メタ・プラットフォームズは積極的なAI戦略により株価の上昇を続け、16日連続の値上がりを記録している。特にAIを活用した収益化の可能性が注目され、1株あたり100ドルの上昇余地があるとの見方も浮上している。一方、テスラはEV市場の厳しさに直面しており、株価は下落傾向が続いているが、自律運転やロボティクス分野での成長期待は依然として根強い。
ウォール街では、AI関連投資が今後の市場を大きく左右すると考えられており、AmazonやMicrosoftなどのテック大手が総額3,200億ドルをAIインフラに投資する計画を発表している。しかし、中国企業の台頭による価格競争や、大規模投資の費用対効果を疑問視する声もある。メタやテスラの株価動向は、こうしたAI戦略の成否を占う試金石となる可能性がある。
メタのAI投資が生み出す新たな収益機会と市場の期待

メタ・プラットフォームズは、AIを活用した広告とプラットフォームの最適化により、新たな収益源を構築しつつある。特に、AI技術を活用してユーザーのエンゲージメントを高める施策が進められており、広告のターゲティング精度向上や、メタバース内でのAI主導の商取引などが焦点となっている。
Wedbush証券のアナリスト、ダン・アイブス氏は、こうしたAI技術の導入がメタの収益成長に大きく貢献すると指摘する。同氏によれば、35億人のデイリーアクティブユーザー(DAU)の存在が、AIを駆使した収益化の大きなチャンスを提供する可能性があるという。また、広告主にとっても、AIによる精緻なデータ解析はROI(投資利益率)の向上をもたらす要因となり得る。
市場では、メタが2025年にAI関連技術に600億ドル以上を投資する計画を発表したことを受け、AI戦略のさらなる進化に期待が集まっている。特に、ジェヴォンズの逆説(Jevons Paradox)を背景に、AIインフラのコスト低下がむしろ投資を加速させる要因となるとの見方もある。ただし、こうした積極投資が短期的に収益へ直結するかについては慎重な意見も見られる。
テスラの成長戦略はEV市場を超え、ロボティクスとAIがカギに
一方で、テスラはEV市場の逆風に直面しており、株価は短期間で約17%下落した。しかし、アイブス氏は、テスラの将来性をロボティクスと自律運転技術の発展に見出している。イーロン・マスク氏が以前から掲げる「AIとロボティクスを軸としたテクノロジーカンパニー」への進化が、その根拠となっている。
テスラの自律運転技術は、自動車業界全体の競争環境を変える可能性がある。現在、フルセルフドライビング(FSD)の開発が進められており、ソフトウェアのアップデートによって安全性と実用性の向上が期待されている。さらに、AIを活用した最適なエネルギー管理システムの開発にも注力しており、電力消費の効率化が進めば、EVの普及に弾みがつく可能性がある。
また、テスラが進めるロボティクス分野の開発も見逃せない。ヒューマノイドロボット「オプティマス」の商業化が進めば、自動化市場に革命をもたらす可能性がある。ただし、現時点では技術的課題が多く、短期的な収益源としては期待が難しいとの見方もある。EV市場が不透明感を増す中、テスラの未来が自動車を超えた領域に広がるのかが、今後の注目ポイントとなる。
AI市場の競争激化と中国企業の台頭が与える影響
AI市場は、米国の大手テック企業が主導する形で急成長を続けているが、中国企業の台頭が競争環境を一変させる可能性がある。特に、中国のAI企業「DeepSeek」が発表した低価格かつ高性能なAIモデルは、業界の構造を揺るがす存在として注目されている。
米国のAmazon、Microsoft、Meta、Alphabetが2025年に合計3,200億ドルをAIインフラに投じる計画を発表している一方で、中国勢は異なるアプローチを採用している。DeepSeekのような企業は、より低コストで高性能なAIシステムを提供することで、コスト競争力を強みに市場に食い込もうとしている。これにより、米国企業の大規模投資の費用対効果が厳しく問われる可能性が出てきた。
市場関係者の間では、AI技術が広く普及すればするほど、コスト競争が激化するとの懸念が広がっている。特に、クラウドインフラのコスト低下がAIモデルの価格競争を招き、従来のハードウェア中心の投資戦略に影響を及ぼす可能性が指摘されている。米中間の技術競争が今後どのように展開されるのか、AI市場の成長を見極めるうえで重要な視点となりそうだ。
Source:Benzinga