Appleは、自社開発チップへの移行を急ピッチで進めている。TF International Securitiesのアナリスト、ミンチー・クオ氏の分析によれば、2025年発売予定のiPhone 17では、BroadcomのWi-Fiチップを完全に廃止し、Apple独自のWi-Fiチップを搭載する計画だ。

この動きは、同社が既にQualcomm製モデムチップからの移行を進めていることと軌を一にする。最新のiPhone 16eには、Appleが独自に開発した「C1」モデムチップが搭載され、Qualcommに依存しない戦略が鮮明になった。クオ氏によれば、AppleはBroadcomのWi-Fiチップも同様に排除し、全モデルに自社開発品を導入する方針だ。

Appleの自社開発戦略が加速する背景とBroadcom排除の狙い

AppleがBroadcom製Wi-Fiチップを排除し、自社開発へと舵を切った背景には、コスト削減と技術の最適化という二つの大きな狙いがある。Appleは過去数年間にわたり、独自チップの開発を強化しており、AシリーズチップやMシリーズチップの導入で自社製プロセッサへの移行を推し進めてきた。今回のWi-Fiチップの自社開発も、その延長線上にあると考えられる。

クオ氏の分析によれば、AppleはWi-Fiチップを含む通信関連の技術を内製化することで、デバイス間のシームレスな接続性を向上させる意図があるという。例えば、iPhone、iPad、Mac間でのデータ共有や通信の最適化が進めば、エコシステム全体の一貫性が強化される。また、通信技術の主導権を握ることで、将来的な規格変更や市場の変動に対して柔軟に対応できる体制を整えることにもつながる。

一方で、Broadcomにとっては大きな痛手となる可能性がある。BroadcomはWi-Fiチップの大手サプライヤーであり、Appleはその主要顧客の一つだった。Appleの撤退により、Broadcomの収益構造にも影響が及ぶことが予想される。ただし、完全な排除ではなく、他の分野では引き続き協業が続く可能性もある。Appleは独自開発を進める一方で、特定の分野では外部の技術を活用する戦略を取ることで、リスクを分散しながら競争力を維持しようとしているようだ。

Qualcommに続くBroadcomの撤退が示すAppleの供給網再編

Appleはここ数年で大手サプライヤーの依存度を下げる動きを加速させている。その代表例がQualcommとの関係だ。Appleは長年にわたりQualcommのモデムチップを採用してきたが、今回発表されたiPhone 16eでは、Apple独自のC1モデムが搭載された。この動きにより、Appleは通信技術の自社開発へと大きく踏み出したことになる。

そして、同様の流れがBroadcomにも及んでいる。AppleはiPhone 17でBroadcom製Wi-Fiチップを廃止する計画を進めており、これにより、主要な半導体サプライヤーが次々とAppleのサプライチェーンから外れることになる。これは単なるコスト削減策ではなく、Appleが供給網全体を再編し、より統制の取れた体制を築こうとしていることを示唆している。

ただし、Appleがすべてのサプライヤーとの関係を断つわけではない。特許やライセンス契約の関係上、完全な独立は現時点では困難とみられる。例えば、Qualcommはモデムチップの供給は縮小するものの、Appleとのライセンス契約を通じて引き続き収益を確保している。Broadcomについても、Wi-Fiチップ以外の分野で協業が続く可能性があり、今後の両社の関係がどのように変化するかが注目される。

Appleの供給網再編は、サプライヤーの収益構造に大きな影響を与えるだけでなく、半導体業界全体の競争環境にも波及する可能性がある。Appleの動向を見極めることは、業界全体のトレンドを把握する上でも重要になりそうだ。

Appleの内製化戦略がもたらす市場への影響

AppleがWi-Fiチップの自社開発を進めることで、半導体市場の勢力図にも変化が生じる可能性がある。これまで通信技術分野ではQualcommやBroadcomといった大手サプライヤーが主導権を握ってきたが、Appleの独自技術が進化すれば、これらの企業の影響力が相対的に低下することも考えられる。

特に、Appleの影響力が強いスマートフォン市場では、他のメーカーも独自技術の開発を強化する動きが加速するかもしれない。SamsungやGoogleなど、すでに独自チップの開発を進めている企業にとっては、Appleの取り組みがさらなる競争の刺激となる可能性がある。一方で、通信技術の標準化が求められる分野では、Appleの独自仕様が他社との互換性の課題を生むリスクもある。

また、Appleの独自チップ戦略は、エコシステムの強化にもつながる。自社開発のWi-Fiチップやモデムチップを導入することで、ハードウェアとソフトウェアの統合がさらに進み、Apple製品のユーザー体験がより最適化されることが期待される。これにより、Appleのブランド価値がさらに高まり、市場での競争力を一段と強化することになりそうだ。

Appleの自社開発戦略は、単なるコスト削減の枠を超え、技術革新と市場競争における主導権を握るための重要な布石となっている。今後の動向次第では、半導体業界全体の構造変化を促す可能性もあり、引き続き注視が必要だ。

Source:GuruFocus