トランプ大統領の再任初日、市場は大統領令や政策転換に敏感に反応した。関税発動が見送られたことで米国債利回りが低下し、ドルが下落。エネルギー政策の大幅な転換により石油関連株と再生可能エネルギー株が下落する一方、輸入品関税強化の動きが注視されている。

また、暗号資産市場ではSECが新たな規制枠組みの設立を表明し、混乱の中でビットコインが下げ幅を縮小。トランプ関連の銘柄やミームコインは値動きが激しく、金融市場全体に不安定な状況が続いた。

トランプ政権の貿易戦略が市場に与える影響

トランプ大統領の再就任初日、関税政策の発動が見送られたことで市場は一定の安堵感を示したが、貿易戦略に対する懸念は依然としてくすぶっている。モルガン・スタンレーのアナリストによると、初日に発令された大統領令の多くは貿易調査に関するものであり、即座に新たな関税を課す内容ではなかった。このため、米国債利回りは低下し、ドルが軟調に推移した。

しかし、今後の動向は不透明だ。トランプ氏は選挙期間中、中国をはじめとする貿易相手国に対してさらなる関税を課す可能性を示唆しており、「アメリカ第一主義」を掲げる姿勢を崩していない。すでに中国からの輸入品の約60%に関税が課されているが、残りの40%についても対象とする動きが出れば、米中関係の悪化は避けられず、企業のサプライチェーンに影響を及ぼすだろう。

さらに、カナダやメキシコからの輸入品に対しても25%の関税を課す可能性を示唆しているが、北米自由貿易協定(USMCA)の枠組みの中でどこまで実行に移せるかは不透明だ。一方で、関税措置が先送りされたことで短期的には市場の安定がもたらされたものの、トランプ政権の本格的な貿易政策が明らかになるにつれて、投資家の不安定要素が増すことは避けられない。

エネルギー政策の転換が及ぼす経済的波及効果

トランプ政権がクリーンエネルギー政策を撤回し、石油・ガスの生産拡大を推進する方針を示したことで、エネルギー市場は大きく揺れた。特に、米国史上初の「国家エネルギー緊急事態」の宣言は、化石燃料産業を優遇する強いシグナルと受け取られた。これにより、米国内の石油・ガス生産企業には追い風となる一方で、再生可能エネルギー産業は大きな打撃を受けた。

事実、S&P500エネルギーセクターは0.6%下落し、特にエクソンモービル(XOM)やシェブロン(CVX)といった大手石油企業の株価が下落。一方で、クリーンエネルギー関連株はさらに大きく売られ、ファースト・ソーラー(FSLR)は4.9%、エンフェーズ・エナジー(ENPH)は1.3%の下落を記録した。これは、バイデン政権下で進められてきた脱炭素政策が後退することに対する投資家の懸念を反映している。

また、米国のパリ協定離脱や洋上風力発電プロジェクトの中止が決定されたことも、再生可能エネルギー市場にとって大きな痛手となる。国際エネルギー機関(IEA)によれば、米国は世界第2位の温室効果ガス排出国であり、これまでの政策変更が国際市場に与える影響は計り知れない。今後、欧州やアジアの国々が再生可能エネルギーの普及をさらに加速させる可能性があり、米国がその波に取り残されるリスクも指摘されている。

暗号資産市場の混乱とSECの新たな規制枠組み

トランプ氏の再選は暗号資産市場にも大きな影響を与えている。就任初日、トランプ氏は暗号資産について直接的な発言を控えたが、SEC(米国証券取引委員会)の暫定委員長が暗号資産の規制枠組みを策定するタスクフォースの設立を発表したことで、市場は大きく動いた。

この発表を受け、ビットコインは急落後に持ち直し、10万6500ドル前後まで回復した。一方で、トランプ関連銘柄やミームコインは大きく売られた。トランプ・メディア&テクノロジー・グループ(DJT)の株価は就任前の1週間で16%上昇していたが、火曜日には11%下落。トランプ氏自身が発行したミームコインも75ドルから45ドルへと急落し、投機的な資産の脆弱性が改めて浮き彫りになった。

暗号資産市場はこれまでも米国の規制動向に左右されてきたが、トランプ政権下での新たな規制策がどのように展開されるかが注目されている。特に、SECが暗号資産の法的枠組みを強化する方針を示したことで、業界関係者の間では、ビットコインETFの今後の動向や、規制の厳格化が取引所やDeFi(分散型金融)市場に与える影響が議論されている。

今後の焦点は、トランプ政権が暗号資産市場をどのように位置付けるかにある。バイデン政権では暗号資産に対する監視を強化する方針が打ち出されていたが、トランプ氏の経済政策の中でデジタル資産がどのように扱われるかは未だ不透明だ。市場は、SECの動きに加え、財務省やFRBの政策発表にも敏感に反応するだろう。

Source:Investopedia