アップル(NASDAQ: AAPL)の2025年度第1四半期決算が市場予想を上回ったことで、アナリストの評価が二分されている。1株当たり利益(EPS)は2.40ドル、売上高は1243億ドルといずれも予想を上回り、株価は決算発表後に上昇。しかし、iPhone販売の減少や中国市場での苦戦が懸念材料として浮上した。

ウォール街のアナリストは、この決算をどう評価したのか。Keybancは弱気の姿勢を崩さず、目標株価を200ドルに据え置いた。一方、CitiはアップルのAI技術や新製品発表をポジティブに捉え、目標株価を275ドルに引き上げた。

今後のアップル株の動向は、成長戦略や市場環境の変化に大きく左右されることになりそうだ。

アップルの決算が市場に与えた影響 株価動向とアナリストの視点

アップルの2025年度第1四半期決算は市場予想を上回ったが、株価の動きは必ずしも一方向ではなかった。決算発表翌日には237.59ドルだった株価が4.25%上昇し247.70ドルに達したものの、依然として1月の高値からは下落した状態が続いている。この変動の背景には、アップルの業績だけでなく、広範な市場環境や投資家のセンチメントが影響している。

まず、米国株式市場全体の動向が重要な要素となっている。2024年末から始まった米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策の転換が、ハイテク株全体に影響を与えており、アップルもその影響を受けている。市場では利下げの期待が高まっているものの、インフレ指標が依然として不安定であるため、不確実性が残る状況にある。

また、アップルの事業戦略にも注目が集まる。特に、ハードウェア部門の成長鈍化とサービス部門の拡大が、今後の株価にどのような影響を与えるかが重要となる。今回の決算では、サービス部門の収益が堅調であることが評価されたが、主力製品であるiPhoneの販売減少が懸念材料となった。アナリストの見解も分かれており、一部はこの傾向を短期的な調整と捉え、他方では長期的な成長性への警戒感を強めている。

こうした状況から、今後のアップル株の動向は、マクロ経済の影響や同社の戦略によって大きく左右されることが予想される。特に、次の四半期の業績が市場の期待を上回るかどうかが、投資家のセンチメントを決定づける要因となるだろう。

中国市場での苦戦とアップルの戦略転換の必要性

アップルの決算において、中国市場の売上が前年同期比で11%減少したことは大きな課題として浮上している。中国は同社にとって最大級の市場の一つであり、この減少が今後の業績に与える影響は無視できない。競争環境の激化や消費者の購買動向の変化が、この売上減少の背景にあると考えられる。

特に、現地メーカーの台頭がアップルにとっての脅威となっている。華為技術(Huawei)は、最新のMateシリーズで大きな注目を集めており、中国政府の支援を受ける形で市場シェアを拡大している。加えて、XiaomiやOppoなどのブランドも、価格競争力と性能を武器に市場での地位を強化している。これにより、アップルは価格面での優位性を失い、高価格帯市場の維持に苦戦している。

さらに、中国国内の経済状況も影響を及ぼしている。消費者の支出が慎重になり、高額なスマートフォンの買い替えサイクルが長期化しているとの指摘がある。アップルのiPhoneはプレミアムブランドとしての地位を確立しているが、消費者が価格に敏感になれば、その影響は避けられない。

こうした状況に対し、アップルはどのような戦略をとるのかが注目される。現時点では、中国市場向けの特別な施策は発表されていないが、価格戦略の見直しや、現地パートナーとの連携強化が鍵を握る可能性がある。また、AI技術の導入や新たな製品カテゴリーの拡充によって、競争力を維持することも求められるだろう。

アップルが今後中国市場でどのように立ち回るかによって、同社の成長軌道は大きく変わる可能性がある。特に、次世代iPhoneの発表や新技術の導入が、売上回復の契機となるかが注目される。

アップルのAI戦略と成長のカギを握る新技術の展開

Citiのアティフ・マリク氏が指摘したように、アップルのAI戦略は今後の成長のカギを握る要素となる。現在、同社はAI分野での競争力を高めるために、独自技術の開発を進めている。最近発表された「DeepSeek」技術は、その一環として注目されており、デバイス上でのAI活用を加速させる可能性がある。

アップルはこれまで、クラウドベースのAIよりもデバイス上での処理に重点を置いてきた。このアプローチは、プライバシー保護の観点からも重要視されており、ユーザーのデータを外部に送信せずに処理することで、競合との差別化を図っている。今後、iOSのアップデートや新しいハードウェアの発表とともに、この技術の実用化が進められるとみられる。

また、3月に予定されている「iPhone SE4」の発表と、4月に予定されている「Apple Intelligence」ソフトウェアのアップデートも、AI戦略の一環として位置づけられている。これらの新製品・新機能が、ユーザー体験をどれだけ向上させるかが、アップルの市場競争力に直結する可能性がある。特に、エッジAI(端末内でのAI処理)の技術革新は、バッテリー消費の最適化やレスポンス向上といったメリットをもたらすと考えられる。

しかし、競争環境は依然として厳しい。GoogleやMicrosoft、OpenAIといった企業はすでにクラウドベースのAIで先行しており、アップルが独自のアプローチでどこまで差別化できるかが問われる。特に、AI活用の分野がハードウェア中心からクラウド連携へと移行する中、アップルの戦略がどのように進化するかが市場の関心を集めている。

アップルのAI戦略が成功すれば、同社の成長基盤は一段と強固なものとなるだろう。今後の新製品や技術発表が、市場の期待を超えるかどうかが、株価の動向にも影響を与えそうだ。

Source:Finbold