ダン・ナイルズ氏は、Nvidia(NVDA)の好調な決算を予想する一方で、「AI投資の消化フェーズ」が年央までに訪れる可能性を指摘している。特に、マイクロソフト(Microsoft)の設備投資(CapEx)成長率が50~60%から十数%に鈍化することは、AIインフラ市場の需給バランスに変化が生じる兆候とみられる。

マイクロソフトのCEOが2027~2028年にはデータセンターの過剰容量をリースに回せると示唆したことも、将来的な設備投資の鈍化を示す要因と考えられる。さらに、オラクル(Oracle)のCapEx倍増計画に関しても、実際の四半期ごとの支出は減少しているとナイルズ氏は指摘。こうした動きがNvidiaの成長にどのような影響を与えるかが注目されている。

マイクロソフトのCapEx減速が示すAI市場の転換点

マイクロソフトは、これまでAIインフラに多額の設備投資(CapEx)を行ってきたが、その成長率は今後鈍化すると見られている。実際、同社の投資家向け説明会では、2024年6月までに供給と需要のバランスが取れるとされており、過去数四半期のような爆発的な投資は一巡する可能性がある。

この動きは、AIを活用する企業の成長戦略が次の段階へ進んでいることを示唆する。すなわち、これまでの急激なハードウェア投資のフェーズから、AIの実装と最適化に軸足を移す時期が近づいているのかもしれない。特に、マイクロソフトのCEOが2027~2028年にはデータセンターの過剰容量をリースに回せると発言している点は、今後のAIインフラ需要が抑制される可能性を示している。

一方、AIインフラ市場の成長は短期的な波によって左右される傾向があり、長期的な視点で見ると、最適化フェーズの後に次なる技術革新による新たな投資ブームが訪れる可能性もある。マイクロソフトの設備投資が減速することは、NvidiaをはじめとするAI関連企業にとって短期的な調整局面を意味するが、市場全体の成長が止まるわけではない。

オラクルのCapEx拡大の実態とその影響

オラクルは2025年度に向けて設備投資を137億ドルまで引き上げる計画を発表しているが、ナイルズ氏はその実態に疑問を呈している。直近の四半期ごとの支出を分析すると、投資のペースが鈍化しており、計画通りに進むかどうかは不透明である。

オラクルはクラウドサービス事業を急拡大させており、特にAI分野での競争力を強化するためにデータセンターへの投資を進めている。しかし、四半期ごとのCapEx推移を見ると、短期的な支出が予想ほど増えておらず、「倍増」という表現には注意が必要だ。例えば、直近の投資額は40億ドルであり、残りの会計年度内で計画を達成するには一気にペースを上げる必要がある。

このように、企業が発表する設備投資計画と実際の支出状況には乖離があることが多い。AI関連のハードウェア需要が飽和しつつある中で、オラクルのような企業が本当に計画通りに投資を進めるかどうかは、今後の市場動向を見極める重要なポイントとなる。投資のペースが計画よりも緩やかになれば、Nvidiaのような半導体メーカーへの発注も影響を受ける可能性がある。

Nvidiaの成長戦略と市場の期待値のギャップ

NvidiaはAI半導体市場で圧倒的なシェアを誇るが、その成長ペースと市場の期待値のギャップが今後のリスク要因となる可能性がある。ダン・ナイルズ氏は、同社の決算が好調であっても、実際の需要の変化を考慮する必要があると指摘している。

Nvidiaの強気な成長見通しは、クラウド企業や大手テクノロジー企業の設備投資に依存している。しかし、マイクロソフトのCapEx鈍化やオラクルの投資計画の不確実性が示すように、AI半導体の需要が減速する兆しが見え始めている。このような状況では、Nvidiaが発表する業績予測が過去の成長率と同じように維持されるかどうかは慎重に判断する必要がある。

また、AI市場は技術革新のスピードが速く、新たな競争環境が生まれる可能性もある。Nvidiaは現在の市場をリードしているが、競合他社が独自のAIチップを開発し、データセンターの効率化が進めば、現在の成長ペースに変化が生じるかもしれない。こうした点を考慮すると、Nvidiaの短期的な成長よりも、市場全体の変化に注目することが求められる。

Source:Wall Street Pit