半導体大手Nvidia(NASDAQ: NVDA)の株価が、ドナルド・トランプ前大統領による関税の影響を受け、120ドルを下回り弱気相場に突入した。1月31日の取引終了時点で、同社の株価は120.07ドルとなり、3%以上の下落を記録。
さらに、DeepSeekの低コストAIモデル発表により、高価なチップの需要減少への懸念が広がり、Nvidiaの市場支配力に影響を及ぼす可能性が指摘されている。一方、FinboldのAI予測ツールでは、2月3日から3月10日の期間にNVDA株が強気に転じ、平均146.67ドル(+25.58%)に達すると予測している。
ウォール街のアナリストも依然として強気の見解を維持しており、Tigress CapitalのIvan Feinseth氏は目標株価を200ドルに引き上げている。しかし、貿易関税の新たな懸念を受け、今後の見解の修正が注目される。
Nvidiaの市場支配力は揺らぐのか—競争環境の変化とAI分野の行方
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NvidiaはこれまでAI市場で圧倒的なシェアを誇ってきたが、競争環境の変化が加速している。特に、中国発のDeepSeekが発表した低コストAIモデルは、Nvidiaの高価なGPUを必要としない可能性があり、業界の勢力図を変えるかもしれない。この影響を受け、1月27日にはNvidiaの時価総額が6000億ドル減少し、市場の不安を浮き彫りにした。
AI業界では、処理能力の向上だけでなく、コスト削減が企業の競争力を左右する要素となっている。DeepSeekの技術がNvidiaのGPU市場を直接脅かすかどうかは不透明だが、低コストでAIの学習・推論が可能になると、多くの企業が代替技術への移行を検討する可能性がある。これにより、Nvidiaの優位性が今後どのように変化するかが注目される。
Nvidiaはこれに対抗する形で、新世代の「Blackwell」シリーズを準備しており、AI向けの高度なソリューションを提供する意向を示している。しかし、競争環境が激化する中で、単なる技術革新だけでなく、価格戦略や市場支配力を維持するための新たなアプローチが求められる。Nvidiaがこの変化にどのように対応するのかが、今後の業績や株価に大きく影響するだろう。
米国の関税政策がNvidiaに与える影響—半導体業界全体への波及
Nvidiaの株価下落の背景には、米国の新たな関税政策も大きな影響を与えている。特に、中国、カナダ、メキシコからの輸入品に対する追加関税が発表され、半導体を含むハイテク産業全体に不確実性が広がった。Nvidiaはサプライチェーンの多くを海外に依存しており、関税の影響を直接受ける可能性が高い。
関税が引き上げられると、製造コストの上昇が避けられない。半導体業界では、製造プロセスに必要な原材料や設備の多くが国際的な供給網に依存しており、これがコスト増につながる。さらに、関税によるコスト増加が最終的に製品価格へ転嫁されれば、Nvidiaの競争力にも影響を及ぼす可能性がある。
こうした状況の中、Nvidiaは製造拠点の多様化や、サプライチェーンのリスクヘッジを強化する必要に迫られている。一部の企業は、関税の影響を回避するために生産拠点を米国内に移す動きを見せているが、Nvidiaにとっても同様の対応が求められる可能性がある。長期的には、半導体業界全体がこの貿易政策の変化にどのように適応するかが重要な焦点となるだろう。
ウォール街の見解と今後の株価の行方—強気と慎重派の分岐点
Nvidiaの株価をめぐるウォール街の見解は分かれている。Tigress CapitalのIvan Feinseth氏は、Nvidiaの技術革新と市場の成長を評価し、目標株価を200ドルに引き上げた。一方、Morgan StanleyのJoseph Moore氏は、DeepSeekの競争力を考慮し、目標株価を152ドルに引き下げた。このように、AI市場の成長を楽観視する見解と、新たな競争リスクを考慮する慎重な見方が共存している。
また、FinboldのAI予測ツールでは、2月3日から3月10日にかけてNvidiaの株価が146.67ドルに回復すると予測されている。市場がDeepSeekの影響を一時的なものと捉え、Nvidiaの成長ストーリーを引き続き支持する場合、株価の回復は十分にあり得るシナリオだ。しかし、関税の影響や競争環境の変化が続けば、回復には時間を要する可能性もある。
短期的な株価の動きは不透明だが、長期的にはNvidiaの戦略がカギを握る。次世代GPUの市場投入、関税リスクへの対応、そしてAI市場での競争優位性の維持が、投資家の信頼を左右する要素となる。Nvidiaがこれらの課題にどのように対処するのかが、今後の株価の方向性を決定づけることになるだろう。
Source:Finbold