Apple(NASDAQ: AAPL)が中国市場で苦戦している。著名投資家ジム・クレイマーは、中国での関税問題がAppleの業績に深刻な影響を与える可能性を指摘し、市場もこの懸念を反映している。実際、関税の発表後、Appleの株価は急落した。さらに、現地スマホ市場ではiPhoneの販売台数が減少し、中国メーカーに押される形でシェアを落としている。
2024年12月のiPhone販売は前年比18%減となり、中国市場での順位は5位に転落した。これには、価格の高さやAI戦略の不発といった要因が影響している可能性がある。また、Appleの「グレーターチャイナ」地域の売上は前年同期比で約23億ドル減少した。中国政府がApple製品に対してさらなる規制を強化すれば、同社の収益に大きな打撃を与えることは避けられない。
一方、AI分野ではNVIDIAが急成長を遂げている中、Appleの存在感は薄れつつある。投資家の関心も次のNVIDIAを探す方向へとシフトしており、Apple株の先行きには不透明感が漂う。クレイマーの警戒が示すように、中国市場の厳しい現実とAI競争の激化が、Appleにとって今後の試練となるだろう。
Appleの中国市場でのシェア低下 競争激化の背景とは
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Appleの中国市場におけるシェア低下は、単なる販売不振ではなく、複数の要因が絡み合っている。2024年12月のiPhone販売台数は前年同月比18%減となり、Appleの市場順位は中国メーカーの後塵を拝する5位まで落ち込んだ。これは、価格戦略のミスだけでなく、消費者の嗜好の変化や政府の規制、競合他社の躍進といった幅広い要素が影響している。
まず、Appleの価格戦略が中国市場で逆風を受けている。iPhone 16シリーズの価格は高騰し、多くの消費者にとって手の届きにくい製品となった。一方、中国メーカーはコストパフォーマンスに優れた端末を提供し、特にミドルレンジ市場でシェアを拡大している。加えて、中国では政府がApple製品の使用を制限する動きを見せており、一部の官公庁や企業ではiPhoneの使用を禁止する動きが報じられている。
さらに、ファーウェイをはじめとする中国企業の復活がAppleの苦境を加速させた。ファーウェイは独自の「HarmonyOS」を搭載した端末を投入し、米国の制裁を受けながらも中国国内でのシェアを急回復させた。Xiaomi、Oppo、Honorなども独自のAI技術を武器に、Appleの強みとされていた高性能スマホ市場で競争力を高めている。Appleは中国市場での競争環境が激変する中、新たな戦略を打ち出さなければさらなるシェア低下を免れないだろう。
関税問題がAppleに及ぼす影響 中国の報復措置の可能性
ジム・クレイマーが指摘したように、関税問題はAppleにとって無視できないリスクとなっている。米国は中国からの輸入品に関税を課す方針を維持しており、Apple製品もその影響を受ける可能性がある。すでに発表されたカナダやメキシコへの関税は延期されたが、中国への関税は据え置かれたままだ。この状況が長引けば、Appleの生産コストが上昇し、価格競争力がさらに低下することになる。
さらに、中国側の対応もAppleにとって不安要素となる。仮に貿易摩擦が激化すれば、中国政府がAppleに対してさらなる規制を課す可能性も指摘されている。例えば、政府機関や国有企業におけるApple製品の使用を全面的に禁止する、もしくはAppleに対する制裁措置を強化するなどのシナリオも考えられる。現時点ではApple製品の国内販売が禁止される可能性は低いと見られるが、長期的にはAppleの中国市場での立場がさらに厳しくなることは避けられない。
加えて、Appleのサプライチェーンは中国に大きく依存しており、関税や規制の影響はサプライヤーにも波及する。中国での組み立てがコスト増となれば、Appleは生産拠点の一部をインドやベトナムなどに移すことを加速させる可能性がある。ただし、これは短期的に解決できる問題ではなく、移行期間中にAppleの収益が圧迫されることは確実である。Appleがこの状況をどのように打開するのか、今後の動向が注目される。
AI競争で後れを取るApple NVIDIAとの差が広がる要因
Appleは近年、AI分野での競争力に陰りが見え始めている。一方で、NVIDIAはAI市場での優位性を確立し、過去10年間で250倍のリターンを記録するなど、投資家の注目を集めている。AppleもAI関連技術を開発しているが、スマートフォン市場においては中国メーカーのAI技術が急速に進化しており、競争力が低下しているとの見方が強まっている。
特に、iPhoneのAI機能は、中国市場では魅力的な差別化要因になっていないと指摘されている。HuaweiやXiaomiは、独自のAIプロセッサを搭載し、カメラ性能や音声アシスタント機能などでAppleを凌駕する技術を導入している。また、AIによるユーザー体験の向上に力を入れており、中国市場ではこうしたAI技術が重要な購買要因となっている。一方で、AppleのAI戦略は、他社と比べて後発感が否めない。
NVIDIAがAI分野で躍進する中、AppleはクラウドAIやエッジAIといった分野で十分な成長を示せていない。Appleは自社チップ「Mシリーズ」や「Aシリーズ」の強化を進めているものの、NVIDIAのようにAI関連の新技術を強く打ち出すことができていない。こうした状況を踏まえ、投資家の関心がAppleから他のAI銘柄へと移りつつあることは、Appleの株価にも影響を与える可能性がある。
AppleがこのAI競争の流れに対応し、新たな技術革新を打ち出せるかどうかが、今後の成長を左右する要素となるだろう。
Source:24/7 Wall St.