マイケル・バーリが最新の株式ポートフォリオを更新し、防御的な投資戦略への転換を示した。特に、中国テクノロジー株の削減と、ヘルスケア・保険関連銘柄の比率増加が際立つ動きとなっている。

バーリの投資会社「Scion Asset Management」は2024年第4四半期の報告書で、13銘柄を保有し、ポートフォリオ評価額は7,740万ドルに達すると明らかにした。中でもアリババ(NYSE: BABA)とバイドゥ(NASDAQ: BIDU)がそれぞれ16.43%、13.61%を占めるが、中国株の持ち分全体は縮小。特に京東商城(JD.com)の比率を40%、アリババを25%削減するなど、慎重な姿勢を強めた。

バーリは一方で、エスティローダー(NYSE: EL)を100,000株購入し、ポートフォリオの9.68%を占めるまでに増やした。さらに、PDD Holdings(NASDAQ: PDD)を新規取得し、ヘルスケア分野ではHCA Healthcare(NYSE: HCA)やAmerican Coastal Insurance(NASDAQ: ACIC)への投資を強化。これは市場の変動に備えた防御的シフトと見ることができる。

彼の市場分析は過去にも的中しており、2008年の金融危機を事前に察知し巨額の利益を上げた実績を持つ。今回のポートフォリオ変更も、今後の市場環境の変化を示唆するものとなる可能性がある。

防御的投資戦略への転換 ヘルスケア・保険分野に資金をシフト

マイケル・バーリの最新ポートフォリオでは、ヘルスケアおよび保険関連銘柄への投資比率の増加が目立つ。彼はHCA Healthcare(NYSE: HCA)に4.5百万ドルを投じたほか、American Coastal Insurance(NASDAQ: ACIC)の持ち株比率を46.1%増やすなど、ディフェンシブな銘柄へのシフトを強めている。

HCA Healthcareは全米で病院チェーンを展開し、医療サービスの需要増加に伴い安定した収益を確保する企業である。一方、American Coastal Insuranceは、災害リスクの高い地域を中心に展開する保険会社であり、気候変動の影響が高まる中でリスクヘッジの手段として機能する可能性がある。

この動きは、市場のボラティリティ上昇を見越した防御策とも取れる。近年、経済成長の減速懸念やインフレ動向が市場の不安定要因となる中、バーリは景気変動に左右されにくいヘルスケア・保険セクターを重視していると考えられる。今後も彼の投資判断は、世界経済の先行きを占う上で注目を集めるだろう。

中国株への慎重な姿勢 テクノロジー企業の成長戦略は転換期に

バーリはこれまで強気だった中国テクノロジー株に対し、ポジションを縮小する決断を下した。京東商城(NASDAQ: JD)の保有比率を40%削減し、アリババ(NYSE: BABA)も25%減らすなど、大幅な調整を行った。

アリババの株価は年初来で46.83%上昇しており、人工知能(AI)事業の強化が市場の期待を押し上げた。1月にはAIモデル「Qwen 2.5」の新バージョンを発表し、競争力を高めている。しかし、バーリはこの上昇局面においても一部の保有を売却し、慎重な立場を取っている。

その背景には、中国政府のテクノロジー企業に対する規制リスクや、米中関係の影響がある可能性がある。中国市場は依然として成長余地があるものの、規制環境の変化が企業の収益構造に及ぼす影響は無視できない。バーリの売却は、テクノロジー株の成長が新たな段階に入ったことを示唆しているといえる。

分散投資の強化 エスティローダーとPDD Holdingsの新規取得

バーリは今回のポートフォリオ変更で、エスティローダー(NYSE: EL)とPDD Holdings(NASDAQ: PDD)に新規投資を行った。特にエスティローダーは、100,000株を取得しポートフォリオの9.68%を占めるまでに至った。取得時の平均購入価格は74.98ドルであり、現在の株価水準と比較すると割安な局面での買いと考えられる。

エスティローダーは世界的な化粧品ブランドであり、消費財市場における安定した需要を背景に長期的な成長が期待される。一方、PDD Holdingsは中国のEコマース企業であり、低価格戦略と強力な物流網で急成長している企業だ。特にPinduoduo(拼多多)を中心としたビジネスモデルは、コスト意識の高い消費者層に支持されており、成長余地が大きい。

バーリの新規取得は、成長ポテンシャルを持つ企業への積極的な投資戦略の一環といえる。ディフェンシブ銘柄とともに、消費関連株を組み入れることで、リスクを分散しつつリターンを狙う構造になっている点が特徴的である。

Source:Finbold