2024年10月23日、テスラは第3四半期決算で予想を上回る業績を発表し、株価は急騰した。その後、11月の大統領選でドナルド・トランプ氏が当選し、テスラ株はさらに上昇した。しかし、2025年2月12日時点で、テスラ株は過去最高値から32.39%下落し、年初来で19.67%の下落となっている。
トランプ大統領の就任日である1月20日を基準にすると、テスラ株は23.93%の下落だが、当選日である2024年11月5日からは29.02%の上昇を見せている。この間、イーロン・マスクCEOの政治的関与や競争激化など、投資家の懸念材料も浮上している。
テスラ株の急騰と下落の背景——マスクの影響力と市場の期待

テスラの株価は、2024年10月23日の第3四半期決算発表を機に急上昇した。この決算では、予想を上回る収益と利益が報告され、ウォール街の期待を一時的に上回った。その後、11月5日にドナルド・トランプが米大統領選で勝利すると、テスラ株はさらに上昇し、12月17日には過去最高値である479.86ドルに到達した。しかし、年が明けると流れは一変し、2025年2月12日時点で324.41ドルまで下落。これは、最高値から32.39%の下落幅にあたる。
この株価の変動には、イーロン・マスクCEOの影響力が大きい。マスクはこれまで数々の発言で市場を揺さぶってきたが、特にトランプとの関係強化が注目された。彼は2024年の大統領選に向けて共和党候補を支持する姿勢を見せ、トランプとの親交を深めたことで市場に安心感を与えた。一方で、彼の発言や行動はしばしば予測不可能であり、テスラ株のボラティリティを高める要因となっている。
加えて、テスラの事業そのものに対する市場の期待と懸念も株価変動に寄与している。完全自動運転(FSD)の開発や、AI・ロボティクス分野への進出などの成長ストーリーが評価される一方で、競争の激化や電気自動車(EV)市場の伸び悩みが不安視されている。特に、2025年1月29日に発表された決算では、EPSと売上が市場予想を下回る「ダブルミス」となり、投資家の信頼を揺るがした。このように、テスラの株価はマスクの影響力と市場の期待・失望が交錯する中で大きく変動している。
トランプ政権とテスラの関係——規制緩和と市場の反応
ドナルド・トランプの当選は、テスラにとって短期的にはプラス材料と受け止められた。トランプは規制緩和を推進する姿勢を示しており、特に自動車業界にとっては環境規制の緩和が期待される。バイデン政権下ではEV産業が推進される一方で、中国との競争やサプライチェーンの制約などが課題とされていた。トランプが再び政権を握れば、対中関税の強化が予想され、中国企業に対する圧力が強まる可能性がある。
テスラは中国市場での売上が大きな割合を占めており、仮に対中関係が悪化すれば、同社の販売戦略に影響を与える可能性がある。一方で、トランプ政権下では国内の製造業振興が図られることが予想され、テスラの米国内工場にとっては追い風となるかもしれない。このように、トランプの政策はテスラにとってプラスとマイナスの両面を持つ。
さらに、トランプとマスクの関係性も市場の関心を集めている。マスクは過去にトランプ政権の諮問委員を務めたことがあり、両者はビジネスの観点で共通点を持つ。しかし、マスクが進めるEV事業とトランプの化石燃料推進政策が必ずしも一致するわけではなく、今後の関係性がどのように変化するかが市場の焦点となる。トランプの政策がテスラに与える影響は単純ではなく、政治的な要因が同社の業績と市場評価を左右する可能性が高い。
テスラの成長戦略と今後のリスク——EV市場の競争激化と投資家の期待
テスラはEV市場のパイオニアとして成長を遂げてきたが、2025年以降は競争環境が一段と厳しくなると予想される。GMやフォードといった伝統的な自動車メーカーに加え、中国のBYDやNIOなどの新興企業が急速に台頭しており、価格競争が激化している。特に、中国市場ではEVの補助金政策が変動することで需要に影響を与える可能性があり、テスラの販売戦略にも影響を及ぼすだろう。
また、完全自動運転(FSD)技術の開発もテスラにとって重要なテーマとなる。マスクはFSDの進化を繰り返し強調しているが、技術的なハードルや規制の問題が依然として残っている。市場では、テスラがAIやロボティクス分野でリーダーシップを確立できるかどうかが注目されており、モルガン・スタンレーのアダム・ジョナスはこの分野での成長に期待を寄せている。
しかし、テスラがこれまでのような高い評価を維持できるかどうかは不透明である。GLJリサーチのゴードン・ジョンソンのように、テスラ株の下落を予測する専門家もおり、同社の成長ストーリーに対する市場の見方は分かれている。2025年は、テスラにとって競争環境の変化、技術革新の進展、政治的要因など、複数のリスクが交錯する年になるだろう。
Source:Finbold