近年、AIによる投資戦略が注目される中、ChatGPTを活用した株式ポートフォリオのパフォーマンスが検証された。市場分析の精度向上により、AIが選定した銘柄がプロの投資家と競り合う事例も増えている。

米メディアFinboldは、ChatGPT-4oに2025年向けの株式ポートフォリオを選ばせ、その運用成績を調査した。選定は2024年12月下旬に実施され、新年を迎えた最初の数週間での値動きが分析対象となった。

本稿では、ChatGPTが選んだ7つの銘柄とS&P 500指数連動ETFの成績を確認し、AIによる投資判断が市場でどのような結果を生んだのかを詳しく掘り下げる。

AIによる株式選定の強みと限界

ChatGPT-4oが選んだポートフォリオは短期間で市場平均に近い成績を残したが、すべての銘柄がプラスとなったわけではない。特にエヌビディア(NVDA)が**-10.33%と大幅に下落し、テスラ(TSLA)も-4.17%と低迷した。一方で、ショッピファイ(SHOP)が+11.45%、イーライリリー(LLY)が+8.94%**と健闘した。この結果から、AIが選定したポートフォリオの中にも明暗が分かれることが明らかとなった。

AIの強みは、大量のデータをもとに統計的な傾向を分析し、合理的な銘柄選定を行える点にある。ChatGPTは財務指標、成長見通し、市場のセンチメントなどを総合的に考慮し、ポートフォリオを構築する。一方で、AIが予測しにくい要因として、政治的要因や地政学的リスク、企業の突発的なスキャンダル、規制変更などが挙げられる。

今回の結果を見る限り、AIの銘柄選定は市場の一般的な動きに追随する傾向があるが、一部の銘柄では市場の不確実性に翻弄される可能性も示された。エヌビディアの下落は、AIブームによる急激な株価上昇の反動や利益確定の動きが影響したと考えられる。テスラについては、電気自動車市場の成長鈍化や競争激化が影響を与えた可能性がある。

このように、AIの株式選定は有用な一方で、市場の変動を完全に予測することはできない。今後、ChatGPTの選定手法がどのように進化し、市場の変動に対応できるのかが注目される。

AIが選定した銘柄の特徴と市場の評価

ChatGPT-4oが2025年向けに選んだ7つの銘柄は、テクノロジー、ヘルスケア、消費財など多岐にわたる分野に分散されている。具体的には、エヌビディア(NVDA)やテスラ(TSLA)といった成長株に加え、コカ・コーラ(KO)やウォルグリーン(WBA)といったディフェンシブ銘柄も含まれていた。このような組み合わせは、短期的なボラティリティに対応しつつ、長期的な成長機会を確保する戦略といえる。

市場の評価を見ると、イーライリリー(LLY)の**+8.94%やショッピファイ(SHOP)の+11.45%といった上昇銘柄は、特定の業界動向や企業の強みが評価された結果と考えられる。イーライリリーは新薬開発とAIを活用した医薬品研究が市場の期待を集めており、ショッピファイはEC分野での成長が引き続き進んでいる。一方で、エヌビディアの-10.33%**という下落は、半導体市場の調整局面に入った可能性や、過熱したAIブームの一時的な反動と関連があるとみられる。

ChatGPTが選定した銘柄の特徴として、過去の成長実績に基づいた選択がなされている点が挙げられる。成長企業とディフェンシブ銘柄を組み合わせたことで、ポートフォリオ全体として市場と同程度のリターンを確保しつつ、大幅な下落を抑える効果があった。これにより、AIが単なる高成長銘柄の羅列ではなく、一定のバランスを考慮した投資選定を行っていることが示された。

AIが考慮しきれない市場要因とリスク

ChatGPTが選定したポートフォリオは全体として堅調な成績を収めたが、市場ではAIが考慮しきれない要因が依然として存在する。特に、経済政策や地政学リスク、突発的な企業スキャンダルといった外的要因は、AIの分析が及びにくい領域である。

例えば、エヌビディア(NVDA)の下落は、AI関連銘柄への利益確定売りや半導体市場の需給変化が影響した可能性がある。しかし、こうした短期的な市場の変動は、ChatGPTが過去データに基づく分析を行う限り、完全に予測することは難しい。テスラ(TSLA)の**-4.17%**も同様に、電気自動車市場の競争激化や、中国市場の動向が影響した可能性があり、こうしたマクロ経済的な変動をAIが完全に織り込むことは困難である。

また、ウォルグリーン(WBA)やコカ・コーラ(KO)といったディフェンシブ銘柄は、市場の変動に対して比較的安定しているものの、大きな成長が期待できるわけではない。KOの**+0.74%**という僅かな上昇は、景気の影響を受けにくい一方で、大きな価格変動が起こりにくい特性を反映している。

このように、AIの投資選定は一定の合理性を持ちながらも、市場の非合理的な動きや突発的な変化には対応しきれない可能性がある。今後、AIが市場動向をどの程度正確に読み取れるのか、特にマクロ経済的な要素や投資家心理をどのように考慮するかが重要な課題となるだろう。

AIによる投資戦略の今後の展望

今回のChatGPTポートフォリオの成績は、短期間ながら市場平均に匹敵する結果を示した。個別株でのリターンを追求しつつ、S&P 500指数連動ETFとほぼ同等のパフォーマンスを実現したことから、AIが今後の投資戦略に組み込まれる可能性は高いと考えられる。

AIを活用した投資戦略が進化する中で、今後の課題は「個別株の選定精度」と「市場の変動への適応力」にある。例えば、過去のデータを基にした選定だけでなく、リアルタイムの市場センチメントやマクロ経済指標を組み合わせた分析が求められる。これにより、短期的な市場の急変に対応し、ポートフォリオの調整を行うことが可能になる。

また、AIによる投資の活用範囲が広がることで、アルゴリズムの最適化や機械学習モデルの改良が進むと予想される。AIを活用したヘッジファンドや機関投資家による自動取引の影響が市場に与える変化も注視すべきポイントとなる。

今回のChatGPTポートフォリオは、AIが一定の投資戦略を提供できることを示す一方で、人間の判断を完全に置き換えるには課題が残ることも明らかにした。今後は、AIと人間の投資判断をどのように組み合わせるかが、成功の鍵を握ることになるだろう。

Source:Finbold