半導体大手Nvidiaは、生成AI市場の急成長を追い風に株価が急騰し、時価総額は3.6兆ドルに達した。投資家たちはNvidiaを「未来の象徴」として評価しているが、その影響は直接的に関連企業にも波及している。その中で注目されるのが、Nvidiaの主要パートナーであり、AIアクセラレータカード向けの高速メモリを提供するMicron Technologyである。
Micronは、AIハードウェア需要の高まりを背景に、新たな収益機会を掴もうとしている。同社の製品はNvidiaをはじめ多くの企業で採用されており、特定の顧客に依存しない事業戦略が特徴だ。さらに、株価収益率(PER)が割安な水準にあり、投資家にとっても魅力的な選択肢となっている。
AI市場の急拡大が予測される中、Micronが次なる市場リーダーとなる可能性が高まっている。投資先を選ぶ上でNvidiaの一極集中から視野を広げる必要性が浮き彫りになっている。
Nvidiaの独走が続くAI市場、Micronが狙う成長機会とは
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Nvidiaは生成AI市場で圧倒的な支配力を誇っている。同社のAIアクセラレータ「H200」は、データセンター向けの高性能チップとして多くの企業に採用されており、2024年には同社の株価が176%上昇し、時価総額は3.6兆ドルに達した。特に、米国の大手クラウドプロバイダーであるAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft AzureがNvidiaのGPUを採用しており、成長の原動力となっている。
一方で、Micron TechnologyはAI市場の成長を追い風に、自社の高帯域幅メモリ(HBM)のシェア拡大を狙っている。NvidiaのH200向けに提供されるHBM3Eは、従来製品と比較して30%の消費電力削減を実現し、高速なデータ処理を可能にする。Micronの競争相手であるSK HynixやSamsung ElectronicsもHBM市場での地位を強化しており、業界内での競争は激化している。
AI分野では、プロセッサの性能向上だけでなく、メモリの高速化が重要な鍵を握る。AIの大規模な計算処理には膨大なデータを瞬時に処理する能力が求められるため、HBMの需要は今後さらに高まる可能性がある。特に、Micronは米国を拠点とする唯一の主要メモリチップメーカーであり、地政学的リスクの観点からも強みを持つ。米国政府の補助金政策や中国との貿易摩擦が続く中、国内供給の重要性が増すことは明白であり、Micronの事業拡大には追い風となるだろう。
Nvidiaへの投資熱が高まる中、Micronの株価は依然割安
Nvidiaの株価は急騰を続けているが、その一方でMicronの株価は割安な水準にとどまっている。現在、Micronの株価収益率(PER)は過去の利益に対して4.2倍、来年の予想利益に対して9.8倍とされており、AI関連銘柄の中では比較的低評価といえる。これは、メモリ市場のサイクルの影響や、過去の業績の変動が投資家の不安要因となっているためである。
しかし、Micronの事業環境は着実に改善している。2024年の半導体市場ではメモリ価格が上昇基調にあり、特にAI用途の高性能メモリが高い需要を維持している。Nvidiaの成長を支える主要サプライヤーとして、Micronは安定した収益を確保しやすい立場にある。さらに、同社の顧客基盤はNvidiaに限定されず、AppleやGoogleなどのテクノロジー大手も含まれているため、リスク分散の観点からも有利である。
また、米国の半導体製造能力強化に向けた政策もMicronにとって追い風となる。政府は「CHIPS法」に基づき国内半導体メーカーへの支援を強化しており、Micronはその恩恵を受ける可能性が高い。これらの要因を考慮すると、現在のMicron株は市場の過小評価を受けている可能性があり、長期的な視点では魅力的な投資対象となり得る。
AI市場の覇権争い、Micronはどこまで戦えるのか
Nvidiaの成長は今後も続くと考えられるが、その成功がMicronにとっても新たなビジネス機会を生むことは間違いない。AIシステムの高度化が進む中で、データ処理の高速化を支えるメモリ技術は不可欠であり、Micronはその最前線に立つ企業の一つである。
一方で、競争環境は厳しさを増している。特に韓国のSamsungとSK Hynixは、Micronにとって最大の競争相手となる。SamsungはAI向けの次世代HBM4を開発中であり、SK HynixはHBM市場のシェア50%以上を占めるなど、市場を席巻している。これに対し、Micronは製造技術の向上と生産能力の拡大を進めることで、競争力を維持しようとしている。
また、AI市場の需要が短期間で急増する一方で、半導体市場のサイクルには波がある。特に、クラウド市場やデータセンター需要が一時的に鈍化すれば、メモリ価格にも影響を与える可能性がある。この点で、Micronは長期的な視点で市場の動向を見極めながら、技術開発と生産調整を柔軟に行う必要があるだろう。
現在、AI市場は急速な進化を遂げており、その恩恵を受ける企業はNvidiaだけではない。Micronのようなメモリチップメーカーも、AI革命の重要なプレーヤーであることを忘れてはならない。今後の市場の動向を注視しつつ、AIハードウェア分野における成長企業としてのMicronの可能性に注目すべきである。
Source:The Motley Fool