柄の動きは業種ごとに異なっていた。例えば、物流施設を手掛けるプロロジス(Prologis)は好決算を発表し、7.1%の株価上昇を記録した。輸入関連企業が貿易政策の変更を見越して倉庫スペースを確保する動きが、業績を押し上げた要因と考えられる。
一方、ファースト・ソーラー(First Solar)のような再生可能エネルギー関連株は下落した。新政権の政策が化石燃料産業に対して有利に働く可能性があるとの見方が広がり、投資家の間で不透明感が高まったためである。市場の流れは政治の動向に大きく左右されるが、今後の経済政策次第では、さらに新たなトレンドが生まれる可能性がある。
Source:Investopedia