Wedbush証券の著名アナリスト、ダン・アイブス氏が、テスラ(TSLA)の目標株価を550ドルと設定し、同社がAIと自動運転技術の進化によって時価総額2兆ドル規模に達する可能性を指摘した。

現在、テスラの株価は年初来で27%以上下落しているが、アイブス氏は低価格EVの投入と6月に予定される無人タクシーサービスの開始が新たな成長ドライバーになると分析。加えて、ロボティクス分野への進出が同社の競争力をさらに高めるとみている。

一方、イーロン・マスク氏が「政府効率化局(DOGE)」の役職に就いたことで経営への影響を懸念する声もあるが、アイブス氏はテスラの強固な経営陣とマスク氏のマルチタスク能力が安定要因になると強調。テスラのイノベーションが引き続き市場の注目を集める中、今後の株価動向が注視される。

テスラの成長戦略 AIと自動運転が牽引する新たな展開

テスラ(TSLA)はAIと自動運転技術を核とした成長戦略を推し進めている。ダン・アイブス氏は、これらの技術が同社の時価総額を2兆ドル規模へ押し上げる鍵になると指摘する。

特に注目されるのが、2024年6月に予定されている無人タクシーの導入だ。テスラはすでに自動運転技術「Full Self-Driving(FSD)」を開発・改良しており、この技術を活用した完全自動運転タクシーが実用化されれば、新たな収益源となる可能性がある。さらに、低価格EVの投入も成長の柱とされる。従来のプレミアムEV市場から、より幅広い消費者層を取り込む戦略であり、競争が激化するEV市場での優位性を確保する狙いがある。

こうした動きは、テスラの競争力を高める要素となるが、市場がそれをどう評価するかが焦点となる。特に、自動運転技術の実用化には法規制や社会的受容の問題も絡むため、短期的な市場の反応は慎重に見極める必要がある。

マスク氏の多方面での活動がテスラに与える影響

イーロン・マスク氏は、テスラCEOとしての役割に加え、スペースXやニューラリンクなど複数の企業を率いている。その上、最近は「政府効率化局(Department of Government Efficiency、DOGE)」の役職に就いたことが話題となっている。

この新たな役割がテスラの経営にどのような影響を与えるかが投資家の関心を集めている。市場では、マスク氏が政府業務に関与することで、テスラの経営に専念できなくなるのではないかとの懸念が広がっている。特に、2024年に入ってからテスラの株価が27%以上下落している点を考慮すると、一部の投資家がこの問題をリスクと捉えている可能性がある。

一方、ダン・アイブス氏は、この懸念を過度に捉えるべきではないと指摘する。テスラには強固な経営陣が存在し、マスク氏のマルチタスク能力も高いため、企業運営に支障をきたす可能性は低いとの見方だ。テスラの成長が続く限り、市場の不安は次第に和らいでいくかもしれない。

テスラの株価動向と2兆ドルへの道のり

現在のテスラの株価は292.98ドルで、時価総額は9,424億ドルに達している。過去52週間の株価推移を見ると、138.80ドルから488.54ドルの間で変動しており、そのボラティリティの高さが浮き彫りとなる。

ダン・アイブス氏が設定した目標株価550ドルは、ウォール街の中でも特に楽観的な予測の一つとされる。これを実現するためには、AIと自動運転技術のさらなる進化が求められる。特に、無人タクシーサービスの実用化や低価格EVの市場投入が成功すれば、テスラの収益基盤は大幅に拡大する可能性がある。

しかし、2兆ドル規模の時価総額に到達するためには、単なる自動車メーカーの枠を超え、テクノロジー企業としての評価を確立する必要がある。テスラはすでにロボティクス分野への進出を進めており、AI技術を車両以外の領域にも応用する方針を示している。こうした動きが市場に評価されれば、テスラは単なるEVメーカーではなく、次世代テクノロジー企業としてさらなる成長を遂げる可能性がある。

Source:Wall Street Pit