エヌビディア(NVDA)は、1月の時価総額6000億ドル急落から回復の兆しを見せている。2月26日の決算発表を前に、ウォール街の市場関係者は強気姿勢を崩さず、AI向けGPUの需要と加速コンピューティング市場の成長に注目している。

主要アナリストは「買い」や「オーバーウェイト」の評価を維持し、目標株価を175〜190ドルに設定。PEレシオ32倍の割安感や、データセンター事業の成長が評価される一方で、製造上の課題や地政学リスクも指摘される。

エヌビディアは次世代製品「Blackwell」や新たな技術展開を武器に、市場の主導権を握れるか。決算発表はその試金石となる。

AI市場の覇権争い エヌビディアの強みとリスク

エヌビディアはAI市場において圧倒的な地位を築いている。特に、データセンター向けGPUの需要が爆発的に拡大しており、同社のハードウェアは生成AIやクラウドコンピューティングに欠かせない存在となっている。主要なハイパースケーラー企業の設備投資が増加する中、エヌビディアの製品群は今後も成長の中心にあると見られる。

しかし、短期的な課題も無視できない。1月のディープシーク問題では、供給網の制約が露呈し、企業としての安定性に疑問符がつけられた。加えて、米中関係の悪化による輸出規制の影響も懸念材料だ。中国市場はエヌビディアにとって重要な収益源であり、H20 GPUの需要増加が業績を支えているものの、政策の変化が急激に収益構造を揺るがす可能性がある。

それでも、同社のソフトウェアエコシステムは他の追随を許さない。CUDAを中心とした開発環境は、AI分野の標準として広く受け入れられており、AMDやAmazon AWSが同様のシステムを構築するには時間を要する。こうした技術的優位性が維持される限り、エヌビディアはAI市場のリーダーとしての立場を強固なものにするだろう。

決算発表が映し出す成長戦略と市場の評価

エヌビディアの次回決算発表は、今後の成長軌道を占う上で極めて重要なものとなる。特に、データセンター事業の売上がどこまで拡大するのか、また、AI関連の新規受注がどの程度あるのかが焦点となる。アナリストの間では、FY26のデータセンター収益は2090億ドル規模に達すると見られており、これは市場予想を14%上回る数値である。

一方で、製造上の問題がどこまで解決されるかもカギとなる。現在、GB200 NVLサーバーラックの生産遅延が指摘されており、この影響がどの程度の範囲に及ぶのかが不透明だ。しかし、HGXベースのB200など他の製品群へのシフトが進めば、供給リスクはある程度軽減されると考えられる。また、同社はクリエイティブな資金調達手法を用いて在庫管理を柔軟に行っており、収益の認識スピードを向上させる可能性もある。

株価の視点では、PEレシオ32倍という水準は、Broadcom(36倍)やMarvell Technology(41倍)と比較して相対的に割安と見られる。これは、エヌビディアの成長余地が依然として大きいことを示唆しており、特にAI向けGPU市場の拡大が続く限り、現在の評価水準は魅力的な水準であると考えられる。

次世代製品「Blackwell」と「Rubin」が切り拓く未来

エヌビディアは、次世代アーキテクチャ「Blackwell」および「Rubin」によって、さらなる成長を狙っている。これらの製品は、現在のH100やB200に比べて大幅に性能が向上すると期待されており、特にデータセンターやハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)分野での需要が高まると予測されている。

加えて、同社はロボティクスや量子技術にも進出しており、将来的にはAI以外の分野でも競争力を高める戦略を描いている。こうした技術革新が進めば、エヌビディアの収益源はより多様化し、AI市場のみに依存しない強固なビジネスモデルが確立される可能性がある。

しかし、競争も激化している。AMDやインテルがAI向けプロセッサ市場に参入を進めており、各社ともに独自のアクセラレーション技術を開発している。特に、クラウドプロバイダーが自社製のAIチップを開発する動きは、エヌビディアの市場シェアに影響を与える可能性がある。

それでも、エヌビディアはソフトウェアとハードウェアの両面で圧倒的な強みを持つ企業である。次世代製品の投入によって、現在の市場シェアをさらに拡大できるかどうか、今後の展開に注目が集まる。

Source:Wall Street Pit