ウォーレン・バフェットが率いるバークシャー・ハサウェイは、2024年第4四半期にポートフォリオの大幅な見直しを行った。同社は、バンク・オブ・アメリカ(BAC)の株式を約1億1750万株売却し、保有比率を8.9%に引き下げた一方、アップル(AAPL)の持ち分には変更がなかった。
また、S&P 500に連動するETFであるSPDR S&P 500 ETFトラスト(SPY)とバンガード S&P 500 ETF(VOO)の全保有株を売却した。さらに、コンステレーション・ブランズ(STZ)への新規投資を行い、シリウスXM(SIRI)やオキシデンタル・ペトロリウム(OXY)などの既存銘柄の持ち分を追加した。
一方で、ウルタ・ビューティー(ULTA)やキャピタル・ワン(COF)、シティグループ(C)などの株式を売却し、ポートフォリオの再構築を進めている。これらの動きは、バークシャー・ハサウェイが市場環境の変化に対応し、投資戦略を柔軟に調整していることを示している。
バークシャー・ハサウェイの現金戦略と慎重な投資姿勢

バークシャー・ハサウェイは、2024年第4四半期時点で約3200億ドルの現金を保有している。これは同社の歴史上、最高水準の現金保有額であり、バフェットの慎重な投資戦略が続いていることを示唆する。同社は大型買収をほとんど実行せず、代わりに小規模な追加投資やポートフォリオのリバランスを進めた。これは市場環境の変動が大きい中、過度なリスクを取らない方針の表れと考えられる。
特に、バンク・オブ・アメリカやシティグループなどの金融関連株を削減した点は注目に値する。近年の米国金融業界は、金利政策の変更や経済の先行き不透明感により変動が大きくなっており、バークシャーはこの影響を見極めながら慎重にポジションを調整している可能性がある。一方で、エネルギーや食品・飲料関連の株式への投資は継続しており、景気変動に左右されにくい事業への注力がうかがえる。
このように、バークシャーは巨額の現金を保持しながらも、慎重に市場の変化を見極めている。現在の投資方針が続く限り、同社が次にどのような大型投資を行うのかは市場の大きな関心事であり、今後の動向が注目される。
コンステレーション・ブランズへの新規投資と消費財セクターの動向
今回の四半期で特筆すべき点の一つが、コンステレーション・ブランズへの新規投資である。コンステレーション・ブランズは、モデルビールやコロナビールの販売で知られる企業であり、アルコール飲料市場において強いブランド力を持つ。同社は米国市場での成長を続けており、特にプレミアムビールやクラフトビールの人気が追い風となっている。バークシャーは、この消費財セクターの安定した需要に魅力を感じ、ポートフォリオに組み入れたと考えられる。
コンステレーション・ブランズは、北米市場におけるアルコール消費の変化に対応し、非ビール製品にも積極的に投資を進めている。テキーラやワインなどの成長市場に力を入れており、近年の消費者の嗜好変化にも適応している。さらに、同社はリカー市場のデジタル化を推進し、オンライン販売の拡大を図っている点も成長を後押ししている。
一方で、アルコール飲料業界は規制や健康志向の高まりといった課題を抱えており、競争も激化している。そのため、コンステレーション・ブランズが今後も安定した成長を維持できるかは注視が必要である。バークシャーの投資判断は、同社の持続的な成長可能性に対する一定の信頼を示しているが、市場環境次第ではポートフォリオの調整が行われる可能性もある。
アップル株の据え置きとハイテク投資の今後
2024年第4四半期において、バークシャー・ハサウェイはアップルの持ち株を維持した。アップルは依然として同社の最大の投資先であり、ポートフォリオ全体の約28%を占める重要な資産である。直近の四半期ではアップルの株式を売却せず、長期保有のスタンスを崩していないことが確認された。
アップルは、iPhoneやMacの販売に加え、サービス部門の成長により収益基盤を多様化している。特にサブスクリプションサービスやクラウド関連事業が拡大しており、安定したキャッシュフローを生み出している点が投資の魅力とされている。一方で、半導体の供給問題や中国市場での競争激化といった課題も抱えており、成長ペースの鈍化が懸念される部分もある。
ハイテク株全般に対する市場の評価は、金利政策の影響を強く受けるため、今後のFRBの動向がアップル株の評価にも大きく影響するとみられる。バークシャーが今後もアップル株を維持するか、あるいは一部を売却するかは、世界経済の動向やテクノロジー業界の成長性に大きく左右されるだろう。
Source:Investopedia