Arm Holdings(ARM)は、第3四半期の決算で売上高・利益ともに市場予想を上回ったが、時間外取引で株価は約6%下落した。投資家はさらなる上方修正を期待していた可能性がある。

四半期売上高は前年比19%増の9億8,300万ドル、純利益は2億5,200万ドルと前年の3倍に急増。ロイヤルティ収益は23%増、ライセンス収益は14%増と堅調だった。しかし、第4四半期の売上見通しは市場予想とほぼ一致し、株価の伸び悩みを招いた。

ArmはAIインフラ強化に向け、ソフトバンクやOpenAIと提携し、5,000億ドル規模の米国AIプロジェクトの主要パートナーとなる。日本での新たな合弁事業の設立も発表されており、AI戦略の進展が今後の焦点となる。

Armの業績成長を支えるロイヤルティ収益の拡大とその背景

Arm Holdingsの第3四半期決算では、ロイヤルティ収益が前年同期比23%増の5億8,000万ドルとなった。この成長は、Armが長年にわたり築いてきた半導体アーキテクチャのライセンス戦略が引き続き奏功していることを示している。特に、スマートフォン市場の回復や、高性能コンピューティング向けのArmベースのプロセッサ採用拡大が影響している。

近年、Armの技術はクラウドコンピューティングやAI向けのチップにも積極的に採用されており、その適用範囲が広がっている。Appleが独自のMシリーズチップにArmのアーキテクチャを採用し続けているほか、AmazonのGravitonプロセッサや、GoogleのTensorチップにもArm技術が活用されている。こうした動向が、Armのロイヤルティ収益を押し上げている要因の一つである。

加えて、Armは従来の固定ロイヤルティモデルに加え、半導体メーカーが市場シェアを拡大するごとに収益が増加する変動ロイヤルティモデルを取り入れている。これにより、AIやデータセンター向けチップ市場が成長する中、Armの収益基盤も強化されている。今後、AI分野でのさらなる採用が進めば、ロイヤルティ収益は一層の成長を遂げる可能性がある。

売上高予測の上方修正が市場の期待を上回らなかった理由

Armは第4四半期の売上高見通しを11億7,500万ドルから12億7,500万ドルと発表し、その中央値を市場予想と一致させた。また、通年の売上高見通しを39億4,000万ドルから40億4,000万ドルに修正し、中央値を39億9,000万ドルに引き上げた。しかし、この見通しは投資家の期待を超えるものではなく、決算発表後の時間外取引で株価は約6%下落した。

市場ではArmがより積極的な成長見通しを示すことを期待していたと考えられる。特に、半導体業界全体がAIブームの波に乗って急成長している中、Armもそれに追随する形で市場の成長期待に応える必要があった。しかし、今回のガイダンスは慎重なものであり、特にAI向けチップ市場でのさらなる上振れを示唆する内容には至らなかった。

この背景には、Armが依然としてスマートフォン市場への依存度が高いことがある。スマートフォン市場は回復傾向にあるものの、PC市場やデータセンター向けの半導体需要が伸び悩んでおり、NvidiaやAMDといった競合他社ほどのAI需要を取り込めていない可能性がある。今後、ArmがAI市場でどのような成長戦略を描くのかが、株価の推移を左右する要因となりそうだ。

AIインフラ市場への本格参入がArmの成長を加速させるか

Armは、ソフトバンクやOpenAIとともに、米国でのAIインフラ構築プロジェクトに主要技術パートナーとして関与している。このプロジェクトの総投資額は5,000億ドル規模とされ、AI関連技術への需要が今後さらに拡大することが見込まれる。

現在、AI向け半導体市場はNvidiaが圧倒的なシェアを持つが、Armは異なるアプローチで市場に参入している。Armのアーキテクチャは、低消費電力かつ高効率な設計を特徴としており、クラウドサーバーやエッジコンピューティング向けのAIチップとしての利用が進んでいる。特に、消費電力が重要視されるデータセンター市場では、Armベースのプロセッサが今後存在感を増していく可能性がある。

また、日本を皮切りにグローバルなAIサービス拡大を目指す新たな合弁事業が立ち上げられたことも、Armの成長にとって重要な要素だ。これにより、Armの技術がAI向けのクラウドプラットフォームやデバイスに組み込まれる機会が増えると考えられる。今後、Nvidiaとの競争がどのように展開されるかが、Armの市場価値に大きな影響を与えるだろう。

Source:Investopedia