著名投資家マイケル・バーリが保有するアリババ(NYSE: BABA)の株価が、2月14日の取引終了時点で124.73ドルと前日比約5%上昇し、年初来で46%の上昇を記録した。しかし、テクニカル指標である相対力指数(RSI)が84.41と、2017年6月以来の高水準に達しており、過去のデータではこの水準に達した後、株価が調整局面に入る傾向が見られる。

さらに、アリババ創業者のジャック・マー氏が習近平国家主席との会談に参加したとの報道もあり、中国政府によるテクノロジー業界への規制緩和への期待が高まっている。一方、バーリ氏は第4四半期にアリババ株の保有比率を25%削減しており、これが市場に警戒感を与えている。

ウォール街のアナリストも、シティグループのアリシア・ヤップ氏が目標株価を138ドルに引き上げる一方、バークレイズのジオン・シャオ氏は130ドルに引き下げるなど、評価が分かれている。2月20日に予定されている決算発表が、今後の株価動向に大きな影響を与える可能性がある。

アリババ株の急騰を支える要因と市場の期待

アリババ(NYSE: BABA)の株価は2024年に入り大きく上昇し、年初からの上昇率は46%に達している。ここまでの急騰の背景には、複数の要因が絡み合っている。

まず、中国経済の回復期待がある。中国政府は昨年末から経済刺激策を強化しており、テクノロジー企業への規制緩和の動きも見られる。ジャック・マー氏と習近平国家主席の会談が報じられたことで、アリババを含む中国のIT企業に対する政策転換の兆しが投資家の間で楽観視されている。

また、アリババの事業展開も株価の追い風となっている。同社はAI技術を活用した新たなビジネス戦略を進めており、AIモデル「Qwen 2.5-Max」を発表するなど、競争力強化に取り組んでいる。さらに、Appleとの提携が報じられ、中国市場向けのAI技術開発が期待されている。

加えて、直近の決算発表で市場予想を上回る業績を示したことも、株価上昇の要因となっている。特に流通総額(GMV)の成長が市場の想定を上回ったことで、投資家心理が一段と改善した。ウォール街のアナリストも目標株価を引き上げる動きを見せており、強気の見方が広がっている。

テクニカル分析が示す売りのシグナル

一方で、テクニカル分析ではアリババ株の買われすぎを示唆するデータが見られる。特に、相対力指数(RSI)は84.41に達し、2017年以来の高水準となった。一般的に、RSIが70を超えると買われすぎと判断されるが、現在の水準は過去のパターンと比較しても極端なレベルにある。

過去のデータを振り返ると、2017年6月にアリババのRSIが現在と同様の水準に達した後、株価は調整局面を迎えた。このため、今回も短期的な売り圧力が高まる可能性がある。特に125ドル付近はかつての主要な抵抗線であり、この水準を突破できなければ反落のリスクが高まる。

加えて、ボリンジャーバンドの上限に接触しており、価格変動のボラティリティも増している。これにより、短期的な利益確定売りが発生しやすくなる可能性がある。市場の過熱感が続く場合、次のサポートラインは115ドル前後となり、下落すればこの水準まで調整する展開も考えられる。

マイケル・バーリの売却判断が示唆するリスク

市場が強気に傾く中で、マイケル・バーリがアリババ株の保有比率を25%削減したことは注目に値する。彼の投資戦略は、過去に金融危機を予測して莫大な利益を上げたことで知られ、慎重なリスク管理を重視するスタイルが特徴だ。

今回の売却は、中国テック株の急騰を受けた利益確定の動きと見ることもできるが、それだけではない可能性もある。中国の景気回復期待が高まる中で、規制リスクの再燃や米中関係の変化が市場に影響を与える可能性も指摘されている。実際、過去数年にわたり、中国政府のIT企業に対する政策は不安定な動きを見せてきた。

また、バーリは過去に市場の熱狂に対して慎重な姿勢を取ることが多く、今回の売却も過熱感への警戒を示している可能性がある。歴史的に見ても、市場全体が楽観ムードに包まれる局面で彼が慎重な動きを見せた際には、その後市場が大きく変動するケースが見られた。

今後の焦点は、2月20日に発表される決算内容と、それに対する市場の反応となる。強気相場が続くか、それともバーリの判断が示唆するリスクが顕在化するか、慎重な見極めが必要な局面に差し掛かっている。

Source:Finbold