テスラ(NASDAQ:TSLA)が注目を集める中、第4四半期決算発表を控え、投資家には慎重な判断が求められる。オッペンハイマーのアナリスト、コリン・ルッシュは、同社が物理的AI技術におけるリーダーシップを強調しつつ、2025年の車両販売成長予測を控えめに設定する可能性を示唆している。これは、新型車モデル2の準備と自動運転技術への注力を背景としたものだ。

一方で、中国製バッテリーの関税や市場需要の低迷といった外部要因に加え、イーロン・マスク氏とドナルド・トランプ前大統領との関係が、株価に影響を及ぼすリスク要因として注目されている。ウォール街の評価ではテスラ株は「ホールド(中立)」との意見が多く、成長期待とリスクが交錯する複雑な状況であることが浮き彫りになっている。

テスラの業績見通しは下方修正—需要鈍化と競争環境の変化

オッペンハイマーのコリン・ルッシュは、テスラの2024年および2025年の業績見通しを下方修正した。その背景には、米国と欧州におけるEV需要の鈍化がある。2024年の販売台数は従来の181万台から179万台へ、売上高は1,003億ドルから995億ドルへと引き下げられた。さらに、2025年の販売台数予測も220万台から195万台へと大幅に減少している。

この業績見通しの修正は、テスラが直面する市場環境の変化を反映している。EV業界は、補助金削減や消費者の購買行動の変化により、成長速度が鈍化している。特に欧州市場では、EVの普及が進んだことで、初期の成長期とは異なる競争環境が生まれている。新興EVメーカーや既存の自動車メーカーが市場に参入し、価格競争が激化していることも、テスラにとって課題となっている。

ただし、テスラは引き続き自動運転技術の開発を進め、エネルギー事業の拡大を図っている。モデル2の投入や定置型蓄電池事業の成長が今後の収益を支える可能性があるが、短期的には市場の不透明感が株価の上値を抑える要因となり得る。オッペンハイマーの最新の分析では、テスラ株の格付けは「ホールド(中立)」を維持しており、市場の慎重な姿勢がうかがえる。

ウォール街のテスラ株評価—過去の強気姿勢から慎重論へ

ウォール街のテスラ株に対する評価は、ここ数カ月で変化している。これまでの成長期待から、より慎重な見方へと移行しつつある。現在のアナリスト評価では、「買い」が13件、「ホールド(中立)」が12件、「売り」が9件となっており、強気一辺倒だった過去とは異なる状況となっている。

この変化の背景には、EV市場の競争激化とテスラの成長鈍化がある。かつては技術革新と生産能力の拡大により、市場の楽観的な期待を集めていたが、現在は利益率の低下や新規参入企業の台頭が影響を与えている。特に、中国市場ではBYDなどの競合が低価格EVで攻勢をかけており、テスラの市場シェアが脅かされている。

ただし、ウォール街の評価は完全に悲観的というわけではない。モデル2の投入が成功すれば、低価格帯のEV市場でのシェア拡大が期待される。また、自動運転技術の進化やエネルギー事業の成長が、新たな収益源として注目されている。しかし、短期的には株価の変動要因が多く、投資家は慎重にテスラの動向を見極める必要がある。

テスラ株の今後の焦点—決算発表と長期戦略の行方

テスラの次の決算発表は、市場にとって重要な節目となる。1月29日に予定されている第4四半期決算では、売上高や利益率の推移だけでなく、2025年以降の成長戦略がどのように示されるかが注目される。特に、モデル2の生産スケジュールや、中国製バッテリー関税の影響に関する言及が市場の関心を集めるだろう。

また、政治的リスクも引き続き焦点となる。イーロン・マスク氏とドナルド・トランプ前大統領の関係が、今後の規制環境や政策に影響を与える可能性がある。特に、トランプ氏が政権に復帰した場合、EV産業に対する政策がどのように変化するかは、不確定要素として残る。

テスラは短期的な市場環境の変化に適応しつつ、長期的な技術革新と事業拡大に取り組んでいる。投資家にとっては、決算発表を受けた市場の反応と、長期的な成長戦略の行方を慎重に見極めることが求められる。

Source:TipRanks Financial