アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は、2024年第4四半期の決算発表後、当初は株価が上昇したものの、データセンター部門の売上が市場予想を下回ったことから下落に転じた。 特に、2025年のAI関連収益予測が引き下げられたことが、投資家の懸念を招いている。 ウェドブッシュ証券のマット・ブライソン氏は、AIおよびデータセンター市場において、AMDをNVIDIAの「最良の代替案」と評価している。 しかし、マイクロソフトやグーグル、アマゾンなどの大手クラウド事業者が自社向けに独自のプロセッサを開発していることが、AMDにとって競争上の課題となっている。 一方、ブロードコムなどが提供するカスタムASICは特定のワークロードに強みを持つが、ブライソン氏は、クラウドサービスのような変動するワークロードには、AMDの「プラグアンドプレイ」型ソリューションが優位性を持つと指摘している。

AMDのデータセンター戦略と市場の評価

AMDのデータセンター事業は、エヌビディアに続く有力プレイヤーとして期待されているが、最新の決算では市場予想を下回る結果となった。AI市場の拡大に伴い、クラウド事業者や企業が求める計算能力が急速に増しているが、AMDはその需要に十分応えられていないと市場は評価している。特に、第4四半期の決算発表後、株価は一時的に上昇したものの、データセンター部門の成長鈍化が失望を生み、下落に転じた。

この背景には、NVIDIAが市場をほぼ独占している現状がある。データセンター向けAIチップ「H100」などがクラウド事業者に圧倒的な支持を受けており、AMDのMI300シリーズがこの勢力を崩せるかが焦点となっている。特に、AMDはコストパフォーマンスの高さを強調しているが、ハードウェアとソフトウェアの統合が進むNVIDIAの牙城を崩すのは容易ではない。

しかし、AMDには強みもある。ウェドブッシュ証券のマット・ブライソン氏は、クラウド環境ではカスタムASICよりも柔軟な「プラグアンドプレイ」型のソリューションが有利になる場面が多いと指摘しており、AMDの製品はこの点で一定の競争力を持つ。データセンター向けGPU市場は今後も拡大が予想されており、AMDが適切な戦略を打ち出せば、市場でのシェアを拡大する可能性は十分ある。

ハイパースケーラーの独自チップ開発がもたらす影響

一方で、クラウド市場における競争環境は一段と厳しさを増している。マイクロソフト、グーグル、アマゾンといった大手クラウド事業者は、AI推論や機械学習のワークロード向けに独自のプロセッサを開発し、自社インフラに最適化する動きを加速させている。この流れは、AMDにとって機会であると同時に脅威でもある。

ハイパースケーラーが独自チップを開発する背景には、コスト削減と性能最適化がある。NVIDIAやAMDといった外部のGPUに依存すると、コストが上昇するだけでなく、供給制約のリスクも高まる。独自のプロセッサを開発すれば、自社のワークロードに最適化できるだけでなく、供給の安定性も確保できる。しかし、これには膨大な開発コストがかかるため、すべてのクラウド事業者が独自チップ開発に踏み切るわけではない。

AMDにとっての課題は、こうしたカスタムシリコンとどのように差別化を図るかにある。カスタムASICは特定の用途に最適化されているが、ワークロードが変動するクラウド環境では柔軟性に欠ける。その点、AMDのGPUはさまざまな用途に対応できる汎用性を持っており、特にパブリッククラウド向けには適していると考えられる。ハイパースケーラーとの競争をどう乗り切るかが、今後の成長を左右する要素となるだろう。

AI向け半導体市場の展望とAMDのポジション

AI市場の急成長に伴い、半導体業界全体での競争が激化している。現在、NVIDIAがAI向けGPU市場を支配しているが、AMDやインテルなどの競合企業も市場シェアを獲得するための戦略を模索している。特に、AMDはAI専用チップ「MI300X」を発表し、クラウド事業者やエンタープライズ市場での採用を目指している。

市場の見通しとしては、データセンター向けGPUの需要は引き続き高まると予想される。AIモデルの規模が拡大し、より高性能な計算資源が求められる中、AMDの競争力がどこまで通用するかが鍵となる。NVIDIAがCUDAエコシステムを強化し続ける中、AMDはオープンソースのソフトウェア環境を活用し、開発者の支持を獲得する必要がある。

また、AMDの強みは価格競争力とエネルギー効率にある。NVIDIAの製品は高性能だが高価格であり、エネルギー消費も大きい。そのため、コストを重視する企業にとっては、AMDの選択肢が魅力的に映る可能性がある。ただし、AIワークロードの最適化が進む中で、NVIDIAの優位性が続くかどうかは未知数である。AMDは、パフォーマンスとコストのバランスを強みに、AI半導体市場での存在感を高める必要があるだろう。

Source:Wall Street Pit