デジタル化の進行とサイバー攻撃の増加に伴い、サイバーセキュリティ分野への投資が活発化している。ガートナーの予測によれば、世界のサイバーセキュリティ支出は2028年までに2,920億ドルに達する見通しだ。
このような状況下、パロアルトネットワークス(NASDAQ: PANW)とクラウドストライク(NASDAQ: CRWD)は、先進的なセキュリティソリューションの提供を通じて市場での地位を強固にしており、長期的な成長が期待される。両社の最新の業績や市場動向を踏まえると、投資ポートフォリオに加える価値があると考えられる。
サイバーセキュリティ市場の成長を支える要因とリスク
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サイバーセキュリティ市場は急成長を続けており、ガートナーの予測によれば2028年までに世界の支出は2,920億ドルに達するとされている。デジタル化の進行とクラウドサービスの普及が主な要因であり、多くの企業がITインフラの強化を迫られている。特に、ゼロトラストセキュリティの概念が広まり、境界型防御からエンドポイントを重視した新たな対策へとシフトしている。これにより、AIを活用した脅威検知やランサムウェア対策の需要が急増している。
一方で、サイバー攻撃の手法も進化しており、防御策の高度化が求められる。国際的なハッカー集団や国家支援型の攻撃が増え、政府機関や金融機関への標的型攻撃が相次いでいる。また、生成AIの普及によってフィッシング詐欺やディープフェイク技術が進化し、従来の対策だけでは防ぎきれないリスクが顕在化している。このような状況を背景に、パロアルトネットワークスやクラウドストライクのような企業は、高度なAI技術を活用し、より精密なセキュリティソリューションを提供することで成長を遂げている。
ただし、市場の成長が続く中で競争も激化しており、既存のセキュリティ企業だけでなく、新興企業も独自の技術を武器に市場参入を進めている。さらに、各国政府の規制強化やコンプライアンス対応が求められ、企業側にとっては新たな負担となる可能性もある。サイバーセキュリティの進化とともに、新たな課題にも直面することが予想されるが、継続的な技術革新が今後の成長を左右する重要な要素となる。
パロアルトネットワークスの成長戦略とその持続性
パロアルトネットワークスは、AIを活用した次世代セキュリティシステムの導入を加速し、クラウドセキュリティやゼロトラストネットワークの分野で市場シェアを拡大している。同社の「Prisma Cloud」や「Cortex XSOAR」などの製品群は、多くの企業に採用されており、AI主導の脅威検知技術は競争優位性の源泉となっている。最近では、量子セキュリティ対策のための「QRNG Open APIフレームワーク」を発表し、将来的なリスクにも対応できる体制を整えている。
財務面では、2025年度第1四半期の売上が前年同期比14%増の21億ドルに達し、特にサブスクリプションおよびサポート収益の伸びが顕著である。クラウドベースのセキュリティサービスは、高い収益性と安定した成長をもたらし、今後の業績にも貢献する見込みだ。また、英国内務省との1億ドル規模の契約など、政府機関との取引も拡大しており、グローバルな影響力を強めている。
しかしながら、同社の株価収益率(PER)は59倍と比較的高水準にあり、投資家の期待がすでに織り込まれている点には注意が必要だ。成長性が継続する限り高い評価を維持できるが、市場の変動や新規参入企業との競争激化によって影響を受ける可能性もある。企業の持続的な成長には、革新的な技術開発と新たな市場開拓が不可欠となるだろう。
クラウドストライクの強みと競争環境の変化
クラウドストライクは、AIを活用した「Falcon」プラットフォームを軸に、高度なランサムウェア対策やエンドポイント保護ソリューションを提供している。同社の技術力は業界でも高く評価され、SE Labsのテストにおいて検知、保護、精度のすべてで100%のスコアを達成し、3年連続でAAAアワードを獲得している。この実績が企業の信頼性を高め、エンタープライズ向けの契約増加につながっている。
業績面では、売上が前年同期比28%増の10億ドルとなり、年間経常収益(ARR)は40億ドルを超えた。特に注目すべきは、同社の顧客基盤の広がりであり、顧客の3分の2が5つ以上のソフトウェアモジュールを利用し、20%が8つ以上を採用している点である。このことは、製品のエコシステムが強固であり、企業のセキュリティ対策の中心的な役割を担っていることを示している。
ただし、サイバーセキュリティ市場では競争が激化しており、マイクロソフトやシスコといった大手企業もクラウド型セキュリティ市場に参入し、攻勢を強めている。また、AIを活用した新興企業が台頭する中で、クラウドストライクが優位性を維持するには、技術開発のスピードと差別化が鍵となる。現在の成長トレンドが続く限り、有望な企業であることに変わりはないが、競争環境の変化には注意を払う必要がある。
Source:Finbold