パランティア(NASDAQ: PLTR)の株価が急上昇する中、ウォール街のアナリストが「過大評価されている」と警告を発している。2024年第4四半期の決算発表を受け、2月18日には5%近く上昇し、124.62ドルの史上最高値を記録。
しかし、Jefferiesのアナリスト、ブレント・スリル氏は今後60ドルまで下落する可能性があると指摘した。これは現在の水準から約51%の下落を意味する。同氏は、採用の鈍化、地域間の成長格差、経営陣の株式売却、財務責任者の辞任、大口顧客への依存といった複数の懸念材料を挙げており、今後の展開に注目が集まる。
経営陣の株式売却と財務責任者の辞任が与える市場への影響

パランティアの経営陣による大規模な株式売却は、投資家の警戒感を高める要因となる。CEOのアレックス・カープ氏は約1,000万株、社長のスティーブン・コーエン氏は約400万株の売却計画を発表した。経営トップが保有株を手放すことは、企業の成長性に対する自信の低下と捉えられることが多い。特に、パランティアのように高い成長期待で評価される企業では、トップが売却する理由が注目される。
加えて、最高会計責任者(CAO)のヘザー・プラニシェック氏が2月24日付で辞任することも、不透明感を増す要素となる。財務部門の責任者交代は、企業の会計処理や財務戦略の変更につながる可能性があり、市場に不安を与えやすい。特に、後任が未定のままでは、投資家がリスクを懸念する要因となる。こうした要素が重なれば、パランティアの株価に対する市場の評価は一層慎重になる可能性がある。
一方で、経営陣の株式売却が必ずしもネガティブなシグナルとは限らない。過去の例を見ても、個人的な資産整理や税務上の理由で株式を売却するケースは多い。短期的には株価に影響を与えるが、企業の業績や成長戦略に変化がなければ、中長期的には影響が限定的であることも考えられる。ただ、今回の売却規模の大きさと財務責任者の辞任が同時に発表されたことで、市場の疑念が強まるのは避けられない。
成長鈍化が懸念される国際市場の動向と影響
パランティアの2024年の米国市場の売上成長率は前年同期比38%増と力強いが、国際市場の売上成長率は14%にとどまった。この成長の地域格差は、企業のグローバル展開における課題を浮き彫りにしている。米国内の売上が堅調である一方、海外市場の伸び悩みは、新規顧客の獲得や契約の拡大が思うように進んでいないことを示唆する。
特に、パランティアの主要顧客層は政府機関と大手企業であり、海外市場では規制の壁や政治的な要因が影響する可能性がある。各国のデータプライバシー法制や安全保障上の懸念が、パランティアのAI技術導入を制約していることも考えられる。例えば、欧州連合(EU)では、厳格なデータ保護規則(GDPR)の影響で、米国企業がデータを扱う際の規制が強まっている。こうした環境の違いが、米国外での事業拡大の足かせとなる可能性がある。
また、国際市場での成長鈍化が続けば、パランティアの収益構造が米国市場に過度に依存するリスクも生じる。米国内の成長が続く限りは問題ないが、景気後退や政府契約の削減などが発生した場合、収益の安定性が損なわれる可能性がある。これに対し、企業がどのような戦略で海外市場の成長を加速させるかが今後の焦点となる。
パランティア株は過大評価か、それともAI業界のリーダーか
ウォール街のアナリストであるブレント・スリル氏は、パランティアの株価が過大評価されていると指摘し、60ドルまでの下落を予測している。その根拠の一つに、同社の成長性に対する期待が過度に高まっている点がある。特にAIブームに乗って急成長した企業の株価は、実際の業績と乖離することがあり、バリュエーションの調整局面に入る可能性がある。
一方、Wedbush Securitiesのダン・アイヴス氏は、パランティアがAI業界のリーダーとしての地位を確立する可能性が高いと主張している。同氏は「パランティアはAI業界のメッシ」と評し、同社の技術力と市場での優位性を評価している。実際、政府機関向けのAIプラットフォーム市場においてパランティアは競争力を持ち、企業向けのAIサービスの拡大も期待されている。
しかし、AI分野は競争が激化しており、パランティアがこの先も優位性を維持できるかは不透明である。GoogleやMicrosoftといった大手企業もAI技術に巨額の投資を行い、競争が一層激しくなっている。加えて、ChatGPTをはじめとする新興AI企業の台頭もあり、パランティアの技術優位性が揺らぐ可能性もある。今後、同社がどのように差別化を図り、成長戦略を描くかが、株価の動向を大きく左右することになるだろう。
Source:Finbold