ベンチマーク指数であるS&P 500は、最近の貿易摩擦による弱気な市場心理を払拭しつつあり、テクニカル指標は大規模な上昇の兆候を示している。特に、同指数は50日移動平均線付近での調整を経て、強気のシグナルを発している。
過去のパターンから、15%以上の上昇が見込まれ、6,600ポイントへの到達が予測される。一方で、一部の専門家は急激な上昇の後に市場の大幅な調整が起こる可能性を指摘しており、慎重な姿勢も必要である。
S&P 500の強気相場を支えるテクニカル指標と過去のパターン

S&P 500は、50日移動平均線(MA)を基準とした価格推移を続けており、過去のパターンを踏襲する形で上昇の兆しを見せている。特に、同指数がこの移動平均線を下回る局面を経た後、反発して強気相場を形成する傾向があることは、市場の注目点となっている。
過去3回、S&P 500は50日MAをサポートとして利用し、その後少なくとも15%の上昇を遂げた。このパターンが今回も繰り返される場合、同指数はさらなる高値を目指す可能性がある。加えて、相対力指数(RSI)などのモメンタム指標も、現在の市場環境が過去の強気転換時と類似した状況にあることを示唆している。
しかし、過去のパターンが必ずしも現在の相場に適用できるとは限らない。市場環境やマクロ経済要因が異なるため、今回の強気転換が確実に成功する保証はない。特に、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策や、企業決算の内容が予想を下回る場合、S&P 500は再び調整局面に入る可能性も考えられる。
S&P 500の6,600ポイント予測とウォール街の見解
TradingShotの分析によると、S&P 500は6,600ポイントを目指す可能性があるとされている。この見通しは、過去の価格推移と現在の市場動向をもとにしたものであり、一部のウォール街の金融機関も強気な予測を示している。
例えば、ウェルズ・ファーゴはS&P 500が7,000ポイントに達すると見込んでおり、HSBCは年内に6,700ポイントに到達すると予測している。さらに、オッペンハイマーのチーフ投資ストラテジストであるジョン・ストルツフス氏は、2025年末までに7,100ポイントへ上昇する可能性を指摘している。これらの予測は、企業業績の改善やインフレ鈍化が続くことを前提としている。
一方で、現在の市場環境には慎重な見方も存在する。特に、エコノミストのヘンリック・ゼバーグ氏は、短期的な強気相場の後に大規模な暴落が発生するリスクを警告している。この見解は、過去の金融危機や市場バブル崩壊のパターンと重なる部分があり、過信は禁物である。
金融政策と市場心理がS&P 500の動向を左右する
S&P 500の上昇シナリオが現実化するかどうかは、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策と市場心理に大きく左右される。特に、インフレ率の動向と利下げ期待が市場のセンチメントに影響を与えている。
市場は、FRBが今後の消費者物価指数(CPI)データを受けて、早期の利下げを決定するかどうかを注視している。もしインフレ率が予想以上に低下し、FRBが利下げに踏み切る場合、S&P 500の上昇基調が一段と強まる可能性がある。一方で、インフレが根強く、利下げが見送られる場合、市場は失望売りを誘発し、S&P 500は再び調整局面に入ることも考えられる。
また、地政学リスクや企業業績の変動も市場の方向性を左右する。新たな貿易摩擦や金融システムへの不安が高まれば、リスクオフの流れが強まり、S&P 500の上昇トレンドが崩れる可能性もある。市場関係者にとっては、短期的なテクニカル指標だけでなく、マクロ環境の変化にも注意を払う必要がある。
Source:Finbold