エヌビディア(NASDAQ: NVDA)の株価が急落する中、CNBCの著名アナリスト、ジム・クレイマーは依然として同社に強気の立場を崩していない。彼は、エヌビディア株が依然として割安であり、成長余地が十分にあると指摘する2人のアナリストの意見を支持した。

この背景には、中国の新しいAIモデル「DeepSeek」がある。わずか600万ドルの開発費で構築されたこのモデルは、OpenAIの同等製品と比較して大幅に低コストであり、大きな注目を集めている。市場では、AI開発の低コスト化が進めば、エヌビディアの高性能チップの需要が減少するとの見方が強まった。この懸念から、同社の株価はわずか3日間で15%下落した。

しかし、シティグループやカントール・フィッツジェラルドのアナリストは、エヌビディアの高性能チップの需要は引き続き堅調だと主張している。シティは、DeepSeek自体がエヌビディアのチップを利用していることを指摘し、依存度は依然として高いと分析。カントールは、AI市場の拡大がかえってエヌビディアの成長を後押しすると強気の見解を示した。

クレイマーもまた、DeepSeekが市場に影響を与える可能性を認めつつ、「実際に試してみたが、それほど知的とは感じなかった」とコメント。彼の支持するアナリストの予測が正しければ、現在の株価下落は一時的なものに過ぎない可能性がある。

DeepSeekの低コストAIが市場に与える影響 – エヌビディアの支配力は揺らぐのか

中国発のAIモデル「DeepSeek」が、わずか600万ドルで開発された事実はAI業界に衝撃を与えた。OpenAIのモデル開発にかかるコストが2億5000万ドルとされる中、この大幅なコスト差はエヌビディアの高性能チップの需要構造を変える可能性がある。

AIモデルの訓練や推論処理には高度なGPUが不可欠とされてきたが、DeepSeekは低コストでの開発を可能にする新たな技術やアプローチを採用しているとみられる。もしこの流れが加速すれば、高価なエヌビディアのGPUへの依存が薄れ、代替チップや新興メーカーへのシフトが進む可能性もある。

一方、DeepSeekの性能は依然として未知数であり、エヌビディアの最先端チップが不要になるとは断定できない。AI市場では、高精度な処理が求められる領域ほど、高性能なチップの需要は根強く残る。特に企業向けのAIサービスやデータセンターの分野では、エヌビディアの圧倒的な計算能力が引き続き優位性を持つと考えられる。

エヌビディアのAI市場でのポジション – シティとカントールの見解が示す未来

エヌビディアの未来に対しては、市場の懸念とは対照的にシティグループとカントール・フィッツジェラルドが強気の姿勢を崩していない。シティは、DeepSeek自体がエヌビディアのチップを使用している事実を重視し、たとえ低コストAIが普及したとしても、同社のチップ市場は維持されるとの見解を示している。

また、カントールは、AI市場の拡大そのものがエヌビディアにとって追い風になると分析する。AIアプリケーションの増加は、結果的に処理能力の高いチップの需要を増やす要因となる。仮に低価格のAIが市場に参入しても、高度な計算能力を求める企業やクラウドサービスがエヌビディアのチップを選択する流れは変わらない可能性がある。

ただし、エヌビディアの成長がこれまでのような急角度で続くかは不透明だ。競争環境の変化が激しく、低価格のAIが市場を席巻すれば、エヌビディアの高価格帯チップの需要が影響を受けるリスクも否定できない。今後は、競合チップメーカーの動向や、DeepSeekのさらなる技術的進化が市場の焦点となる。

AI競争の激化とエヌビディアの戦略 – ジム・クレイマーの評価の裏にあるもの

ジム・クレイマーがエヌビディアの強気派アナリストを支持する理由の一つは、AI市場の拡大がエヌビディアの成長を支えるとの見方があるためだ。彼は、DeepSeekの技術を実際に試した上で、「知的とは感じなかった」と述べつつも、市場に与える影響力は無視できないと指摘した。

市場では、エヌビディアのチップに代わる選択肢が出現することを警戒する声がある。特にMicrosoftやMetaのような大手テクノロジー企業が、エヌビディア以外の半導体メーカーのチップを活用し始める兆候が見られれば、同社の優位性は揺らぐ可能性がある。実際、一部では大手企業がエヌビディアのチップを過剰に購入していた可能性が指摘されており、これが売り圧力の一因となった。

しかし、クレイマーは、この売りが過剰反応である可能性を示唆している。AI市場の拡大は長期的に続くと考えられ、エヌビディアがクラウドプロバイダーやデータセンター向けの製品戦略を強化することで、引き続き市場をリードできるとの見方もある。エヌビディアの株価下落は一時的な調整にすぎず、長期的には成長余地が十分にあるかもしれない。

Source:247wallst.com