ゴールドマン・サックスは、中国の人工知能(AI)技術の急速な進展が同国の株式市場に大きな影響を与えると分析し、主要株価指数の目標値を引き上げた。特に、中国のAIスタートアップであるDeepSeekが開発した「DeepSeek-R1」モデルの登場が、投資家の注目を集めている。
このモデルは、限られたリソースで高性能を実現し、オープンソースとして公開されている点が特徴である。ゴールドマン・サックスは、AIの普及が今後10年間で中国の1株当たり利益(EPS)を年間2.5%押し上げ、市場の適正価値を15~20%向上させる可能性があると予測している。
しかし、持続的な株価上昇には、マクロ経済の課題に対処するための強力な政策支援が必要であるとも指摘している。投資家にとって、AI関連分野、特にデータ&クラウドやソフトウェア&アプリケーション分野への注目が重要となるだろう。
DeepSeek-R1が示す中国AI技術の進化と競争力

中国のAI技術は急速に進化しており、特にDeepSeekが開発した「DeepSeek-R1」は、その象徴的な存在となっている。このモデルは、大規模な計算資源を必要とせずに高精度な推論を実現し、さらにオープンソースとして提供されている点が注目される。米国のAI企業が大規模なデータセンターと膨大なGPUを活用する一方で、中国のAI企業はリソース制約の中で独自のアプローチを模索し、その成果が形になりつつある。
この技術の進化は、中国のテクノロジー株に追い風をもたらしている。ハンセン・テック指数が1か月で27%上昇し、MSCI中国指数が19%上昇したのは、AI関連企業への期待の高まりが背景にある。特に、半導体、データ処理、クラウドサービスを提供する企業が注目されており、グローバル市場での競争力向上が期待される。
ただし、中国のAI産業には依然として課題がある。ハードウェア面では、米国の半導体輸出規制が影響を与えており、先端プロセッサの供給に制約がかかっている。こうした制限の中で、中国企業は自国の半導体開発を強化し、独立したAIエコシステムを構築する必要がある。DeepSeek-R1のような国産モデルの成功は、こうした動きが具体化しつつあることを示唆しており、中国のAI市場が今後どのように成長するのか注目される。
ゴールドマン・サックスの市場予測と政策の影響
ゴールドマン・サックスは、中国株式市場の上昇を予測し、MSCI中国指数の目標を85、ハンセン指数の目標を4,700と設定した。これは、AI技術の普及が企業収益を押し上げ、市場のバリュエーションを向上させるとの見立てに基づく。同社の分析によれば、AIは今後10年間で中国の企業の1株当たり利益(EPS)を年間2.5%成長させる可能性がある。これにより、中国市場には2,000億ドル超の資金流入が見込まれる。
しかし、ゴールドマン・サックスの中国株式担当ストラテジストであるキングル・ラウ氏は、持続的な市場成長には強力な政策支援が不可欠だと指摘する。現在の中国経済は、不動産市場の低迷や消費の伸び悩みなどの課題を抱えており、政府の景気刺激策が鍵を握る。特に、AI分野においては、政府による補助金や規制緩和が投資を後押しし、成長の加速につながる可能性がある。
一方で、政策の方向性次第では、市場の楽観論に水を差す展開もあり得る。過去には、中国政府がハイテク企業への規制を強化し、株価が急落した例もある。今後の市場動向を見極める上では、AI技術の進展だけでなく、政府の政策判断にも注目する必要がある。
AI関連銘柄の今後と投資家への示唆
AI技術が急速に発展する中で、どの分野の企業が恩恵を受けるのかが焦点となる。ゴールドマン・サックスは、AI市場を6つのカテゴリーに分類し、特に「データ&クラウド」と「ソフトウェア&アプリケーション」分野の成長が加速すると分析している。AIの計算能力が向上し、大規模なデータ処理が可能になることで、これらの分野に属する企業の収益基盤が強化されると考えられる。
また、中国のハードウェア企業にも注目が集まる。半導体開発を手掛ける企業は、米国の規制の影響を受けつつも、独自の技術開発を進めることで競争力を高めている。特に、データセンター向けのAIチップや、高性能コンピューティング向けの半導体技術の進展が市場に影響を与える可能性がある。
市場の関心は、AIの開発から実用化フェーズへと移行している。AIを活用した新たなユースケースが増えるにつれて、企業の収益モデルが変化し、それが株価に反映される展開が想定される。AI分野の成長が加速する中で、今後どの企業が市場を牽引するのか、引き続き注目する必要がある。
Source:Investing.com