Nvidia(NASDAQ: NVDA)の株価が、新たな関税の影響を受けて急落する可能性が浮上している。特に、ドナルド・トランプ大統領がメキシコとカナダに対する25%の関税、さらに中国を含む「外国の敵対国」に対する10%の関税を発表したことが市場の懸念を高めた。

この政策により、Nvidiaの株価は1月31日に3.67%下落し、終値120.07ドルを記録。その後、2月3日の時間外取引ではさらに2.16%下落し117.48ドルとなった。1月23日の147.22ドルからの急落を考慮すると、現在の下落ペースが続けば、2月10日までに100ドルを下回る可能性も指摘されている。

半導体業界にとって関税は一時的な影響に留まらず、サプライチェーン全体に及ぶリスクとなり得る。特に、中国に依存するレアアース供給の問題は、Nvidiaの長期的な事業戦略に影響を与える可能性がある。今後の市場動向と企業の対応が注目される。

Nvidiaの下落要因—関税だけではない市場の変化

Nvidiaの株価は、新たな関税政策の影響で大きく下落しているが、それだけが要因ではない。AI技術の進化と競争の激化、半導体業界全体の調整局面など、複数の要素が絡み合っている。特に、中国の新AI技術「DeepSeek」の登場は、Nvidiaにとって新たな競争環境を生み出しつつある。

DeepSeekは、NvidiaのAI半導体市場に直接影響を与える可能性がある。中国はこれまで、NvidiaのGPUを大量に輸入し、AI開発を加速させてきた。しかし、新技術の登場により、中国国内でのAI開発がNvidiaに依存しない形で進む可能性があり、これが同社の長期的な売上減少につながる懸念がある。

また、米中対立が続く中、中国企業は独自のAIチップ開発を強化しており、Nvidiaの市場シェアを徐々に奪う可能性も指摘されている。特に、Huaweiなどの企業は、独自の半導体技術を開発し、政府の支援を受けながら市場拡大を進めている。こうした動きが、Nvidiaの競争環境をさらに厳しくしている。

一方、Nvidiaのデータセンター向けビジネスは依然として堅調だが、企業のIT投資が抑制される兆しも見えてきた。世界経済の減速により、クラウド企業やAI開発企業がコスト削減を進めており、今後の需要が不透明になっている。市場の成長鈍化が現実となれば、Nvidiaの収益にも影響が及ぶ可能性がある。

このように、Nvidiaの下落は単なる関税の影響にとどまらず、競争環境や市場全体の変化が複雑に絡み合っている。今後の株価動向を見極めるには、これらの要因を総合的に分析する必要がある。

関税の影響—半導体業界全体への波及と市場の懸念

関税はNvidiaにとどまらず、半導体業界全体に広がる影響をもたらしている。特に、米国が課す対中国関税は、サプライチェーンの混乱を引き起こし、業界のコスト構造に変化をもたらす可能性がある。

現在、半導体製造には台湾積体電路製造(TSMC)やサムスン電子が関与しており、米国の半導体メーカーはこれらの企業との関係を維持しながら生産を行っている。しかし、関税が追加されることで、原材料の調達コストが上昇し、最終製品の価格にも影響を与える可能性が高い。

特に、半導体製造にはレアアースが不可欠であり、中国がこれらの供給を制限することで、Nvidiaを含む企業の生産計画に影響を与える可能性がある。過去にも中国は米国との貿易摩擦の際にレアアースの輸出規制を強化した経緯があり、今回の関税政策がさらなる対抗措置を引き起こす可能性も指摘されている。

また、半導体業界はグローバルな需要と供給のバランスで成り立っているため、一国の政策変更が世界中の企業に影響を与える。米国内の生産強化が進めば、短期的には供給の安定が期待されるものの、長期的にはコスト増加や競争環境の変化を引き起こす可能性がある。

市場では、こうした関税の影響が短期的な株価下落にとどまらず、企業の戦略見直しを促す要因となる可能性も考えられている。Nvidiaをはじめとする半導体企業がどのように対応していくのかが、今後の業界の方向性を左右する重要なポイントとなる。

市場の見通し—Nvidiaの株価は今後どう動くのか

Nvidiaの株価が今後どのように推移するのかについて、市場ではさまざまな見方がある。短期的には関税の影響で株価が下落するリスクがあるが、長期的には成長分野における需要が支えとなる可能性もある。

特に、AI技術の進化とクラウドコンピューティングの拡大は、Nvidiaの成長を後押しする要因となる。AI開発には高性能なGPUが不可欠であり、企業のデジタルトランスフォーメーションが進む中、Nvidiaの技術が引き続き求められる可能性が高い。

一方で、株価のボラティリティが高まる中、短期的な下落局面では慎重な姿勢が求められる。現在の市場環境では、マクロ経済の動向や地政学リスクが大きな影響を及ぼしており、短期間での回復は不透明な状況にある。

Nvidiaの株価が100ドルを割り込むかどうかは、今後の市場動向次第である。もし、関税の影響が限定的であり、半導体需要が維持されるならば、一定の回復基調に入る可能性がある。しかし、米中対立が激化し、供給網に深刻な影響が出れば、さらなる下落の可能性も否定できない。

市場関係者は、Nvidiaの今後の業績とともに、政策の動向にも注目している。半導体業界全体の流れを見極めながら、Nvidiaの戦略がどのように変化していくかが、今後の株価のカギを握ることになりそうだ。

Source:Finbold