アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は、最新の四半期決算において、全体の売上高が前年同期比24%増の76億6,000万ドルとなり、市場予想を上回った。しかし、データセンター部門の売上高は38億6,000万ドルと、アナリスト予想の40億9,000万ドルを下回った。

この結果を受け、AMDの株価は時間外取引で一時10%近く下落した。AIチップ市場における競争が激化する中、AMDのデータセンター事業の成長鈍化が投資家の懸念材料となっている。特に、エヌビディア(NVIDIA)との競争が激しさを増しており、AMDのAI関連製品の市場シェア拡大には課題が残ると指摘されている。

データセンター事業の減速とAI市場での競争激化

AMDの第4四半期決算では、データセンター部門の売上高が38億6,000万ドルと、アナリスト予想を下回った。この背景には、AI関連事業の競争激化と、市場の成長スピードが影響している。特に、AI向けInstinct GPUの売上は堅調だったものの、エヌビディア(NVIDIA)のH100やB200が圧倒的な市場シェアを占める中、AMDのシェア拡大は予想よりも鈍化した。

また、クラウドサービスプロバイダー(CSP)によるデータセンター投資の抑制も影響を与えている。マイクロソフト(Microsoft)、アマゾン(AWS)、グーグル(Google)などの大手クラウド事業者は、短期間でのAIインフラ拡充を進める一方、コスト管理の厳格化により、新規GPUの採用に慎重な姿勢を見せている。この結果、AMDのデータセンター向けCPU「EPYC」シリーズの売上成長も抑えられた可能性がある。

市場全体では、AI需要の高まりが引き続き半導体業界を牽引すると予測されるが、AMDの成長スピードは競争環境とクラウド事業者の投資方針によって左右される。特に、2025年後半には新型AIチップ「MI350」の投入が予定されており、これがエヌビディアのB200と競争する形になる。ただし、現時点でのデータセンター市場におけるAMDの立場は、やや厳しい状況にある。

アナリストの評価は分かれるが、長期成長への期待は継続

決算発表後、複数のアナリストがAMDの目標株価を引き下げたが、その評価は一様ではない。シティ(Citi)はAI収益のガイダンスが不透明であることを理由に、目標株価を175ドルから110ドルに引き下げ「中立(Neutral)」評価とした。一方、UBSは190ドルから175ドルに引き下げつつも「買い(Buy)」を維持し、AMDのAI市場における成長余地に注目している。

特に、強気のアナリストは、AMDが今後のAI市場においてエヌビディアに対抗するポジションを確立できると見ている。AMDは、次世代GPU「MI350」の開発を進めており、2025年にはさらに進化した「MI400」も投入予定だ。これにより、データセンター市場における競争力が高まる可能性がある。

一方で、AMDのAIチップが市場でどの程度のシェアを獲得できるかは不透明だ。AI向けGPU市場では、エヌビディアが90%以上のシェアを持っており、その牙城を崩すのは容易ではない。また、クラウド事業者の投資抑制が続く中、AMDがどの程度の受注を確保できるかも重要なポイントとなる。短期的には株価の変動が続く可能性があるが、長期的には成長軌道を維持できるかが焦点となる。

AI市場での競争戦略—AMDはエヌビディアに対抗できるのか

AMDがエヌビディアに対抗するためには、単にハードウェアの性能を向上させるだけではなく、ソフトウェアやエコシステムの強化も求められる。現状では、エヌビディアのCUDAプラットフォームが業界標準となっており、開発者の移行を促すには、より柔軟で高性能な開発環境を提供する必要がある。

AMDは独自のROCmプラットフォームを推進しているが、エヌビディアのCUDAに比べるとソフトウェアの最適化やサポート面での課題が残る。このため、AI市場で本格的にシェアを拡大するには、ROCmのエコシステム強化や、主要なクラウド事業者との提携が不可欠となる。実際、AMDはすでにマイクロソフトやオラクルとの協業を進めており、今後の戦略次第ではエヌビディアとの差を縮めることができる可能性もある。

さらに、価格競争も重要な要素だ。エヌビディアのH100は非常に高価であるため、AMDが競争力のある価格設定を行えば、企業やクラウド事業者の採用が進む可能性がある。しかし、AI向けGPUの開発には多額の投資が必要であり、AMDが十分な規模で生産を行い、利益率を維持できるかが問われる。

今後の焦点は、AMDがどのようにエヌビディアとの差を縮め、データセンター市場での競争力を高めるかにある。2025年後半に予定されているMI350およびMI400の投入が、市場シェアの拡大につながるかが注目される。

Source:Finbold