AI技術分野で成長を続けるSuper Micro Computer(NASDAQ: SMCI)は、財務報告の遅延によりNASDAQ市場からの上場廃止リスクに直面していた。しかし、同社は必要な報告を期限内に提出し、上場維持を確保。これを受け株価は一時12%以上の急騰を見せた。
だが、直後に24%下落し、市場の警戒感は依然として強い。売上成長率の鈍化や低利益率構造が懸念材料であり、経営陣の透明性に対する不安も払拭されていない。ウォール街の目標株価は現在より約50%の上昇余地を示すが、短期的な上昇期待と長期的なリスクのバランスを慎重に見極める必要がある。
Super Micro ComputerがNASDAQ基準をクリアした背景と市場の反応

Super Micro Computer(NASDAQ: SMCI)は、財務報告の遅延によりNASDAQからの上場廃止リスクを抱えていた。しかし、同社は必要な報告を期限内に提出し、規制をクリア。これを受けて市場は一時的にポジティブに反応し、同社の株価は12%以上急騰した。特に、過去の財務報告の修正(リステートメント)が不要だった点は、投資家の信頼回復につながった要因といえる。
だが、この発表の後、Super Microの株価は約24%下落した。これは、単なる上場維持だけでは市場の不安を払拭できなかったことを示唆する。投資家の間では、同社の成長鈍化や利益率の低下に対する懸念が依然として根強い。ウォール街の評価も分かれており、Goldman Sachsは目標株価を40ドル、Barclaysは59ドル、Loop Capitalは70ドルに設定している。現時点の株価39ドルと比較すると、アナリストの予想には上昇余地があるものの、市場の警戒感は払拭されていない。
こうした市場の反応は、Super Microの成長が単純な売上高の拡大だけでなく、利益率やキャッシュフローといった経営の健全性にも左右されることを示している。短期的には株価の変動が続く可能性が高く、特に決算ごとの成長率や財務状況が注目される局面となる。
売上成長の鈍化と利益率の低下が示す課題
Super Microは2024年第4四半期に前年同期比55%の売上成長を記録した。これは一見すると高成長に見えるが、過去4四半期の成長率が100%を超えていたことを考えると、成長速度が鈍化していることがわかる。2025年の売上成長率は60%と予測されているが、2024年の125%増と比較すると半減する形となる。
さらに、利益率の低下も深刻な課題だ。2023年と比較すると、粗利益率は400ベーシスポイント、営業利益率は140ベーシスポイント低下しており、2025年にはさらに200ベーシスポイントの低下が予測されている。これは、競争環境の激化や、部材コストの上昇が影響している可能性がある。
Super Microの主力製品はAIサーバーラックであり、NVIDIA(NASDAQ: NVDA)をはじめとするサプライヤーからのチップ供給に依存している。NVIDIAが価格決定権を持つため、Super Microの利益率は構造的に制約を受けやすい。同社の液冷技術は市場での競争力を持つが、それだけで利益率の改善を実現するのは難しい。
また、営業キャッシュフローは過去12か月でマイナス20億ドルとなっており、仕入れ先への支払いと顧客からの入金のズレが大きな負担となっている。このキャッシュフローの問題を解決しない限り、売上が伸びても持続的な利益成長にはつながらない可能性がある。今後の経営戦略において、利益率の改善やキャッシュフロー管理の強化が求められるだろう。
短期の上昇余地はあるが長期投資には慎重な判断が必要
Super Microの現在の株価バリュエーションは、過去3年間の平均的な水準にある。AIサーバーの需要は引き続き強く、短期的には株価の上昇余地があると考えられる。実際にウォール街の目標株価の平均を考慮すると、現在の水準から約50%の上昇余地があるとの見方もある。
しかし、売上成長の鈍化、利益率の低下、キャッシュフローの問題といった長期的なリスク要因が存在する。特に、過去の財務報告の遅延による不透明感が残るため、経営陣への信頼が完全に回復したとは言い難い。NASDAQ基準をクリアしたことはポジティブな材料ではあるが、それだけで同社の成長が持続可能であると判断するのは時期尚早だ。
今後、投資判断を行う上で注目すべきポイントは、次回の決算における売上成長率と利益率の推移、キャッシュフローの改善が見られるかどうか、そして経営陣の透明性の向上である。これらの要素が改善されれば、Super Microは長期的な投資対象としての魅力を増すだろう。一方で、改善が見られない場合、短期的な株価上昇があっても持続可能な成長にはつながらない可能性がある。
Source:MarketBeat