これまでの人工知能(AI)ブームでは、NvidiaやPalantirといった企業が投資家の注目を集めてきた。しかし、すでに株価が高騰し、過熱感が指摘される中、新たな投資機会を求める声が高まっている。
こうした中、**Atlassian(NASDAQ: TEAM)とVistra(NYSE: VST)**は、AI分野における成長ポテンシャルを持ちながらも、まだ過小評価されている企業として注目されている。Atlassianは、ソフトウェア開発ツールの分野でAI技術を活用する余地が大きく、直近の決算でも堅調な業績を示した。一方、Vistraはエネルギーセクターに属し、AIインフラの電力需要増加の恩恵を受ける可能性がある。
これらの企業は、既存のAI関連銘柄に代わる新たな成長株として浮上するのか。今後の動向に注目が集まる。
AtlassianのAI戦略と市場での位置付け

Atlassianは、ソフトウェア開発やチームコラボレーションの分野で確固たる地位を築いてきた。同社の代表的なプロダクトであるJiraやConfluenceは、世界中の企業に広く採用されており、そのプラットフォームの影響力は計り知れない。しかし、これまでの成長は主にプロジェクト管理やソフトウェア開発支援に焦点を当てていたため、AIブームの中心的存在としてはあまり認識されていなかった。
近年、AtlassianはAIの統合に積極的に取り組んでいる。その一例がAtlassian Intelligenceであり、生成AIを活用した自動化機能やナレッジ管理の強化が進められている。AIによる業務の効率化、タスクの自動割り当て、データ分析が可能になり、JiraやConfluenceの付加価値を大幅に向上させることが期待される。また、AIを活用した顧客サポートの強化も進んでおり、競争の激しいB2B SaaS市場において優位性を確保しようとしている。
同社のAI戦略が市場でどのように評価されるかは、成長の鍵となる。直近の四半期売上が12億9,000万ドルに達し、前年同期比で成長していることからも、Atlassianのビジネスモデルは安定しているといえる。加えて、時価総額が846億1,000万ドルと、AIブームに乗る他のテクノロジー企業と比較しても割安感があるため、今後AI分野での影響力が増すことで市場評価が大きく変わる可能性もある。
Atlassianの成長余地は依然として大きいが、同社が本格的にAI市場で存在感を示すためには、他のAI関連企業と差別化できる強力な戦略が求められる。JiraやConfluenceのような業務向けツールがAI技術と融合することで、企業の生産性向上にどれほど貢献できるかが、今後の株価動向を左右する要因となるだろう。
VistraがAIインフラの中心企業となる可能性
Vistraは、エネルギー供給を担う企業として、AI市場の発展に不可欠な存在となりつつある。データセンターやAIの計算処理には膨大な電力が必要となるため、電力供給企業の役割がこれまで以上に注目されている。特に、近年のAIブームにより、エネルギー需要が急拡大しており、その恩恵を受ける企業の一つがVistraである。
直近の決算では、四半期売上が62億9,000万ドルに達し、堅実な成長を維持している。加えて、時価総額は571億ドルと、同業他社と比較しても評価はまだ控えめである。株価は年初来で21.59%上昇し、167.64ドルで取引されているが、AIインフラ企業としての地位が明確になれば、さらに上昇の可能性も考えられる。
Vistraが注目される背景には、AI技術の進化による電力需要の増大がある。データセンターの電力消費量は年々増加しており、大手テクノロジー企業は再生可能エネルギーや原子力を活用した持続可能な電力供給を求めている。この点で、Vistraは既存の火力発電に加え、再生可能エネルギーや蓄電技術の開発を進めることで、長期的にAI市場と密接な関係を築く可能性がある。
また、エネルギー政策の影響も無視できない。トランプ前大統領が掲げる政策は、持続可能性よりもエネルギー供給の安定に重点を置いており、これがVistraのような大手電力企業に追い風となる可能性がある。今後、政策の変化や市場環境の変動により、Vistraの評価はさらに見直される可能性が高い。
AI関連銘柄の中でAtlassianとVistraが持つ独自の強み
NvidiaやPalantirのようなAI銘柄は、すでに市場で高く評価されており、その株価も急騰している。しかし、AI市場は広範に及び、ソフトウェアやインフラの分野においても成長が期待される企業が存在する。その代表例がAtlassianとVistraである。
Atlassianは、JiraやConfluenceといったソフトウェアを通じて、企業の業務効率化を支援するAI技術の統合を進めている。これは、直接的なAI技術の開発ではなく、既存のB2B SaaS市場の拡張という形でAIを活用している点が特徴的である。これにより、AIブームが過熱する中でも、安定した成長が期待できる。
一方、Vistraは、AI市場を支えるインフラとしての役割を担う企業であり、特に電力供給という視点からAIブームの恩恵を受ける立場にある。AIモデルの高度化が進むにつれ、データセンターの電力需要は増加し続けるため、長期的に安定した収益を見込める点が強みとなる。
これらの企業は、AI関連銘柄の中でも異なる成長ドライバーを持っており、特定の市場環境に依存しすぎない点が強みである。AI市場は今後も拡大を続けると考えられるが、すでに評価が高まっている企業ではなく、これから成長の余地がある企業を見極めることが重要だ。AtlassianとVistraは、そうした観点からも注目に値する銘柄といえるだろう。
Source:Finbold