テスラ(TSLA)は、1月29日(水)の米国市場終了後に2024年第4四半期の決算を発表する予定である。アナリスト予想では、収益が前年同期比8%増の約272億ドル、1株当たり利益(EPS)は同じく8%増の0.77ドルとされている。
しかし、同社は先に発表した納車台数が市場予想を下回り、年間納車台数が初めて前年を下回る結果となった。これを受け、投資家は2025年の納車目標や低価格モデルの生産計画、完全自動運転技術の進捗などに注目している。さらに、イーロン・マスクCEOがトランプ前大統領との関係を強化していることから、政権交代による規制緩和や政策変更がテスラにどのような影響を及ぼすかについても関心が高まっている。
一部のアナリストは、トランプ政権下での自動運転車に対する規制上の利点を期待しているが、他方でEV税額控除の削減や競争激化による販売への影響を懸念する声もある。テスラの株価は、決算発表を前に変動を見せており、投資家は同社の今後の戦略と市場動向を慎重に見極める必要がある。
テスラの納車台数減少が示す新たな課題

テスラは2024年の納車台数が前年比で減少したことを発表した。これは同社の歴史上初めての事態であり、投資家や市場関係者の間で懸念が広がっている。特に、第4四半期の納車台数は市場予想を下回り、成長鈍化の兆しを示した。この要因として、中国市場での競争激化、価格競争の激化、サプライチェーンの問題が挙げられている。
中国では、BYDをはじめとする現地メーカーが急成長し、テスラの市場シェアを脅かしている。特に低価格EVの普及が進み、テスラの「モデル3」や「モデルY」といった主力車種の販売に影響を及ぼしている。また、米国市場ではEV補助金制度の見直しや金利上昇が、消費者の購入意欲を低下させた要因となっている。これにより、テスラは価格引き下げや新たなプロモーションを実施したが、販売台数の伸び悩みを完全には解消できなかった。
テスラの納車台数の減少は、EV市場全体の変化を反映しているとも言える。これまで市場を牽引してきた同社は、今後どのように競争環境の変化に対応するのかが問われている。特に、低価格モデルの開発や、新たなバッテリー技術の導入が、成長を維持する上で重要な鍵となるだろう。アナリストは、2025年以降の販売回復には、新技術やコスト削減の進展が不可欠だと指摘している。
イーロン・マスクの政治的関係とテスラの未来
イーロン・マスクCEOの政治的動向がテスラの今後に影響を与える可能性が指摘されている。特に、米国の大統領選挙を控えた状況下で、マスク氏とドナルド・トランプ前大統領の関係が注目されている。アナリストの間では、トランプ氏が再選された場合、テスラにとって規制緩和や政策支援の恩恵を受ける可能性があるとの見方が広がっている。
現在のバイデン政権はEV普及を推進する政策を展開しているものの、労働組合への支持を強めており、テスラのような非労組企業には不利な条件が課されるケースもある。一方、トランプ氏は過去の政権時に自動車業界の規制緩和を推進した経緯があり、再選された場合、テスラにとってプラスに働く可能性があると指摘されている。例えば、自動運転技術の規制緩和や、新たな税制優遇措置が導入される可能性がある。
ただし、政治的な関係が企業の成長を左右するリスクもある。特定の政権との関係が強まることで、政権交代のたびに事業環境が大きく変動する可能性があるため、長期的な視点での経営戦略が求められる。加えて、政治的な発言がブランドイメージに与える影響も無視できない。特に、テスラの主要市場である欧州や中国では、政治的なスタンスが消費者の選択に影響を及ぼす可能性がある。マスク氏の発言や行動が、今後どのように市場に影響を与えるかが注目される。
株価の変動と投資家の判断材料
テスラの株価は、ここ数カ月で大きな変動を見せている。特に、2024年1月には、納車台数の減少発表を受けて一時的に下落したものの、その後のアナリスト予測や大統領選挙の影響を受け、再び上昇する動きを見せている。市場では、決算発表を前に投資家が慎重な姿勢を取っており、今後の成長見通しが株価の方向性を決定づける要因となる。
Visible Alphaによる調査では、証券会社のアナリストの評価は「買い」9、「ホールド」6、「売り」3となっており、市場の見解が分かれていることが分かる。また、平均目標株価は362ドルとされ、現在の株価よりも低い水準であることから、一部では過大評価との指摘もある。特に、決算発表後の見通し次第では、短期的な調整が入る可能性がある。
投資家にとって重要なのは、テスラの長期的な成長戦略である。AI技術を活用した自動運転の進展、バッテリーコストの削減、新モデルの投入が、今後の株価に大きく影響を与える。特に、2025年以降に予定されている低価格EVの投入が成功すれば、より広範な市場を獲得し、成長の新たな局面を迎える可能性がある。決算発表後のテスラの戦略次第で、株価の動向は大きく変わることになるだろう。
Source:Investopedia